HEAT PUMP APPARATUS
本発明は、ヒートポンプ装置に関するものである。
ヒートポンプ装置は、圧縮機、凝縮器である水冷媒熱交換器、減圧器である膨張弁、および、蒸発器である空気熱交換器を環状に接続した冷媒回路を備え、水冷媒熱交換器において、冷媒と水などの熱媒体との間で熱交換を行わせるものである。このヒートポンプ装置により生成された冷水または温水を用いて冷暖房が行われる(例えば、特許文献1参照)。
図9は、従来のヒートポンプ装置110の内部構成を示す斜視図である。
図9に示すように、ヒートポンプ装置110は、水冷媒熱交換器としてプレート式の水冷媒熱交換器111を有する。
ヒートポンプ装置110の内部は、仕切板112によって機械室(図9では右手前側)と送風機室(図9では左奥側)とに区画されている。
機械室には、圧縮機113、膨張弁114、アキュームレータ115等を含む冷媒回路と、プレート式の水冷媒熱交換器111が配置されている。
水冷媒熱交換器111は、背面側に、熱媒配管との二つの接続部である熱媒戻りポート116および熱媒往きポート117を有し、正面側に冷媒配管との二つの接続部を有する。
水冷媒熱交換器111において、熱媒体および冷媒の流路がそれぞれ設けられる複数の熱交換プレートが互いに平行に配置される。
図10は、水冷媒熱交換器111における熱媒体の流れを示す概念図である。図10に示すように、複数の熱交換プレート間に設けられた熱媒体の流路は並列に接合され、熱媒体が流れ込む熱媒入口111cと熱媒体が流れ出す熱媒出口111dとが、最も背面側に位置する熱交換プレートに設けられる。熱媒入口111cと熱媒出口111dとは、熱媒戻りポート116と熱媒往きポート117とにそれぞれ接合される。
上記従来技術では、熱媒体を循環させる循環ポンプが、熱媒体の補給および膨張した熱媒体のバッファであるシスターン(Cistern)とともに、ヒートポンプ装置110の外部に設置される。循環ポンプおよびシスターン(いずれも不図示)と、ヒートポンプ装置110とは、熱媒戻りポート116、熱媒往きポート117に接合された配管を介して連通する。このようにして、熱媒体が循環する熱媒回路が構成される。
従来のプレート式の水冷媒熱交換器において、背面側に、熱媒体が流れ込む熱媒配管との接続部である熱媒入口111cと熱媒体が流れ出る接続部である熱媒出口111dの両方が設けられる。
この構成では、熱媒入口111cおよび熱媒出口111dから遠い熱交換プレートほど、熱媒体が流れる流路が長く、それに伴って流路の圧力損失が大きい。
その結果、図10に示すように、正面側に近い熱交換プレートほど熱媒体の流量が少ないという不均一な流量分布が生じる。水冷媒熱交換器111に生じた熱媒体の流れの偏りは、熱交換効率を低下させる。
本発明は上記従来の課題を解決するものである。
本発明のヒートポンプ装置は、冷媒を圧縮する圧縮機と、冷媒入口、冷媒出口、熱媒入口および熱媒出口が設けられ、冷媒と熱媒体との間で熱交換させるプレート式熱交換器と、冷媒を減圧する減圧器と、冷媒と空気との間で熱交換させる蒸発器とを備える。
冷媒入口は、冷媒出口と同じ方向に向けて設けられ、熱媒入口は、熱媒出口と異なる高さに、熱媒出口と反対方向に向けて設けられる。
本発明によれば、プレート式熱交換器における熱媒体の流れる複数の流路の長さを略同一とすることができ、プレート式熱交換器における熱媒体の流量分布が均一化される。その結果、良好な熱交換効率を有するプレート式熱交換器を備えたヒートポンプ装置を提供することができる。
第1の発明のヒートポンプ装置は、冷媒を圧縮する圧縮機と、冷媒入口、冷媒出口、熱媒入口および熱媒出口が設けられ、冷媒と熱媒体との間で熱交換させるプレート式熱交換器と、冷媒を減圧する減圧器と、冷媒と空気との間で熱交換させる蒸発器とを備える。
冷媒入口は、冷媒出口と同じ方向に向けて設けられ、熱媒入口は、熱媒出口と異なる高さに、熱媒出口と反対方向に向けて設けられる。
第1の発明によれば、プレート式熱交換器における熱媒体の流れる複数の流路の長さを略同一とすることができ、プレート式熱交換器における熱媒体の流量分布が均一化される。その結果、良好な熱交換効率を有するプレート式熱交換器を備えたヒートポンプ装置を提供することができる。
第2の発明は、第1の発明において、熱媒出口と同じ方向に向けて設けられた熱媒往きポートと、熱媒入口と反対方向に向けて設けられた熱媒戻りポートとをさらに備え、熱媒出口が熱媒往きポートと連通し、熱媒入口が熱媒戻りポートと連通するものである。
第2の発明によれば、熱媒入口と熱媒出口とが互いに反対方向を向いていても、熱媒往きポートと熱媒戻りポートとを同じ方向に向けることができる。
第3の発明は、第2の発明において、プレート式熱交換器の下方に設置され、熱媒体を循環させる循環ポンプをさらに備え、熱媒入口が循環ポンプを介して熱媒戻りポートと連通するものである。
第3の発明によれば、プレート式熱交換器と循環ポンプとの占有空間を抑制することができ、ヒートポンプ装置の小型化が可能となる。
また、第3の発明は、ヒートポンプ装置の設置時における、熱媒往きポートおよび熱媒戻りポートの接合作業において、プレート式熱交換器に直接的な力が加わらない構成である。第3の発明によれば、ヒートポンプ装置の設置時に、プレート式熱交換器の変形およびその変形による熱媒体の漏洩を防止することができる。
第4の発明は、第1の発明において、熱媒入口が、高圧部品および高圧配線より下方に配置されたものである。第4の発明によれば、内側に突き出た熱媒入口から、熱媒体が漏れ出した場合でも、漏れ出した熱媒体が、高圧部品および高圧配線に接触することを防止することができる。
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
(実施の形態1)
図1に示すように、ヒートポンプ装置1は、冷媒を圧縮する圧縮機4、水または不凍液等の熱媒体(本実施の形態では水)と冷媒とで熱交換を行う水冷媒熱交換器5、減圧器である膨張弁6、蒸発器である空気熱交換器7が順に接合されて構成された冷媒回路8を備える。
圧縮機4には、モータを用いて圧縮機4を駆動する圧縮機駆動部4aと、冷媒回路8内の冷媒を貯留するアキュームレータ4bとが設けられる。アキュームレータ4bに貯留する冷媒は、圧縮機4において圧縮され四方弁9に送り出される。
四方弁9には水冷媒熱交換器5と空気熱交換器7とが接合される。暖房運転時には、四方弁9に内蔵された弁が図1に示すように切り替えられ、圧縮機4から供給された温水が水冷媒熱交換器5に供給される。
水冷媒熱交換器5は、凹凸を有する複数のステンレス板が積層され、ロウ付け接合により一体化されたプレート式の熱交換器であり、熱媒体と、冷媒回路8を循環する冷媒との熱交換を行う。
水冷媒熱交換器5には、冷媒配管11が接合され、冷媒が流れ込む冷媒入口5aと、冷媒配管11が接合され、冷媒が流れ出す冷媒出口5bとが設けられる。また、水冷媒熱交換器5には、熱媒回路3が接合され、熱媒体が流れ込む熱媒入口5cと、熱媒回路3が接合され、熱媒体が流れ出す熱媒出口5dとが設けられる。
送風ファン10は空気熱交換器7に空気を送る。圧力センサ18は、冷媒回路8に流れる冷媒の圧力を検知する。温度センサ12は、圧縮機駆動部4aの出口に接合された配管13に設けられ、冷媒配管11の一部である配管13の温度を検知する。温度センサ14は、空気熱交換器7に接合された配管15に設けられ、冷媒配管11の一部である配管15の温度を検知する。
一方、熱媒配管16は、水冷媒熱交換器5と外部放熱器2と膨張タンク23と循環ポンプ17とフロースイッチ26とを含む。熱媒配管16において、熱媒体は、熱媒戻りポート19から水冷媒熱交換器5を経由して熱媒往きポート20に向かって右回りに流れる。
循環ポンプ17は、水冷媒熱交換器5の上流側に設置され、熱媒配管16内の熱媒体を循環させる。これは、水冷媒熱交換器5の下流側よりも低温の熱媒体が流れる水冷媒熱交換器5の上流側に設けることで、循環ポンプ17の耐久性を向上させるためである。
フロースイッチ26は、循環ポンプ17の下流側に設けられ、熱媒体の流量を検知する。
なお、図1において、暖房運転時の冷媒は下方から上方へ、熱媒体は上方から下方へ流れること示す矢印が記載されている。しかし、実際のヒートポンプ装置では、暖房運転時の冷媒は、プレート式の水冷媒熱交換器5の上方から下方へ向かって流れ、熱媒体は、プレート式の水冷媒熱交換器5の下方から上方へと向かって流れる。
熱媒往きポート20は、水冷媒熱交換器5の熱媒出口5dに接合され、水冷媒熱交換器5で加熱または冷却された熱媒を、熱媒回路3を介して外部放熱器2に導く接合部である。熱媒戻りポート19は、水冷媒熱交換器5の熱媒入口5cに接合され、外部放熱器2で熱交換された熱媒を、熱媒回路3を介して水冷媒熱交換器5に導く接合部である。
温度センサ21は、水冷媒熱交換器5に入る熱媒体の温度を測定する。温度センサ22は、水冷媒熱交換器5から流れ出る熱媒体の温度を測定する。
膨張タンク23は、熱媒配管16に設けられ、熱媒配管16内の熱媒体の温度が上昇し、熱媒体の体積が膨張した場合にその膨張分を吸収する。これにより、熱媒配管16内の部品に対する異常な圧力を防止する。
制御装置24は、ヒートポンプ装置1に設けられた各センサからの情報と、使用者がヒートポンプ装置1の運転に関する各種設定を行うためのリモコン25からの情報とに応じて、圧縮機4、膨張弁6、循環ポンプ17、送風ファン10等を制御する。
上記ヒートポンプ装置1において、外部放熱器2、膨張タンク23、リモコン25以外の構成要素は、外装体38内に収納されている。
図2、図3A、図3B、図3Cは、図1に示される各構成要素が具体的にどのように外装体38内に配置されるかを示している。
図2は、本実施の形態にかかるヒートポンプ装置1の内部構造を示す斜視図である。図2において、ヒートポンプ装置1の内部が、外装体を通して透けて見えるように記載されている。
図3A、図3B、図3Cはそれぞれ、本実施の形態にかかるヒートポンプ装置1の内部構造を示す横断面図、正面図、側面図である。図3Aは、図3Bにおける3A-3A断面図である。図3B、図3Cは、図2と同様、ヒートポンプ装置1の内部が、外装体を通して透けて見えるように記載されている。
図2、図3A、図3B、図3Cに示すように、ヒートポンプ装置1は、前板35、側板36、天板37、底板34から構成された外装体38で覆われている。
仕切板27は、底板34に設置され、送風ファン10が設けられた送風回路室28と、圧縮機4および膨張弁6等の冷媒回路8が設けられた機械室29とを区画する。
圧縮機4は、機械室29内の底板34に固定される。電源接続部4cは、圧縮機4と圧縮機4に電力を供給するための電気配線との接続部であり、本実施の形態では、圧縮機4の頂部に設けられる。
冷媒入口5a、冷媒出口5b、熱媒入口5cは、水冷媒熱交換器5の最も前方のステンレス板の前側の面から前方に突き出すように設けられる。熱媒出口5dは、水冷媒熱交換器5の最も後方のステンレス板の後側の面から後方に突き出すように設けられる。
以下、水冷媒熱交換器5の最も前方のステンレス板の前側の面を水冷媒熱交換器5の前方側壁5e(図4参照)といい、水冷媒熱交換器5の最も後方のステンレス板の後側の面を水冷媒熱交換器5の後方側壁5f(図4参照)という。水冷媒熱交換器5は、後方側壁5fが、機械室29の背面に近接して配置されている。
このように、冷媒入口5aと冷媒出口5bとは、水冷媒熱交換器5の同じ側に設けられ、熱媒入口5cと熱媒出口5dとは、互いに反対側に設けられている。すなわち、熱媒入口5cは、機械室29の内側に向けて設置され、熱媒出口5dは、機械室29の外側に向けて設置されている。
熱媒往きポート20は、熱媒出口5dに接合され、ヒートポンプ装置1の後方に突き出すように設けられる。
循環ポンプ17は、ヒートポンプ装置1の内部、具体的には、水冷媒熱交換器5と底板34との間の空間に配置され、熱媒入口5cに接合された熱媒回路3である配管31を介して底板34に固定されている。
熱媒戻りポート19は、循環ポンプ17の上流側に接合された熱媒回路3の一部である配管30に接合され、ヒートポンプ装置1の後方に突き出すように設けられる。フロースイッチ26は配管31に設置されている。
なお、熱媒入口5cは、熱媒出口5dより下方に設けられる。これにより、高温に熱せられた熱媒体が上方に移動しようとする力を利用することができ、熱媒体を効率的に循環させることができる。
配管13は圧縮機4の頂部に接合され、配管13の上方に四方弁9が設置される。水冷媒熱交換器5の冷媒入口5aは、配管13を介して四方弁9の流入口の一つに連通する。
空気熱交換器7は、水平方向の断面がL字形状を有して、送風回路室28内の底板34に載置されている。
送風ファン10は、空気熱交換器7の内側に設置され、空気熱交換器7に送風し空気と冷媒との間の熱交換を促進する。モータ支持台33は底板34に固定され、送風モータ32を支持する。送風モータ32は送風ファン10を駆動する。
送風回路室28には、空気熱交換器7、送風ファン10、送風モータ32、モータ支持台33、四方弁9と空気熱交換器7とを連通する冷媒配管、膨張弁6と空気熱交換器7とを連通する冷媒配管が設けられている。機械室29には、圧縮機4、水冷媒熱交換器5、冷媒回路8に含まれる冷媒配管が設けられている。
膨張弁6は、冷媒入口5aより下方に設置された冷媒出口5bと冷媒配管を介して連通する。空気熱交換器7は、膨張弁6の下流側と冷媒配管を介して連通する。
冷媒回路8を構成する冷媒配管は、機械室29において、圧縮機4の上方及び側方に設けられる。制御装置24は、機械室29の最上部に設置される。
以下、図1を用いて、上記ヒートポンプ装置1の動作を説明する。まず、高温の熱媒体を生成する際の動作に関して説明する。高温の熱媒体の生成時には、四方弁9は実線で示された方向に切替えられている。
使用者がリモコン25を用いて運転開始を指示すると、それに応じた信号が制御装置24から送られ、ヒートポンプ装置1が運転を開始する。
圧縮機4が運転を開始すると、アキュームレータ4bに貯留する冷媒は圧縮機駆動部4aにより圧縮され、配管13、四方弁9を経由して水冷媒熱交換器5に送られる。水冷媒熱交換器5は、高温高圧の冷媒と、循環ポンプ17から送り出された熱媒体との間で熱交換を行わせる。
高温高圧の冷媒は、冷媒入口5aから水冷媒熱交換器5に流れ込む際、流通時の圧力損失の小さい気相状態である。気相状態の冷媒は、熱媒体と熱交換して凝縮し、圧力損失の比較的高い二相状態となり、さらに圧力損失の小さい液相状態となって、冷媒出口5bから流れ出る。
水冷媒熱交換器5から流れ出た冷媒は、膨張弁6にて減圧されて膨張し、空気熱交換器7に送られる。膨張した冷媒は、空気熱交換器7を通過する間に、送風ファン10からの空気と熱交換し、蒸発して気化する。
気化した冷媒は、四方弁9を通り、アキュームレータ4bに戻る。冷媒回路8がこの動作を繰り返すことにより、水冷媒熱交換器5において熱媒体が加熱され、高温の熱媒体が生成される。
一方、熱媒配管16において、熱媒体は、循環ポンプ17によって水冷媒熱交換器5に送られる。水冷媒熱交換器5において加熱された熱媒体は、熱媒回路3、熱媒往きポート20を経由して、外部放熱器2に送られる。高温の熱媒体は外部放熱器2で放熱する。
放熱により低温となった熱媒体は、膨張タンク23、熱媒戻りポート19を介して循環ポンプ17に戻る。熱媒配管16がこの動作を繰り返すことにより、外部放熱器2の設置された室内が暖房される。
フロースイッチ26は、熱媒配管16内に熱媒体が流れていないことを検知すると、制御装置24に異常信号を送信する。制御装置24は、異常信号を受信するとヒートポンプ装置1を停止させる。
以下、本実施の形態にかかる水冷媒熱交換器5について説明する。水冷媒熱交換器5における熱交換性能は、水冷媒熱交換器5における冷媒の流量分布および熱媒体の流量分布に大きく依存する。
図4は、本実施の形態にかかる水冷媒熱交換器5の形状と冷媒および熱媒体の流れとを示す斜視図である。図4において、冷媒の流れは実線で、熱媒体の流れは破線でそれぞれ記載されている。
図4に示すように、冷媒は、冷媒入口5aから水冷媒熱交換器5に流れ込み、後方側壁5f側に向かって流れ、各プレート間に設けられた流路に分かれて上方から下方に進み、水冷媒熱交換器5の下部で合流し、前方側壁5eに向かって流れ、冷媒出口5bから流れ出る。
一方、熱媒体は、熱媒入口5cから水冷媒熱交換器5に流れ込み、後方側壁5fに向かって流れ、各プレート間に設けられた流路に分かれて下方から上方に進み、水冷媒熱交換器5の上部で合流し、後方側壁5fに向かって流れ、熱媒出口5dから流れ出る。
このように、暖房運転時は、水冷媒熱交換器5のプレート間の流路において、冷媒は熱媒体と反対方向に流れ、主にその間に冷媒と熱媒体との熱交換が行われる。
図5A、図5Bは、水冷媒熱交換器5における冷媒、熱媒体の流れをそれぞれ示す概念図である。
図5Bに示すように、水冷媒熱交換器5の内部に形成される熱媒体の流路は、いずれのプレート間であっても略同一の長さを有する。これは、前方側壁5eに熱媒入口5cが設けられ、後方側壁5fに熱媒出口5dが設けられるからである。その結果、図5Bに示すように、熱媒体の流量分布は、水冷媒熱交換器5に設けられた複数の流路において均一化される。
これに対して、上述の通り、図10に示す従来の構成においては、背面側では熱媒体の流量が多く、正面側は熱媒体の流量が少ないという不均一な流量分布が生じる。
しかしながら、冷媒入口5aと冷媒出口5bとが前方側壁5eに設けられていても、冷媒の流量分布は熱媒体ほど不均一とならない。この理由について説明する。
高温の熱媒体を生成する場合、冷媒は冷媒入口5aから流れ込み、水冷媒熱交換器5において気相状態、二相状態、液相状態と順に相変化する。R407Cが冷媒として用いられた場合、冷媒の単位長さ当りの圧力損失は、気相状態で0.08kPa/m、二相状態で4.0kPa/m、液相状態で1.6kPa/mである。
また、水冷媒熱交換器5における冷媒が占める体積は、気相状態で1とすると、おおよそ二相状態で7、液相状態で2である。
図6は、水冷媒熱交換器5における各相状態での冷媒の分布と熱媒体の温度との関係を示す図である。図6は、水冷媒熱交換器5における、気相、二相、液相の各状態の冷媒の分布(左側の図)と、冷媒と熱媒体との温度分布(右側の図)を示している。
図6の右側の図に示すように、冷媒の温度は、気相状態から二相状態への変化時には低下し、二相状態ではほぼ同一に保たれ、二相状態から液相状態への変化時には低下する。
図6の左側の図に示すように、積層されたプレート間の流路を上方から下方に流れる冷媒のほとんどは二相状態である。二相状態の場合、冷媒がいずれのプレート間の流路を流れても、その圧力損失はほぼ一定である。
冷媒入口5aから流れ込んだ気相状態の冷媒の圧力損失は、冷媒入口5aから遠ざかるに従って増加し、冷媒の流量は減少する。しかしながら、上述の通り、気相状態の冷媒の圧力損失は、二相状態の冷媒と比較して著しく小さい。
同様に、液相状態の冷媒の圧力損失は二相状態の冷媒より小さいため、水冷媒熱交換器5の下部で合流し、冷媒出口5bから流れ出す間、液相状態の冷媒は圧力損失が小さい。
そのため、図5Aに示すように、冷媒入口5aと冷媒出口5bとが前方側壁5eに設けられても、水冷媒熱交換器5における冷媒の流量分布はほぼ均一となる。この結果、水冷媒熱交換器5の全域で均一な熱交換が行われ、熱交換量と熱交換効率とが向上する。
すなわち、本発明によれば、プレートの数を少なくして小型軽量化したプレート式熱交換器が、従来と同一性能を有するものとなる。
また、水冷媒熱交換器5のプレートの数を増やすと、流路の断面積が増加するため、冷媒および熱媒体の圧力損失が減少する。従って、圧力損失の大きい外部放熱器2が使用可能となり、ヒートポンプ装置1の暖房性能を向上させることができる。
ところで、水または導電性を有する不凍液等である熱媒体が何らかの原因で漏れ出しても、漏れ出した熱媒体が、高圧配線、高圧部品、特に、圧縮機4の電源接続部4c、制御装置24に接触しないように配慮する必要がある。
本実施の形態では、図2等に示すように、制御装置24が機械室29の最上部、すなわち、熱媒配管16より上方に設置されている。水冷媒熱交換器5は、前方に突き出た熱媒入口5cが電源接続部4cより下方に位置するように設置されている。
このようにして、機械室29内で漏れ出した熱媒体が、制御装置24および電源接続部4cに接触することを防止する。
本実施の形態では、熱媒入口5cは、前方側壁5eの下部から前方に突き出しており、外装体38から後方に突き出した熱媒戻りポート19とは反対方向を向いている。循環ポンプ17は、水冷媒熱交換器5と底板34との間の空間に配置される。循環ポンプ17は、配管30を介して熱媒戻りポート19と連通し、配管31を介して熱媒入口5cと連通している。
本実施の形態にかかる水冷媒熱交換器は、循環ポンプを機械室内に設置するために、上述の従来技術に記載の水冷媒熱交換器より適した構成を有している。以下、その理由を説明する。
上述の従来技術において、水冷媒熱交換器111に設けられた熱媒入口111cおよび熱媒出口111dはどちらも後方に突き出している。
このような構成の水冷媒熱交換器111に、機械室内で循環ポンプを連通させるための一つの方法は、水冷媒熱交換器111の下方に例えばS字形状の配管を設け、さらにその下方に循環ポンプを配置することである。
本実施の形態によれば、循環ポンプ17を機械室29内に設置しても、上記設置方法ほど、循環ポンプ17と熱媒入口5cとの間に複雑で長い配管を必要としない。これにより、熱媒配管16を流れる熱媒体の圧力損失が減少し放熱ロスも減少する。その結果、熱交換性能の向上、消費電力の抑制が可能となる。
熱媒配管16を流れる熱媒体の圧力損失が低減すると、様々な外部放熱器2が適用可能となり、ヒートポンプ装置1の設計自由度を高めることができる。
水冷媒熱交換器111に、機械室内で循環ポンプをつなぐための他の方法は、水冷媒熱交換器111の後方に循環ポンプのための空間を設けることである。この場合、機械室内に、水冷媒熱交換器111および循環ポンプを収容するための大きな空間が必要となる。
本実施の形態によれば、循環ポンプ17を機械室29内に設置しても、上記従来技術の場合ほど、水冷媒熱交換器5および循環ポンプ17用に大きな空間を必要とせず、ヒートポンプ装置1の小型化が可能となる。
循環ポンプ17が底板34に支持固定されているので、循環ポンプ17の水抜き作業が容易になる。循環ポンプ17が、水冷媒熱交換器5および電源接続部4cより下方に配置されているので、水抜き作業の際に、高圧部品および高圧配線に水が接触することを防止できる。
本実施の形態において、循環ポンプ17は水冷媒熱交換器5の下方に配置され、底板34にて支持固定されている。循環ポンプ17の保守点検時には、側板36を外せば、循環ポンプ17を容易に露出させることができ、必要に応じて着脱することができる。本実施の形態によれば、保守点検が容易に行える。
ヒートポンプ装置1が設置される際、配管を介して外部放熱器2と連通するように、熱媒往きポート20に配管が接合される。配管を介して膨張タンク23と連通するように、熱媒戻りポート19に配管が接合される。
熱媒往きポート20は、熱媒出口5dと熱媒回路3を介して連通している。熱媒戻りポート19は、熱媒入口5cと循環ポンプ17および熱媒回路3を介して連通している。
本実施の形態は、ヒートポンプ装置1の設置時における、熱媒往きポート20および熱媒戻りポート19の接合作業において、水冷媒熱交換器5に直接的な力が加わらない構成である。本実施の形態によれば、水冷媒熱交換器5の変形およびその変形による熱媒体の漏洩を防止することができる。
以下、本実施の形態にかかるヒートポンプ装置1の冷房運転時の動作について説明する。
図7は、ヒートポンプ装置1の冷房運転時における概略構成図である。図7において、図中に示す矢印は、冷房運転時の熱媒体の流れと冷媒の流れとを表している。
冷房運転時には、四方弁9に内蔵された弁が図7に示すように切り替えられ、冷媒が暖房運転時とは反対回りに冷媒回路8を循環する。その結果、膨張弁6で生成された低温の液冷媒が、水冷媒熱交換器5で熱媒体と熱交換して低温の熱媒体が生成される。
生成された低温の熱媒体は外部放熱器2に供給され、外部放熱器2の設置された部屋で冷房が行われる。
冷房運転時の冷媒は、水冷媒熱交換器5のプレート間の流路において、液相状態、二相状態、気相状態と順に相変化しながら、水冷媒熱交換器5のプレート間の流路を下方から上方に流れる。
そのため、水冷媒熱交換器5における冷媒の流量分布は図6と同様となり、冷房運転時も冷媒の流量分布は略均一となる。本実施の形態の水冷媒熱交換器5は、冷房運転時においても優れた熱交換効率を有する。
なお、本実施の形態では、外部放熱器2として、輻射暖冷房等のパネル状の外部放熱器を想定しているが、パネルヒータや、送風ファンを備えたファンコンベクタ(Fan convector)等に置き換え可能である。
(実施の形態2)
図8は、図3Bと同様、ヒートポンプ装置1の内部が、外装体38を通して透けて見えるように記載されている。以下、実施の形態1との相違点のみ説明する。
実施の形態1では、電源接続部4cが圧縮機4の上面に設けられている。一方、本実施の形態では、図8に示すように、電源接続部4cは圧縮機4の側面に設けられている。
本実施の形態によれば、熱媒入口5cが電源接続部4cより下方に配置されているため、実施の形態1と同様、漏れた熱媒体が電源接続部4cに接触することを防止することができる。
さらに、熱媒入口5cより上方に位置する圧縮機4の側面の、水冷媒熱交換器5からより離れた場所に電源接続部4cを設ければ、漏れた熱媒体が電源接続部4cにさらに接触しにくくすることができる。
以上のように、本発明にかかるヒートポンプ装置は、家庭用または業務用の給湯装置、温水暖房装置等に適用可能である。
1,110 ヒートポンプ装置 This heat pump apparatus has: a compressor (4) for compressing a refrigerant; a plate heat exchanger (5) which enables heat exchange between the refrigerant and a heat medium, and which is furnished with a refrigerant inlet (5a), a refrigerant outlet (5b), a heat medium inlet (5c), and a heat medium outlet (5d); a pressure reducer (6) for reducing the pressure of the refrigerant; and an evaporator (7) which enables heat exchange between the refrigerant and air. The refrigerant inlet (5a) faces in the same direction as the refrigerant outlet (5b), while the heat medium inlet (5c) faces in the opposite direction from the heat medium outlet (5d) and is provided at a different height from the heat medium outlet (5d). According to the present invention, the flow rate distribution of the heat medium flowing through the interior of the plate heat exchanger (5) is uniform. Since heat exchange takes place throughout the entire plate heat exchanger (5), the heat exchange efficiency of the plate heat exchanger (5) is improved.
[補正後] 冷媒を圧縮する圧縮機と、冷媒入口、冷媒出口、熱媒入口および熱媒出口が設けられ、冷媒と熱媒体との間で熱交換させるプレート式熱交換器と、冷媒を減圧する減圧器と、冷媒と空気との間で熱交換させる蒸発器と、
前記熱媒出口と同じ方向に向けて設けられた熱媒往きポートと、前記熱媒入口と反対方向に向けて設けられた熱媒戻りポートとをさらに備え、
前記プレート式熱交換器の下方に設置され、前記熱媒体を循環させる循環ポンプをさらに備え、
前記熱媒入口が、高圧部品および高圧配線より下方に配置された請求項1に記載のヒートポンプ装置。
図1は、本発明の実施の形態1にかかるヒートポンプ装置1の暖房運転時における概略構成図である。図1において、図中に示す矢印は、暖房運転時の熱媒体の流れと冷媒の流れとを表している。
図8は、本発明の実施の形態2にかかるヒートポンプ装置1を示す正面図である。
2 外部放熱器
3 熱媒回路
4,113 圧縮機
4a 圧縮機駆動部
4b,115 アキュームレータ
4c 電源接続部
5,111 水冷媒熱交換器
5a 冷媒入口
5b 冷媒出口
5c,111c 熱媒入口
5d,111d 熱媒出口
5e 前方側壁
5f 後方側壁
6,114 膨張弁
7 空気熱交換器
8 冷媒回路
9 四方弁
10 送風ファン
11 冷媒配管
12,14,21,22 温度センサ
13,15,30,31 配管
16 熱媒配管
17 循環ポンプ
18 圧力センサ
19,116 熱媒戻りポート
20,117 熱媒往きポート
23 膨張タンク
24 制御装置
25 リモコン
26 フロースイッチ
27,112 仕切板
28 送風回路室
29 機械室
32 送風モータ
33 モータ支持台
34 底板
35 前板
36 側板
37 天板
38 外装体
前記圧縮機と前記減圧器と前記プレート式熱交換器とが内部に設けられた機械室と、
を備え、
前記冷媒入口と前記冷媒出口と前記熱媒入口とは、前記機械室の内側に向けて設けられ、
前記熱媒出口は、前記熱媒入口と異なる高さに、前記機械室の外側に向けて設けられたヒートポンプ装置。
前記熱媒出口が前記熱媒往きポートと連通し、前記熱媒入口が前記熱媒戻りポートと連通する請求項1に記載のヒートポンプ装置。
前記熱媒入口が前記循環ポンプを介して前記熱媒戻りポートと連通する請求項2に記載のヒートポンプ装置。












