PRODUCTION OF RUBBER LATEX

08-02-2000 дата публикации
Номер:
JP2000038454A
Принадлежит: Mitsubishi Rayon Co Ltd
Контакты:
Номер заявки: 52-83-1020
Дата заявки: 23-07-1998

[1]

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、工業的に簡便な方法でABS系樹脂の製造に好適な広い粒子径分布を有する平均粒子径150~400nmのゴムラテックスを、150nm未満の小粒子ゴムラテックスから凝固物の発生なく得るゴムラテックスの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】ABS系樹脂やASA系樹脂は、シアン化ビニル系単量体および芳香族ビニル系単量体、不飽和カルボン酸エステル系単量体からなる単量体混合物をゴム状重合体にグラフト重合してなる樹脂組成物であり、その高い耐衝撃性、高い表面光沢、良好な流動性等の多くの特徴を有することから世の中に広く使用されている。
【0003】ABS系樹脂の機械特性はゴム状重合体の性状、そのマトリクス樹脂中での分散粒子径や粒子径分布、ゴム状重合体へのグラフト共重合量やグラフト層の厚み等に依存することは一般的によく知られたことである。とりわけ、ABS系樹脂の特徴である優れた耐衝撃性は、これらの因子により大きく変動する性質であり、優れた耐衝撃性を有するABS系樹脂を得るにはこれら因子を適切に設定することが重要である。かかる観点から、従来よりABS系樹脂原料に供するに適正なゴム状重合体に関して様々な検討がなされており、これらの知見に基き開発されたABS系樹脂は広く工業材料として用いられるに至っている。
【0004】一般的に、ABS系樹脂に用いられるゴム状重合体の分散粒子径としては、その耐衝撃性および外観の面から平均粒子径として150~400nmの範囲のものが広く使用されている。しかしながら、この様な粒子径範囲のゴム状重合体を乳化重合法によりアグロメーションによって製造するためには非常に長時間を要した。その様な低い生産性を改善する目的で行われたのが、150nm未満の比較的小さなゴム状重合体を前もって製造し、これを何らかの方法で平均粒子径で150~400nmのゴム状重合体とする、いわゆる肥大化という手法である。
【0005】特公昭32-9592号公報や同33-4437号公報には凍結法による肥大化が提案されているが、工業的には肥大化過程に要する設備が膨大になる、コストが非常に高額になりやすいこと等が課題であった。また、特公昭37-10565号公報や同41-982号公報、同60-19930号公報にはラテックスに剪断力等の機械的な力を加えて肥大化する手法が提案されているが、凝固物が発生し易い、同一の粒子径を有するゴムラテックスを安定に得にくい等の課題を有する。なお、凝固物とはゴムラテックスから析出した塊状固形物をいう。
【0006】さらに、特公昭46-32056号公報や同59-49937号公報、同62-61044号公報には酸性物質や酸無水物を添加することによって肥大化する手法が提案されており、これら方法では凝固物発生量が比較的少なく工業的にも有効な手法と思われるが、得られた肥大化ラテックスは粒子径分布が比較的狭いものであった。しかしながら、この様な粒子径分布の狭いゴムラテックスは、近年低コスト化が望まれ、かつ多様化した要求性能を満たすことのできるABS系樹脂を製造するには不適であった。
【0007】特公昭46-35976号公報には酸基を有する単量体を重合または共重合してラテックスの形として得て、これをゴム状重合体ラテックスと混合することによって肥大化する方法が提案されているが、肥大化しないゴム状重合体が比較的多く残存してしまい目的の粒子径分布が得られないという課題があった。
【0008】さらに、特公平7-21014号公報や特開平7-157502号公報に流通式管型装置を用いた連続肥大化方法が提案されているが、いずれも上記発明と同様に粒子径分布が狭いゴムラテックスしか得られず、また酸性物質に酸を用いることから製造できるゴムラテックスの粒子径が限定され、要求される様な種々の粒子径のゴムラテックスが製造できないという課題があった。
【0009】また、ABS系樹脂に用いるゴムラテックスとして、特開平9-249791号公報や特開平3-258851号公報に提案されている様に耐衝撃性をバランスさせることは可能であるが、ABS系樹脂の基本性能の一つである成形加工性が悪化したり、特開平7-278404号公報に提唱されている様な着色性に悪影響を及ぼすことが多く、広い用途に適用できるABS系樹脂を製造するためにはむしろ広い粒子径分布を有するゴムラテックスを用いることが好ましい。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、肥大化過程において凝固物を殆ど発生させずに一度に所望の粒子径分布を有するゴムラテックスを、工業的に有利な方法で製造するゴムラテックスの製造方法を提供することにある。ABS系樹脂等の原料としてのゴムラテックスは、特定の場合を除いて実用上何らかの粒子径分布を有するものが必要とされる場合が多く、特にABS系樹脂の特徴である優れた耐衝撃性-流動性-樹脂成形外観を高次元でバランスさせるためには広い粒子径分布が必要であった。その様な要求においては粒子径の異なる肥大化ゴムラテックスを予め複数準備し、これらをある比率でラテックスブレンドする工程が必要となり、工業的な見地からはその製造過程の煩雑さ、設備の増大を招くおそれがある等課題が多い。
【0011】
【課題を解決するための手段】本発明の主旨は、予め水媒体に分散した酸無水物を小粒子ゴムラテックスに流通式管型装置内で混合させ、レイノルズ数の低い状態で容器内に導入した後、ある一定時間静置することにより肥大化を進行せしめ、その後塩基性物質による中和工程を経て最終的に広い粒子径分布を有する高性能なABS系樹脂製造に適したゴムラテックスを得ることを特徴とする。すなわち本発明は、乳化重合によって得られた酸性域で不安定となる中性ないしアルカリ性である平均粒子径150nm以下の小粒子ゴムラテックスに、酸無水物を添加して小粒子ゴムラテックスを肥大化し粒子径分布の広いゴムラテックスを得るゴムラテックスの製造方法であって、酸無水物と小粒子ゴムラテックスとを流通式管型装置内に供給し混合して混合ラテックスとし、該混合ラテックスを容器内に導入して10分以上、300分以下静置した後に、塩基性物質によって中和することを特徴とするゴムラテックスの製造方法である。該製造方法において、混合ラテックスを容器内に導入し始めてから導入を終了するまでの所要時間が5分以上、60分以下であること、容器内に吐出される混合ラテックスの大部分を液面下に吐出し、且つ混合ラテックスを流通式管型装置から容器内に供給する供給管内の混合ラテックスがレイノルズ数2、000以下の層流状態にあること、酸無水物と水とを予め一段目の流通式管型装置内で混合した水溶液を二段目の流通式管型装置に供給して小粒子ゴムラテックスと混合すること、製造されたゴムラテックスの重量平均粒子径Sが150~400nmでありかつ150nm未満の粒子径を有する粒子の割合が10重量%未満でさらに0.8×S~1.25×Sの範囲の粒子径を有する粒子の割合が70重量%以下であること、がそれぞれ好ましい。
【0012】
【発明の実施の形態】本発明において用いられる小粒子ゴムラテックスは、酸無水物を添加することによって肥大化を進行させる必要性があることから、酸性域(pH≦6)で凝集などを起こす不安定なものである必要がある。そのためには予め中性ないしアルカリ性(pH>6)である必要がある。
【0013】用いる乳化剤としては上記目的が達成される限りにおいては特に種類は限定されないが、例えばオレイン酸ナトリウムやステアリン酸ナトリウム、ラウリン酸ナトリウム、混合脂肪酸ナトリウムまたはこれらのカリウム塩等の脂肪酸石鹸類やアビエチン酸塩に代表されるロジン酸石鹸類、アルキル基の炭素数が6~15であるアルケニルコハク酸塩が使用でき、これらは1種でまたは2種以上を併用して使用することも出来る。その使用量は、該小粒子ラテックスが乳化重合で容易に得られることから、ゴム状重合体100重量部に対し通常の乳化重合に用いられる0.5~5重量部が好ましい。
【0014】ゴム状重合体の組成については常温でゴム状の性質を示すものであれば特に限定されないが、例えばポリブタジエンゴム、スチレン-ブタジエン共重合ゴム(SBR)、アクリロニトリル-ブタジエン共重合ゴム(NBR)、ポリアクリル酸ブチルゴムに代表されるアクリルゴム等に代表され、これらは単独でも2種以上を併用して用いてもよい。
【0015】この小粒子ゴムラテックスの重量平均粒子径は150nm未満であり、150nmを越える場合には重合時間が長くなって本発明の目的の一つである経済的メリットが薄れてしまうばかりでなく、肥大化が進行し難くなる。
【0016】小粒子ゴムラテックスの濃度は肥大化粒子径および凝固物発生量に多大な影響を与える。濃度が高ければ肥大化粒子径が大きくなり、かつ凝固物の発生量が増加し、濃度を低下させればその逆の傾向となる。そのため、適正な濃度が選択されるが、実用的に好ましい範囲は20~50重量%の小粒子ゴムラテックスである。20重量%未満であれば多量の酸無水物が必要となり、また肥大化ラテックスが希薄となり実用的な価値は低くなる。50重量%を越える場合には、多量の凝固物が発生する。
【0017】この小粒子ゴムラテックスを得る方法としては、その製造の容易さから乳化重合が選択される。また、その乳化重合における開始剤については特に限定されず、通常の過硫酸カリウムを用いる”ホットラバー”処方や、有機過酸化物および還元剤、触媒を使用するいわゆる”コールドラバー”処方(レドックス処方)等が使用できる。
【0018】本発明で用いられる酸無水物としては、有機酸の無水物であれば特に限定されないが、無水酢酸、無水マレイン酸、無水プロピオン酸、無水安息香酸、無水グルタル酸、無水吉草酸、無水イソ吉草酸、無水コハク酸、無水シトラコン酸、無水イタコン酸等が好ましいが、特に好ましくは無水酢酸または無水マレイン酸である。
【0019】用いる酸無水物の量は目的とする肥大化ゴムラテックスの粒子径によって任意に選択される。大量の酸無水物を使用することでより大きな粒子径のゴムラテックスが得られ、少量にすることでより小さな粒子径のゴムラテックスが得られるが、あまりにも酸無水物の添加量が少なすぎると肥大化が進行し難くなり酸無水物の使用量の下限は限定される。酸無水物の種類にもよるが一般的には小粒子ゴムラテックス100重量部に対して0.1重量部以上の添加量が必要となる。
【0020】酸無水物を小粒子ゴムラテックス中で均一に分散させるためには予め水媒体中に溶解または分散させておくことが好ましい。より好ましくは、酸無水物と水とを流通管型装置内で予め均一に混合した状態(水溶液の状態)で、ゴムラテックスとを混合することが好ましい。ここでいう流通管型装置の内容は後述する。酸無水物を予め水媒体中に溶解または分散させておかなくとも肥大化は可能であるが、凝固物が多量に発生する。また、水が多すぎて希薄な酸無水物水溶液である場合には凝固物の発生は殆どなくなるが、その分肥大化ラテックスも希薄になるために製造コスト的に不利になり実用的な価値はなくなる。以上のことから、酸無水物1重量部に対し水を10~50重量部使用することが好ましい。
【0021】図1は、本発明のゴムラテックスの製造方法に用いる製造装置の例を示す図である。該製造装置は、図1に示すように、水導入口2と酸無水物導入口3とを備えて酸無水物と水とを予め混合して水溶液とし、該水溶液を二段目の流通式管型装置8に供給する一段目の流通式管型装置9と、小粒子ゴムラテックスを導入する導入口1を備えて前記水溶液と小粒子ゴムラテックスとを混合して混合ラテックスとし該混合ラテックスを流通させる二段目の流通式管型装置8と、排出口5を備えて二段目の流通式管型装置8を通過した混合ラテックスを容器6内に導入する(供給する)供給管4と、該供給管4より導入された混合ラテックスを10~300分間静置して小粒子ゴムラテックスを肥大化し且つゴムラテックスの粒子径分布を広くした後に、このゴムラテックスを塩基性物質によって中和するための容器6とを備えている。
【0022】水媒体に分散させた酸無水物は二段目の流通式管型装置8を用いて小粒子ゴムラテックス中に断続的または連続的に供給される。流通式管型装置8としてはとくに形状が限定されないが、例えば図1に示す様な装置が好適である。図示する装置において、導入口1より小粒子ゴムラテックスを供給し、予め水媒体に分散させた酸無水物を導入口7より混合部Aに供給する。小粒子ゴムラテックスと予め水媒体に分散された酸無水物とは、二段目の流通式管型装置8内で混合されて混合ラテックスとされ、この混合ラテックスは供給管4を経て排出口5より容器6に導入される。
【0023】二段目の流通式管型装置8において、小粒子ゴムラテックスと水媒体に分散させた酸無水物とが接触するA部またはその先には混合を促す混合用エレメントBがあることが好ましく、この混合用エレメントBの例としては、インラインミキサーの様な動的に撹拌する様な装置や、スタティックミキサーの様な静的に撹拌する装置が設置できる。また、図1の装置は水平から垂直まで種々の角度で設置することができる。肥大化するゴムラテックス粒子の比重が水のそれよりも大きい場合には、小粒子ゴムラテックスの導入口を上方に設置して小粒子ゴムラテックスを下降させ、それが小さい場合には小粒子ゴムラテックスの導入口を図1に示すごとく下方に設置して小粒子ゴムラテックスの流れが上昇するようにすることが好ましい。なお、一段目の流通式管型装置9の混合用エレメントDとして、混合用エレメントBと同様に、インラインミキサーやスタティックミキサー等を用いることができる。
【0024】この様に混合されたゴムラテックス(混合ラテックス)は、そのまま撹拌されない容器6内に移送される。容器6に移送される場合には、図1の排出口5は、その混合ラテックスの大部分が容器6内のゴムラテックスの液面下に吐出されるような位置に設置される。大部分とは、当該容器6が空であった場合には当然排出口5は液面下にはなり得ないので、混合ラテックスの全量の50重量%以上、好ましくは70重量%以上で100重量%未満をいう。混合ラテックスの全量の50重量%を越える量を液面より上方で供給した場合には凝固物が多量に発生する。
【0025】また、工業的な見地から凝固物の発生量を少なくするために、図1に示す供給管4中を流れる混合ラテックスの流動状態が規制される。いわゆる管内のレイノルズ数が2000以下の層流状態が好ましい。このレイノルズ数が2000を越える乱流状態にある場合には、この供給管4内においても凝固物が多く発生し好ましくない。この供給管4中を流れる混合ラテックスのレイノルズ数を調節する方法としてはどの様なものでも構わないが、公知の方法である管の内径を変更する方法、管内の流速を調節する方法、混合ラテックスの粘度を調節する方法等が使用できる。
【0026】小粒子ゴムラテックスと酸無水物との混合によって得られた混合ラテックスは供給管4から排出口5を経て容器6に移液される場合、酸無水物は既にゴムラテックス中に分散しているため、または移液する際に発生する流動によって酸無水物の拡散が促されるので、移液中または移液後の撹拌は必要でなく、むしろ撹拌があることにより凝固物を多量に発生させる。また、流通式管型装置8から容器6に移液を開始し移液を終了する迄の所要時間は、本発明の目的である広い粒子径分布を有するゴムラテックスを得る観点から、容器6に混合ラテックスが完全に導入されてからの保持時間にも影響されるが、5分以上、60分以下に調節することが好ましい。5分未満である場合には、所望とする広い粒子径分布を有するゴムラテックスを得ることができなくなり、また60分を越えても同様である。この機構については良くは判らないが、酸無水物とゴムラテックスとの混合を開始してから、塩基性物質でラテックスを安定化するまでの時間、即ち肥大化時間を連続的もしくは断続的に変動させることにより、所望の粒子径分布を得ることができるものと推測される。
【0027】本発明において、酸無水物は小粒子ゴムラテックス中に混合された後に加水分解して小粒子ゴムの肥大化を行うものと推測されるが、そのため酸無水物の加水分解速度に応じた保持時間、即ち静置時間を必要とする。この保持時間は、前述の流通式管型装置から容器6に移液開始から終了に要する所要時間と密接な関係があり、また、用いる酸無水物の種類によってもある程度変動するが、通常10分以上、300分以下が必要であり、好ましくは15分以上、200分以下である。酸無水物と小粒子ゴムラテックスとの混合物を無攪拌下で容器6内に保持する保持時間が短ければ肥大化の進行が不十分となり、肥大化粒子径が小さくなったり150nm未満の小粒子が多くなり、目的とする高性能なABS系樹脂が得られなくなる。また逆に、300分を越える様になると、ゴムラテックスの粒子径分布が狭くなったり、塊状物が多量に発生したりする。
【0028】特定の時間、容器6内に保持された後に肥大化ゴムラテックスに塩基性物質を添加して安定化することができる。用いる塩基性性物質としてはいかなるものでも構わないが、例えば水酸化ナトリウムや水酸化カリウム、水酸化アンモニウム(アンモニア水)、炭酸ナトリウム、炭酸カリウムの様な化合物が使用でき、特に好ましくは水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウムである。これらは水溶液の形で用いることができ、その濃度は物質の種類によって選ばれるが、おおよそ1~10重量%の水溶液が使用される。10重量%を越えると凝固物が発生し易くなり、また1重量%未満であると、ラテックスが希薄になり過ぎて生産性が悪化する。
【0029】該肥大化ゴムラテックスはABS系樹脂の製造に提供される目的から、その平均粒子径として150~400nmの範囲が選ばれる。150nm未満および400nmを越える場合には得られるABS系樹脂の基本性能の一つである耐衝撃性や表面光沢が低くなる。
【0030】本発明の目的とするところであるゴムラテックスの粒子径分布は、まず第一に150nm未満の粒子の割合が10重量%未満、好ましくは7重量%未満であることが好ましい。10重量%を越える場合には、当該ゴムを使用して得られるABS系樹脂の性能が劣る様になる。第二に、0.8×S~1.25×S(但し、Sは製造されたゴムラテックスの重量平均粒子径である。)の範囲の粒子径を有する粒子の割合が70重量%以下であること、より好ましくは60重量%以下である。70重量%を越える様な粒子径分布の狭いゴムラテックスでは、本発明の目的である広い用途に適用できるABS系樹脂が製造出来なくなる。
【0031】本発明により得られた特定の粒子径分布を有するゴムラテックスを用いて製造できるのは、アクリロニトリル-ブタジエン系ゴム-スチレンからなるABS樹脂に限定されず、どの様な樹脂でも構わないが、アクリロニトリル-アクリルゴム-スチレン(ASA)樹脂、メタクリル酸メチル-ブタジエン系ゴム-スチレン(MBS)樹脂、ハイインパクトポリスチレン樹脂やこれらとポリカーボネート樹脂やポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂とのポリマーアロイにして用いることができる。
【0032】
【実施例】以下、実施例および比較例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はその要旨を越えない限り、以下の例に限定されるものではない。なお、以下の例中の%、および部数は明記しない限りは重量%、重量部数を意味する。また、以下の実施例、比較例中でのゴムラテックスの粒子径分布は、超希薄なゴムラテックス滴をコロージョン膜を付与した透過型電子顕微鏡用銅メッシュ上に載せ、これを四酸化オスミウムで染色後水分を蒸発乾固させ透過型電子顕微鏡で写真撮影した後(倍率20、000倍)、300~500個のゴム粒子のサイズをカウントして求めた。
【0033】
製造例1  ~小粒子ゴムラテックス(A)の製造
  撹拌装置の付いた10リットルステンレス製オートクレーブに、
    脱イオン水(以下単に水という。)              150部
    スチレン                                        10部
    オレイン酸カリウム                                1.5部
    ロジン酸カリウム                                  1.5部
    水酸化カリウム                                    0.1部
    過硫酸カリウム                                    0.3部
を仕込み、窒素置換後減圧にし、
    ブタジエン                                      90部
を仕込み、内温を70℃に昇温して10時間重合を行った。水蒸気蒸留によって残存ブタジエンモノマーを除去後、冷却して平均粒子径85nm、固形分40.1%、pH11.0である小粒子ゴムラテックス(A)を得た。
【0034】製造例2  ~小粒子ゴムラテックス(B)の製造
製造例1に記載の例において、スチレン10部に変えてアクリロニトリル5部に、ブタジエンを90部から95部に変更した他は同様にして重合を行い、平均粒子径80nm、固形分40.3%、pH11.1である小粒子ゴムラテックス(B)を得た。
【0035】製造例3  ~小粒子ゴムラテックス(C)の製造
窒素置換した10Lガラス製反応器(撹拌装置付き)に、
    水                                            150部
    炭酸ナトリウム                                    0.03部
    アルケニルコハク酸ジカリウム                      0.5部
    ロンガリット                                      0.3部
    硫酸第一鉄七水塩                                  0.00005部
    エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム                0.00015部
を仕込み75℃に昇温した。これに、
    アクリル酸-n-ブチル                          98.8部
    メタクリル酸アリル                                0.9部
    1、3-ブチレンジメタクリレート                  0.3部
    tert-ブチルヒドロパーオキシド                    0.2部
    アルケニルコハク酸ジカリウム                      0.5部
からなる溶液を窒素フロー下4時間かけて滴下し、滴下終了後2時間保持した後冷却して平均粒子径82nm、固形分40.4%、pH8.8である小粒子ゴムラテックス(C)を得た。
【0036】実施例1
図1に示す混合用エレメントB部の内径が30mm、長さ250mm、混合用エレメントD部の内径が15mm、長さ125mmのスタティックミキサーである二段の流通式管型装置8、9を用い、製造例1で得た平均粒子径85nmの小粒子ゴムラテックス(A)を室温にて導入口1より100ml/分で送液し管8内をラテックスで満たした後、導入管2より水を6ml/分、導入口3より無水酢酸を0.25ml/分の速度で供給し、小粒子ゴムラテックス(A)と無水酢酸とを流通式管型装置8により混合した。この混合によって得られた混合ラテックスを内径8mmの供給管4中でのレイノルズ数が55で層流状態であることを確認し、排出口5が底部から5mm上方にある容器6(容量5L、無撹拌)に供給した。容器6への排出が開始してから40分で導入管1~3からの供給を全て同時に停止し、そのまま管内の残液を全て容器6内に送り出した。そのまま10分間、混合ラテックスを容器6内に静置した後、4%水酸化ナトリウム水溶液190mlを添加、5分後に撹拌、中和してラテックスのpHを11に調整し肥大化を終了した。得られたラテックスをガーゼにて濾過し、得られた塊状物を乾燥し重量を測定した結果、0.15g(全ポリマーに対し0.01%)と良好であった。重量平均粒子径(S)が320nm、また、得られた肥大化ラテックスの粒子径分布を測定した結果、150nm未満の粒子の割合が3%、256nm(0.8×S)~400nm(1.25×S)の範囲の粒子径を有する粒子が42%と広い粒子径分布を有するものであった。
【0037】実施例2
ラテックスの供給速度を200ml/分として20分で全てのラテックスを容器6に導入し、静置時間を2時間とした以外は同様にして操作を行い(このときの供給管4でのレイノルズ数;27)、乾燥後の塊状物が0.08g(全ポリマーに対し0.005%)と良好であった。重量平均粒子径(S)が320nm、また、得られた肥大化ラテックスの粒子径分布を測定した結果、150nm未満の粒子の割合が1%、0.8×S~1.25×Sの範囲に入る粒子が55%と広い粒子径分布を有するものであった。
【0038】実施例3
用いるゴムラテックスを、製造例2の小粒子ゴムラテックス(B)に変更した以外は、実施例1と同様にして処理を行い(このときの供給管4でのレイノルズ数;55)、乾燥後の塊状物が0.20g(全ポリマーに対し0.013%)と良好であった。重量平均粒子径(S)が270nm、また、得られた肥大化ラテックスの粒子径分布を測定した結果、150nm未満の粒子の割合が4%、0.8×S~1.25×Sの範囲に入る粒子が54%と広い粒子径分布を有するものであった。
【0039】実施例4
用いるゴムラテックスを、製造例3の小粒子ゴムラテックス(C)に変更した以外は、実施例1と同様にして処理を行い(このときの供給管4でのレイノルズ数;55)、乾燥後の塊状物は0.10g(全ポリマーに対し0.006%)と良好であった。重量平均粒子径(S)が340nm、また、得られた肥大化ラテックスの粒子径分布を測定した結果、150nm未満の粒子の割合が5%、0.8×S~1.25×Sの範囲に入る粒子が51%と広い粒子径分布を有するものであった。
【0040】比較例1
酸無水物水溶液導入口7を排出口5とした装置にて、容器6(容積5L)内に小粒子ゴムラテックス(A)4、000gを直接容れ200rpmで撹拌下、これの液面下に導入管2から水を230g、導入管3からは無水酢酸を9.6g各々30秒間で全量混合・供給した。供給終了後、1分間撹拌を継続し撹拌を停止した。そのまま30分静置し、4%水酸化ナトリウム水溶液190mlを添加し、pHを11に調整した。乾燥後の塊状物は0.08g(全ポリマーに対し0.005%)と良好であった。重量平均粒子径(S)が310nm、また、得られた肥大化ラテックスの粒子径分布を測定した結果、150nm未満の粒子の割合が3%、0.8×S~1.25×Sの範囲に入る粒子が84%と狭い粒子径分布を有するものであった。
【0041】比較例2
ラテックスの全量が容器6に導入されてからの静置時間を3分に変更した以外は、実施例1と同様にして処理を行い(このときの供給管4でのレイノルズ数;54)、乾燥後の塊状物が0.03g(全ポリマーに対し0.002%)と良好であった。重量平均粒子径(S)が170nm、また、得られた肥大化ラテックスの粒子径分布を測定した結果、150nm未満の粒子の割合が83%と非常に多いものであった。
【0042】比較例3
ラテックスの全量が容器6に導入されてからの静置時間を8時間に変更した以外は、実施例1と同様にして処理を行い(このときの供給管4でのレイノルズ数;54)、乾燥後の塊状物が82.5g(全ポリマーに対し5.16%)と非常に多いものであった。重量平均粒子径(S)が390nm、また、得られた肥大化ラテックスの粒子径分布を測定した結果、150nm未満の粒子の割合が1重量%、0.8×S~1.25×Sの範囲に入る粒子が89%と狭い粒子径分布を有するものであった。
【0043】
【発明の効果】以上説明したように、本発明のゴムラテックスの製造方法によれば粒子径が小さなゴムラテックスを用いても、肥大化工程において凝固物を殆ど発生させることなく、高性能なABS樹脂等の製造に好適な広い粒子径分布を有した肥大化ゴムラテックスを工業的に有利に生産することが可能となる。



[1]

PROBLEM TO BE SOLVED: To provide a method for producing rubber latex for the production, for example, of high performance ABS resin substantially without generating aggregates at the expansion step even using rubber latex having a small particle size.

[2]

SOLUTION: This method comprises adding an acid anhydride to small- particle rubber latex, which was obtained by emulsion polymerization and becomes unstable at acidic pH, having an average particle size of 150 nm or less at neutral or alkaline pH to expand the small-particle rubber latex to give rubber latex having a wide range of particle size, wherein the acid anhydride and the small-particle rubber latex are supplied into passing-through type tower mixer 8 to give a latex mixture, which is then introduced into container 6, thereafter the latex mixture is left for 10-300 min for sitting, then the resultant latex mixture is neutralized using a basic substance.

[3]

COPYRIGHT: (C)2000,JPO



【特許請求の範囲】
【請求項1】  乳化重合によって得られた酸性域で不安定となる中性ないしアルカリ性である平均粒子径150nm以下の小粒子ゴムラテックスに、酸無水物を添加して小粒子ゴムラテックスを肥大化し粒子径分布の広いゴムラテックスを得るゴムラテックスの製造方法であって、酸無水物と小粒子ゴムラテックスとを流通式管型装置内に供給し混合して混合ラテックスとし、該混合ラテックスを容器内に導入して10分以上、300分以下静置した後に、塩基性物質によって中和することを特徴とするゴムラテックスの製造方法。
【請求項2】  混合ラテックスを容器内に導入し始めてから導入を終了するまでの所要時間が5分以上、60分以下である請求項1記載のゴムラテックスの製造方法。
【請求項3】  容器内に吐出される混合ラテックスの大部分を液面下に吐出し、且つ混合ラテックスを流通式管型装置から容器内に供給する供給管内の混合ラテックスがレイノルズ数2、000以下の層流状態にあることを特徴とする請求項1記載のゴムラテックスの製造方法。
【請求項4】  酸無水物と水とを予め一段目の流通式管型装置内で混合した水溶液を二段目の流通式管型装置に供給して小粒子ゴムラテックスと混合する請求項1記載のゴムラテックスの製造方法。
【請求項5】  製造されたゴムラテックスの重量平均粒子径Sが150~400nmであり、かつ150nm未満の粒子径を有する粒子の割合が10重量%未満で、さらに0.8×S~1.25×Sの範囲の粒子径を有する粒子の割合が70重量%以下である請求項1記載のゴムラテックスの製造方法。