SUPERCRITICAL REFRIGERATION CYCLE

06-08-2009 дата публикации
Номер:
WO000002009096442A1
Автор: YOSHIDA, Hiroyuki
Принадлежит: Calsonic Kansei Corporation
Контакты:
Номер заявки: JP14-05-200909
Дата заявки: 29-01-2009

超臨界冷凍サイクル
[0001]

 本発明は、炭酸ガスを冷媒とし、ガスクーラを出た高圧冷媒とアキュムレータを出た低圧冷媒との間で熱交換する内部熱交換器を備えた超臨界冷凍サイクルに関する。

[0002]

 CO2(二酸化炭素)を冷媒として用いた超臨界冷凍サイクルは、コンプレッサと、ガスクーラと、膨張弁と、エバポレータと、アキュムレータを順次環状に接続する。
 そして、このサイクルの中で冷房能力を向上するため、ガスクーラ出口冷媒とアキュムレータ出口冷媒を熱交換する内部熱交換器を配置している。

[0003]

 高温時(高負荷時)は、ガスクーラ出口冷媒が高温(40~50℃程度)で、アキュムレータ出口冷媒は低温(10℃以下程度)になっており、内部熱交換器は、ガスクーラ出口冷媒の冷却機能を発揮する。

[0004]

 この場合、高温時においては内部熱交換器によって、ガスクーラ冷媒出口温度を冷却するよう作用するが、低温時(低負荷時)については、ガスクーラ出口冷媒温度とアキュムレータ出口冷媒温度が逆転し、内部熱交換器によって、コンプレッサへ供給される冷媒を冷却し、液冷媒にして供給するようになるおそれがある。

[0005]

 このように、低温時に液冷媒の流出によるコンプレッサの液圧縮など、耐久性に悪影響をもたらす構成になっていたため、内部熱交換器による熱交換量を増減させる流量制御弁を設けた超臨界冷凍サイクルが提案されている(例えば、特許文献1,2参照)。
特開2002-228282号公報特開平11-193967号公報

[0006]

 しかしながら、従来の流量制御弁を設けた超臨界冷凍サイクルにあっては、流量制御するために、温度や圧力をセンサにより感知し、専用のコントローラ等によって流量制御弁の弁開度を制御する電子制御系の構成が必要であるため、部品点数増やコスト増や信頼性低下を招く、という問題があった。

[0007]

 本発明は、上記問題に着目してなされたもので、部品点数減やコスト減や信頼性向上を図りながら、冷媒温度によって内部熱交換器への冷媒流量を制御することで、内部熱交換による冷房能力の向上と、コンプレッサへ供給する冷媒の液冷媒化の防止の両立を達成することができる超臨界冷凍サイクルを提供することを目的とする。

[0008]

 本発明では、コンプレッサと、ガスクーラと、膨張弁と、エバポレータと、アキュムレータを順次環状に接続し、前記ガスクーラを出た高圧冷媒と前記アキュムレータを出た低圧冷媒との間で熱交換する内部熱交換器を備えた超臨界冷凍サイクルにおいて、前記内部熱交換器の少なくとも片方の通路をバイパスするバイパス通路を設定し、前記バイパス通路に、冷媒温度を感知し、内部熱交換により前記ガスクーラを出た高圧冷媒を冷却するとき閉じ、内部熱交換により前記アキュムレータを出た低圧冷媒を冷却するとき開く弁動作を行う流量調整弁を設けたことを特徴とする。

[0009]

 よって、本発明の超臨界冷凍サイクルにあっては、内部熱交換器をバイパスするバイパス通路に設けられた流量調整弁が、冷媒温度を感知し、内部熱交換によりガスクーラを出た高圧冷媒を冷却するとき閉じ、内部熱交換によりアキュムレータを出た低圧冷媒を冷却するとき開く弁動作を行う。
 したがって、センサやコントローラ等を必要とせずに、バイパス通路を流れる冷媒の流量を調節でき、これによって、電子制御系の構成が必要であるシステムに比べ、部品点数減やコスト減や信頼性向上を図ることができる。
 そして、内部熱交換によりガスクーラを出た高圧冷媒を冷却する高負荷時には、内部熱交換器をバイパスするバイパス通路が流量調整弁により閉じられる。
 よって、内部熱交換器は、ガスクーラ出口冷媒を冷却するように内部熱交換機能を発揮し、これによって、超臨界冷凍サイクルによる冷房能力の向上を図ることができる。
 一方、内部熱交換によりアキュムレータを出た低圧冷媒を冷却する低負荷時には、内部熱交換器をバイパスするバイパス通路が流量調整弁により開かれる。
 よって、内部熱交換器による内部熱交換機能が抑制され、低負荷時にコンプレッサへ供給される冷媒を冷却し、液冷媒にして供給することが防止される。
 この結果、部品点数減やコスト減や信頼性向上を図りながら、冷媒温度によって内部熱交換器への冷媒流量を制御することで、内部熱交換による冷房能力の向上と、コンプレッサへ供給する冷媒の液冷媒化の防止の両立を達成することができる。

[0010]

実施例1のCO2冷凍サイクル(超臨界冷凍サイクル)を示すサイクルシステム図である。実施例1のCO2冷凍サイクル(超臨界冷凍サイクル)の内部熱交換器及びバイパスパイプを示す図で、内部熱交換器の断面を示す。実施例1のCO2冷凍サイクル(超臨界冷凍サイクル)の内部熱交換器及びバイパスパイプを示す図で、内部熱交換器及びバイパスパイプの斜視図を示す。実施例1のCO2冷凍サイクルに採用された弁閉状態の流量調整弁を示す断面図である。実施例1のCO2冷凍サイクルに採用された流量調整弁の第1ディスクと第2ディスクを示す斜視図である。実施例1のCO2冷凍サイクルに採用された弁開状態の流量調整弁を示す断面図である。現行のCO2冷凍サイクルを示すサイクルシステム図である。現行のCO2冷凍サイクルの内部熱交換器を示す斜視図である。

符号の説明

[0011]

1            コンプレッサ
2            ガスクーラ
3            膨張弁
4            エバポレータ
5            アキュムレータ
6            内部熱交換器
6a          高圧冷媒通路
6b          低圧冷媒通路
7            バイパス通路
8            第1流量調整弁(流量調整弁)
9            第2流量調整弁(流量調整弁)
10          バイパスパイプ
11          第1パイプ継ぎ手
12          第2パイプ継ぎ手
13,14    一対のディスク
13a,14a       通孔

[0012]

 以下、本発明の超臨界冷凍サイクルを実現する最良の形態を、図面に示す実施例1に基づいて説明する。

[0013]

 まず、構成を説明する。
 図1は、実施例1のCO2冷凍サイクル(超臨界冷凍サイクル)を示すサイクルシステム図である。

[0014]

 自然冷媒であるCO2冷媒を用いたCO2冷凍サイクルは、図1に示すように、コンプレッサ1と、ガスクーラ2と、膨張弁3と、エバポレータ4と、アキュムレータ5を順次環状に接続し、前記ガスクーラ2を出た高圧冷媒と前記アキュムレータ5を出た低圧冷媒との間で熱交換する内部熱交換器6を備えることで構成される。

[0015]

 前記コンプレッサ1は、エンジンやモータなどにより駆動され、アキュムレータ5からのガス冷媒を圧縮し、高温・高圧のガス冷媒とする。
 実施例1では、高圧と低圧の差圧を制御する差圧制御ECV(External Control Valve)を持った外部可変容量制御タイプを採用している。
 なお、冷媒として用いられるCO2冷媒の飽和ガスは、フッ素冷媒の7倍の密度、1.2倍の蒸発潜熱(単位質量当たり)であるので、単位体積あたりの冷房能力は約8倍になる。
 このため、コンプレッサ1の吐出容量は、15~30cc程度で十分性能が発揮できる。

[0016]

 前記ガスクーラ2は、コンプレッサ1からの高温・高圧のガス冷媒を外気と熱交換し、低温・高圧のガス冷媒とする凝縮器である。
 このガスクーラ2としては、互いに間隔をおいて縦平行に配置された左右一対のヘッダータンクと、両端をそれぞれ前記ヘッダータンクに連通接続して横平行に多数配置された熱交換チューブと、隣接する熱交換チューブの空気流通間隙に配置されたフィンと、を備えて構成される。
 そして、一対のヘッダータンクの内部が、仕切り手段により横方向に仕切られることにより、熱交換チューブによる冷媒通路が、入口側通路群と中間通路群と出口側通路群というように、少なくとも2つ以上の通路群に区画されている。

[0017]

 前記膨張弁3は、エンジンルーム内に設置され、ガスクーラ2からの高圧ガス冷媒の圧力を低圧の液ガス混合冷媒とする。
 実施例1の場合、ガスクーラ2の出口冷媒温度及び出口冷媒圧力に基づいて、冷媒の過熱度(スーパーヒート)を一定に保持するように膨張弁開度を制御する制御型膨張弁を採用している。

[0018]

 前記エバポレータ4は、車室内空調を行う車両用空調ユニットA/U内に、送風機等と共に配置される熱交換器である。
 膨張弁3からの低温・低圧の液ガス混合冷媒を循環させることで周囲の空気から熱を奪い、冷媒の温度を高め、ガス化を促進する。
 CO2冷媒を用いた冷凍サイクルにおいて、高負荷時における平衡圧は、7MPa(約70bar)以上と高圧になることから、車室内への冷媒漏れは、フッ素冷媒以上の信頼性を確保する必要がある。
 このため、エバポレータ4は、コア・配管・フランジまでを一体化する構造とし、これにより、Oリングシールなどのスローリークを含む車室内への冷媒漏れを防いでいる。

[0019]

 前記アキュムレータ5は、エバポレータ4から導入される液ガス混合冷媒から気液を分離し、ガス冷媒をコンプレッサ1に供給し、CO2冷凍サイクル中の余剰液冷媒を本体内部に貯液する。
 CO2冷媒を用いた冷凍サイクルでは、高圧圧力が臨界圧を超えた場合、高圧側に液冷媒が溜まらない。
 このため、フッ素冷媒を用いた冷凍サイクルで一般的なリキッドタンクは採用できず、アキュムレータ5を使って冷媒適正量を管理する。

[0020]

 前記内部熱交換器6は、ガスクーラ2を出た高圧冷媒とアキュムレータ5を出た低圧冷媒との間で熱交換するというように、CO2冷凍サイクル内で熱交換し、外部の空気と熱交換しないので、「内部熱交換器」と呼んでいる。
 この内部熱交換器6により、膨張弁3の入口冷媒温度を外気温度以下まで下げ、エバポレータ4の入口エンタルピを下げることによって、COP(効率:Coefficient Of Performance)を向上させる。

[0021]

 実施例1では、図1に示すように、前記内部熱交換器6の少なくとも片方の通路をバイパスするバイパス通路7を設定し、前記バイパス通路7に、冷媒温度を感知し、内部熱交換により前記ガスクーラ2を出た高圧冷媒を冷却するとき閉じ、内部熱交換により前記アキュムレータ5を出た低圧冷媒を冷却するとき開く弁動作を行う第1流量調整弁8(流量調整弁)と第2流量調整弁9(流量調整弁)を設けている。

[0022]

 前記第1流量調整弁8と前記第2流量調整弁9は、高温側の内部熱交換器6への入口冷媒温度(=ガスクーラ出口温度)よりも、低温側の内部熱交換器6への入口冷媒温度(=アキュムレータ出口温度)の方が高い温度条件成立時に弁閉から弁開に切り替え、前記バイパス通路7に冷媒を流す設定とされる。

[0023]

 図2Aおよび図2Bは、実施例1のCO2冷凍サイクル(超臨界冷凍サイクル)の内部熱交換器及びバイパスパイプを示す図で、図2Aは内部熱交換器の断面を示し、図2Bは内部熱交換器及びバイパスパイプの斜視図を示す。
 図3は、実施例1のCO2冷凍サイクルに採用された弁閉状態の流量調整弁を示す断面図である。
 図4は、実施例1のCO2冷凍サイクルに採用された流量調整弁の第1ディスクと第2ディスクを示す斜視図である。
 図5は、実施例1のCO2冷凍サイクルに採用された弁開状態の流量調整弁を示す断面図である。

[0024]

 前記内部熱交換器6は、図2Aに示すように、中央部に前記ガスクーラ2から前記膨張弁3へと流れる高圧冷媒通路6aを配置し、この高圧冷媒通路6aの外周部に、前記アキュムレータ5から前記コンプレッサ1へと流れる複数の低圧冷媒通路6bを配置することにより構成される。
 なお、高圧冷媒通路6aの冷媒流れ方向と、低圧冷媒通路6bの冷媒流れ方向は、逆方向となっている。

[0025]

 前記バイパス通路7は、図2Bに示すように、前記アキュムレータ5から前記コンプレッサ1へと流れる低圧冷媒通路6bをバイパスするバイパスパイプ10の内部通路である。
 ここで、バイパスパイプ10は、低圧冷媒通路6bとバイパス通路7の連通路を有する第1パイプ継ぎ手11と第2パイプ継ぎ手12を介して、内部熱交換器6に連結設定される。

[0026]

 前記第1流量調整弁8は、図2Bに示すように、前記バイパス通路7の入口部に設定され、前記アキュムレータ5からの冷媒温度による変形により通路開度を制御する弁体を有する。
 前記第2流量調整弁9は、図2Bに示すように、前記バイパス通路7の出口部に設定され、前記コンプレッサ1への冷媒温度による変形により通路開度を制御する弁体を有する。

[0027]

 前記弁体は、図3~図5に示すように、1箇所に冷媒通路となる通孔13a,14aを設定した円形状のディスクを2枚重ね合わせた一対のディスク13,14により構成している。

[0028]

 前記一対のディスク13,14は、図3に示すように、バイパスパイプ10に形成したディスク溝に嵌合することで、2つの通孔13a,14aが重ならないように位置決めし、ストッパプレート15により、重ね合わせ面が接触するように取り付けられる。

[0029]

 前記一対のディスク13,14は、線膨張係数の異なる材質の板材を貼り合わせたバイメタル、あるいは、記憶温度を超えると記憶形状に変形する形状記憶合金により構成される。
 そして、一対のディスク13,14に触れる冷媒の温度が高温域では、図3に示すように、少量の冷媒流れを許容しながら、重ね合わせ部分が密着する。
 また、一対のディスク13,14に触れる冷媒の温度が低温域では、図5に示すように、重ね合わせ中央部分が開き、2つの通孔13a,14aを介して冷媒が流れるように変形する。
 ここで、一対のディスク13,14の冷媒温度感応の設定は、これ以上温度が低下したらコンプレッサ1へ供給される冷媒を冷却して液冷媒化する温度を境界温度とし、この境界温度より高い温度域を高温域とし、境界温度より低い温度域を低温域とする。

[0030]

 次に、作用を説明する。
 まず、「超臨界冷凍サイクルの技術」の説明を行い、続いて、実施例1の超臨界冷凍サイクルにおける作用を、「流量調整弁によるバイパス冷媒流量調整作用」、「バイパス冷媒流量の制限による内部熱交換作用」、「バイパス冷媒流量の確保による内部熱交換制限作用」に分けて説明する。

[0031]

 [超臨界冷凍サイクルの技術]
 高まる地球温暖化防止の世界動向に対応するべく、自然冷媒であるCO2冷媒を用いたCO2冷凍サイクルによるエアコンシステムの開発が急ピッチで進められている。
 このCO2冷凍サイクルは、CO2冷媒の特性として、臨界温度が31.1℃と低く、外気温度が約30℃以上の負荷では、高圧圧力が臨界圧(臨界圧7.4MPa以上でかつ温度31.1℃以上のエリアを超臨界領域という。)を超えてしまう。
 このため、CO2冷凍サイクルは超臨界冷凍サイクルと呼ばれ、現行は、図6に示すように、コンプレッサと、ガスクーラと、膨張弁と、エバポレータと、アキュムレータを順次環状に接続し、ガスクーラ出口冷媒とアキュムレータ出口冷媒の間で熱交換するように、図7に示すような内部熱交換器を配置している。
 この内部熱交換器は、ガスクーラ出口冷媒を冷却することで冷房能力向上すると共に、アキュムレータ出口冷媒を加熱することでスーパーヒートを確保している。

[0032]

 高温時(高負荷時)は、ガスクーラ出口冷媒が高温(40~50℃程度)で、アキュムレータ出口冷媒は低温(10℃以下程度)になっており、内部熱交換器は、ガスクーラ出口冷媒の冷却機能を発揮する。
 しかし、低温時(低負荷時)については、ガスクーラ出口冷媒温度とアキュムレータ出口冷媒温度が逆転し、内部熱交換器によって、コンプレッサへ供給される冷媒を冷却し、液冷媒にして供給するようになるおそれがある。

[0033]

 このように、低温時に液冷媒の流出によるコンプレッサの液圧縮など、耐久性の悪影響をもたらす構成になっていたため、特開2002-228282号公報や特開平11-193967号公報等にて、内部熱交換器による熱交換量を増減させる流量制御弁を設けた超臨界冷凍サイクルが提案されている。

[0034]

 しかしながら、従来公報に記載される流量制御弁を設けた超臨界冷凍サイクルにあっては、流量制御するために、温度や圧力をセンサにより感知し、専用のコントローラ等によって流量制御弁の弁開度を制御する電子制御系の構成が必要であるため、部品点数増やコスト増や信頼性低下を招く。
 特に、信頼性に関しては、超臨界冷凍サイクルが高圧システムであり、かつ、過酷な環境にある車両に搭載される点から重要である。

[0035]

 本発明者は、ガスクーラ出口冷媒温度とアキュムレータ出口冷媒温度の逆転を、内部熱交換される冷媒温度を監視により検知することが可能である点に着目した。
 この着目点にしたがって、内部熱交換器をバイパスする通路を設け、このバイパス通路に冷媒温度に感応して弁動作する流量調整弁を設ける構成を採用した。
 この構成を採用することにより、部品点数減やコスト減や信頼性向上を図りながら、冷媒温度によって内部熱交換器への冷媒流量を制御することで、内部熱交換による冷房能力の向上と、コンプレッサへ供給する冷媒の液冷媒化の防止の両立を達成することができるようにした。

[0036]

 [流量調整弁によるバイパス冷媒流量調整作用]
 実施例1のCO2冷凍サイクルにあっては、内部熱交換器6をバイパスするバイパス通路7に設けられた第1流量調整弁8と第2流量調整弁9が、冷媒温度を感知し、内部熱交換によりガスクーラ2を出た高圧冷媒を冷却するとき閉じ、内部熱交換によりアキュムレータ5を出た低圧冷媒を冷却するとき開く弁動作を行う。

[0037]

 第1流量調整弁8と第2流量調整弁9が閉じている遮断時、図3に示すように、第1ディスク13と第2ディスク14は、冷媒温度により通常の平板と同様に、直線状になっており、2つの通孔13a,14aが互いに塞ぐ形となり、バイパス通路7に冷媒は流れない。
 しかし、厳密に言うと、平板状の第1ディスク13と第2ディスク14の接触により、完全にシールすることはできず、図3の点線矢印で示すように、少量の冷媒が流れることになる。
 このように、少量の冷媒が流れることにより、弁体である第1ディスク13と第2ディスク14は、実際の冷媒に触れることができ、正確な温度制御が可能となる。

[0038]

 一方、第1流量調整弁8と第2流量調整弁9が開いている開放時、図5に示すように、向かい合った第1ディスク13と第2ディスク14は、冷媒温度により平板形状から、互いに異なる方向の湾曲ドーム形状に変化する。
 このため、2つの通孔13a,14aの間に通路隙間Sが形成され、通孔13a→通路隙間S→通孔14aを経過してバイパス通路7に冷媒が流れる。

[0039]

 したがって、センサやコントローラ等を必要とせずに、バイパス通路7を流れる冷媒の流量を調節でき、これによって、電子制御系の構成が必要であるシステムに比べ、部品点数減やコスト減や信頼性向上を図ることができる。

[0040]

 [バイパス冷媒流量の制限による内部熱交換作用]
 内部熱交換によりガスクーラ2を出た高圧冷媒を冷却する高負荷時には、内部熱交換器6をバイパスするバイパス通路7が、第1流量調整弁8と第2流量調整弁9により閉じられる。
 つまり、バイパス通路7を流れる冷媒流量が制限され、アキュムレータ5を出た低圧冷媒の大半は、内部熱交換器6の複数の低圧冷媒通路6bを経過することで内部熱交換を行った後、コンプレッサ1へと供給される。

[0041]

 よって、内部熱交換器6は、ガスクーラ出口冷媒とアキュムレータ出口冷媒との間で熱交換するという内部熱交換作用を示す。
 この内部熱交換作用のうち、ガスクーラ出口冷媒を冷却する機能によって、膨張弁3の入口冷媒温度を低下させ、エバポレータ4の入口エンタルピを下げることによって、COPを向上させる。
 言い換えると、CO2冷凍サイクルによる冷房能力の向上を図ることができる。
 また、内部熱交換作用のうち、アキュムレータ出口冷媒を加熱する機能によって、スーパーヒートを確保したガス冷媒をコンプレッサ1へ供給することができる。

[0042]

 [バイパス冷媒流量の確保による内部熱交換制限作用]
 一方、内部熱交換によりアキュムレータ5を出た低圧冷媒を冷却する低負荷時には、内部熱交換器6をバイパスするバイパス通路7が第1流量調整弁8と第2流量調整弁9により開かれる。
 つまり、アキュムレータ5を出た低圧冷媒の大半はバイパス通路7を流れることになり、内部熱交換器6による内部熱交換を行わないで、低圧冷媒はアキュムレータ5からそのままコンプレッサ1へと供給される。

[0043]

 よって、内部熱交換器6による内部熱交換機能が抑制され、低負荷時にコンプレッサ1へ供給される冷媒を冷却し、液冷媒にして供給することが防止される。
 この結果、コンプレッサ1へ液冷媒が流入し、液圧縮を余儀なくされることによる、コンプレッサ1の耐久性低下やコンプレッサ1の動力増加を抑えることが可能となる。

[0044]

 次に、効果を説明する。
 実施例1のCO2冷凍サイクルにあっては、下記に列挙する効果を得ることができる。

[0045]

 (1) コンプレッサ1と、ガスクーラ2と、膨張弁3と、エバポレータ4と、アキュムレータ5を順次環状に接続し、前記ガスクーラ2を出た高圧冷媒と前記アキュムレータ5を出た低圧冷媒との間で熱交換する内部熱交換器6を備えたCO2冷凍サイクルにおいて、前記内部熱交換器6の少なくとも片方の通路をバイパスするバイパス通路7を設定し、前記バイパス通路7に、冷媒温度を感知し、内部熱交換により前記ガスクーラ2を出た高圧冷媒を冷却するとき閉じ、内部熱交換により前記アキュムレータ5を出た低圧冷媒を冷却するとき開く弁動作を行う流量調整弁(第1流量調整弁8,第2流量調整弁9)を設けたため、部品点数減やコスト減や信頼性向上を図りながら、冷媒温度によって内部熱交換器6への冷媒流量を制御することで、内部熱交換による冷房能力の向上と、コンプレッサ1へ供給する冷媒の液冷媒化の防止の両立を達成することができる。

[0046]

 (2) 前記流量調整弁は、高温側の内部熱交換器6への入口冷媒温度よりも、低温側の内部熱交換器6への入口冷媒温度の方が高い温度条件成立時に弁閉から弁開に切り替え、前記バイパス通路7に冷媒を流す設定としたため、冷媒温度条件のみにより内部熱交換の態様が、ガスクーラ2を出た高圧冷媒を冷却する態様か、アキュムレータ5を出た低圧冷媒を冷却する態様かを把握し、冷媒温度を感知する流量調整弁によりバイパス通路7を流す冷媒流量を調整することができる。

[0047]

 (3) 前記バイパス通路7は、前記アキュムレータ5から前記コンプレッサ1へと流れる低圧冷媒通路をバイパスする通路であり、前記流量調整弁は、前記バイパス通路7の入口部に設定され、前記アキュムレータ5からの冷媒温度による変形により通路開度を制御する弁体を有する第1流量調整弁8と、前記バイパス通路7の出口部に設定され、前記コンプレッサ1への冷媒温度による変形により通路開度を制御する弁体を有する第2流量調整弁9により構成したため、バイパス通路7の出入口部での冷媒温度をそれぞれ感知して弁動作する2つの流量調整弁8,9により、応答性良く、かつ、確実にバイパス通路7を流す冷媒流量を調整することができる。
 つまり、アキュムレータ5からの冷媒温度の変化と、コンプレッサ1への冷媒温度の変化のタイミングにズレがあった場合、先に温度変化に感応した流量調整弁が弁動作する。
 また、2つの流量調整弁8,9のうち、一方の流量調整弁の温度感知弁動作に不具合を生じても、他方の流量調整弁の温度感知弁動作によりこれを補うことができる。

[0048]

 (4) 前記弁体は、少なくとも1箇所に冷媒通路となる通孔13a,14aを設定したディスクを2枚重ね合わせた一対のディスク13,14により構成し、前記一対のディスク13,14は、2つの通孔13a,14aが重ならないように位置決めし、冷媒温度が高温域では重ね合わせ部分が密着し、冷媒温度が低温域で重ね合わせ中央部分が開くように変形するため、弁体そのものが冷媒温度感知部材となり、弁駆動部材や弁動作軸等を冷媒温度感知部材とする場合に比べ、部品点数が少ない構成で、弁動作安定性の高い流量調整弁とすることができる。

[0049]

 (5) 前記一対のディスク13,14は、線膨張係数の異なる材質の板材を貼り合わせたバイメタルにより構成したため、冷媒の温度変化に応じた変形量により、冷媒の温度変化に追従して徐々にバイパス通路7を流す冷媒流量を調整することができる。

[0050]

 (6) 前記一対のディスク13,14は、記憶温度を超えると記憶形状に変形する形状記憶合金により構成したため、冷媒温度が記憶温度の前後に変化する場合、記憶温度を境にしてバイパス通路7を流す冷媒流量を切り替え調整することができる。

[0051]

 以上、本発明の超臨界冷凍サイクルを実施例1に基づき説明してきたが、具体的な構成については、この実施例1に限られるものではなく、特許請求の範囲の各請求項に係る発明の要旨を逸脱しない限り、設計の変更や追加等は許容される。

[0052]

 実施例1では、アキュムレータからコンプレッサへと流れる低圧冷媒通路をバイパスするバイパス通路の例を示した。
 しかし、ガスクーラから膨張弁へと流れる高圧冷媒通路をバイパスするバイパス通路としても良いし、さらに、低圧冷媒通路と高圧冷媒通路をバイパスする2つのバイパス通路の例としても良い。

[0053]

 実施例1では、流量調整弁として、バイパス通路の出入口部に設定され第1流量調整弁と第2流量調整弁により構成した例を示した。
 しかし、バイパス通路の途中位置に1つの流量調整弁を設定した例であっても良い。

[0054]

 実施例1では、冷媒温度を感知して弁動作する流量調整弁として、冷媒温度による変形により通路開度を制御する弁体を有する例を示した。
 しかし、冷媒温度による変形により通路開度を制御する弁駆動部材を有する例としても良いし、冷媒温度による変形により通路開度を制御する弁動作軸を有する例としても良い。

[0055]

 実施例1では、流量調整弁の弁体として、1箇所に冷媒通路となる通孔を設定したディスクを2枚重ね合わせた一対のディスクにより構成した例を示した。
 しかし、通孔を複数設定したディスクを2枚重ね合わせた一対のディスクにより構成しても良い。
 また、通孔の代わり、あるいは、通孔と共に冷媒通路となる切り欠き溝を設定したディスクを2枚重ね合わせた一対のディスクにより構成しても良い。

[0056]

 実施例1では、一対のディスクを、バイメタルあるいは形状記憶合金により構成した例を示した。
 しかし、一対のディスクの一部を、バイメタルあるいは形状記憶合金により構成した例であっても良いし、バイメタルや形状記憶合金以外の温度感応素材を用いて一対のディスクを構成しても良い。

[0057]

 要するに、内部熱交換器の少なくとも片方の通路をバイパスするバイパス通路を設定し、バイパス通路に、冷媒温度を感知し、内部熱交換によりガスクーラを出た高圧冷媒を冷却するとき閉じ、内部熱交換によりアキュムレータを出た低圧冷媒を冷却するとき開く弁動作を行う流量調整弁を設けたものであれば、実施例1に限られることはない。

[0058]

 実施例1では、車両のエアコンシステムに適用するCO2冷凍サイクルの例を示したが、車両以外、例えば、家庭用のエアコンシステムや工場や事業所のエアコンシステム等の超臨界冷凍サイクルとしても適用できる。
 要するに、コンプレッサと、ガスクーラと、膨張弁と、エバポレータと、アキュムレータを順次環状に接続し、ガスクーラを出た高圧冷媒とアキュムレータを出た低圧冷媒との間で熱交換する内部熱交換器を備えた超臨界冷凍サイクルであれば適用できる。



[0000]

A CO2 refrigeration cycle comprising a compressor (1), a gas cooler (2), an expansion valve (3), an evaporator (4) and an accumulator (5) connected sequentially and circularly, and an internal heat exchanger (6) for exchanging heat between high-pressure refrigerant exited the gas cooler (2) and low-pressure refrigerant exited the accumulator (5), wherein a bypass passage (7) is set to bypass at least one passage of the internal heat exchanger (6), and a first flow regulation valve (8) and a second flow regulation valve (9) which sense a refrigerant temperature and perform valve operations to close when high-pressure refrigerant exited the gas cooler (2) is cooled by internal heat exchange and to open when low-pressure refrigerant exited the accumulator (5) is cooled by internal heat exchange are provided in the bypass passage (7).



 コンプレッサと、ガスクーラと、膨張弁と、エバポレータと、アキュムレータを順次環状に接続し、前記ガスクーラを出た高圧冷媒と前記アキュムレータを出た低圧冷媒との間で熱交換する内部熱交換器を備えた超臨界冷凍サイクルにおいて、
 前記内部熱交換器の少なくとも片方の通路をバイパスするバイパス通路を設定し、
 前記バイパス通路に、冷媒温度を感知し、内部熱交換により前記ガスクーラを出た高圧冷媒を冷却するとき閉じ、内部熱交換により前記アキュムレータを出た低圧冷媒を冷却するとき開く弁動作を行う流量調整弁を設けたことを特徴とする超臨界冷凍サイクル。

 請求項1に記載された超臨界冷凍サイクルにおいて、
 前記流量調整弁は、高温側の内部熱交換器への入口冷媒温度よりも、低温側の内部熱交換器への入口冷媒温度の方が高い温度条件成立時に弁閉から弁開に切り替え、前記バイパス通路に冷媒を流す設定としたことを特徴とする超臨界冷凍サイクル。

 請求項1または請求項2に記載された超臨界冷凍サイクルにおいて、
 前記バイパス通路は、前記アキュムレータから前記コンプレッサへと流れる低圧冷媒通路をバイパスする通路であり、
 前記流量調整弁は、前記バイパス通路の入口部に設定され、前記アキュムレータからの冷媒温度による変形により通路開度を制御する弁体を有する第1流量調整弁と、前記バイパス通路の出口部に設定され、前記コンプレッサへの冷媒温度による変形により通路開度を制御する弁体を有する第2流量調整弁により構成したことを特徴とする超臨界冷凍サイクル。

 請求項3に記載された超臨界冷凍サイクルにおいて、
 前記弁体は、少なくとも1箇所に冷媒通路となる通孔を設定したディスクを2枚重ね合わせた一対のディスクにより構成し、
 前記一対のディスクは、2つの通孔が重ならないように位置決めし、冷媒温度が高温域では重ね合わせ部分が密着し、冷媒温度が低温域で重ね合わせ中央部分が開くように変形することを特徴とする超臨界冷凍サイクル。

 請求項4に記載された超臨界冷凍サイクルにおいて、
 前記一対のディスクは、線膨張係数の異なる材質の板材を貼り合わせたバイメタルにより構成したことを特徴とする超臨界冷凍サイクル。

 請求項4に記載された超臨界冷凍サイクルにおいて、
 前記一対のディスクは、記憶温度を超えると記憶形状に変形する形状記憶合金により構成したことを特徴とする超臨界冷凍サイクル。