CHIP RESISTOR
本開示は、各種電子機器に使用される低い抵抗値の厚膜抵抗体で形成された小形のチップ抵抗器に関するものである。
従来のこの種のチップ抵抗器は、図5に示すように、絶縁基板1と、この絶縁基板1の上面の両端部に設けられた一対の第1上面電極2と、絶縁基板1の上面に設けられ、かつ一対の第1上面電極2間に形成された抵抗体3と、一対の第1上面電極2の上面に形成され抵抗体3と接続する一対の第2上面電極4と、を備えていた。そして、露出する抵抗体3と一対の第2上面電極4の一部を覆うように設けられた保護膜5と、一対の第1上面電極2と電気的に接続されるように絶縁基板1の両端面に設けられた一対の端面電極6と、一対の第2上面電極4の一部と一対の端面電極6の表面に形成されためっき層7とを備えていた。
なお、この出願の発明に関する先行技術文献情報としては、例えば、特許文献1が知られている。
上記した従来のチップ抵抗器においては、抵抗体3の両側の端部3aは一対の第1上面電極2の上面端部に形成されているため、抵抗体3の両側の端部3aが上方に盛り上がっていた。また、この抵抗体3の上方に盛り上がった両側の端部3aと、一対の第2上面電極4の互いに対向する端部4aとが重なっているため、この重なった箇所で一対の第2上面電極4の端部4aが上方に突出していた。これにより、一対の第2上面電極4の上面に傾斜や起伏が生じていた。また、この結果、保護膜5の両端部も上方に突出していた。したがって、チップ抵抗器の上面に高低差が発生し、上面側を実装面として実装する場合、チップ立ち等の実装不良が発生する可能性があるという問題を有していた。
本開示は上記従来の課題を解決するもので、実装不良が発生する可能性を低減できるチップ抵抗器を提供することを目的とするものである。
上記目的を達成するために本開示にかかる発明は、抵抗体の一対の第1上面電極間に形成された部分の長さより、抵抗体の一対の第1上面電極上に形成された長さを長くしている。
本開示のチップ抵抗器は、抵抗体の両端部の盛り上がった部分と一対の第2上面電極の両端部の位置を離すことができるため、一対の第2上面電極の互いに向かい合う端部が上方に突出するのを抑えることができる。これにより、一対の第2上面電極の端部上面に傾斜や起伏が生じないようにすることができる。そのため、上面側を実装面として実装するときでも、チップ抵抗器の上面の高低差によるチップ立ち等の実装不良が発生する可能性を低減できるという優れた効果を奏するものである。
以下、本開示の一実施の形態におけるチップ抵抗器について、図面を参照しながら説明する。
図1は本発明の一実施の形態におけるチップ抵抗器の断面図である。
本開示の一実施の形態におけるチップ抵抗器は、図1に示すように、絶縁基板11と、一対の第1上面電極12と、抵抗体13と、一対の第2上面電極14と、保護膜15と、一対の端面電極16と、めっき層17と、を備えている。一対の第1上面電極12のそれぞれは、絶縁基板11の上面の両端部のそれぞれに設けられている。抵抗体13は、絶縁基板11の上面に設けられ、かつ一対の第1上面電極12の間に形成されている。一対の第2上面電極14は、それぞれが一対の第1上面電極12のそれぞれの上面に形成され、抵抗体13と接続する。保護膜15は、露出する抵抗体13と一対の第2上面電極14の一部を覆うように設けられている。一対の端面電極16は、それぞれが一対の第1上面電極12のそれぞれと電気的に接続されるように絶縁基板11の両端面に設けられている。めっき層17は、一対の第2上面電極14の一部と一対の端面電極16の表面に形成されている。
また、抵抗体13の一対の第1上面電極12間に形成された部分の長さw1より、抵抗体13の一対の第1上面電極12上に形成された長さw2を長くしている。また、抵抗体13の両側の端部13aの先端部と絶縁基板11の端面11aとの距離t1を100μm以下としている。
上記構成において、絶縁基板11は、Al2O3を96%含有するアルミナで構成され、その形状は矩形状となっている。なお、絶縁基板11の長さ、幅および厚さは、本実施形態では以下の[表1]のようになる。
また、一対の第1上面電極12は、絶縁基板11上面の両端部に設けられ、銀、銀パラジウム、または銅からなる厚膜材料を、印刷および焼成することによって形成されている。なお、絶縁基板11裏面の両端部に裏面電極12aを形成してもよい。図1においては、絶縁基板11裏面の両端部に裏面電極12aを形成したチップ抵抗器を示している。なお、図1にて示す断面図は、絶縁基板11の長さ方向および厚さ方向を含む平面で切った断面図である。なお、絶縁基板11の長さとして1000μm~2000μm、幅として500μm~1000μm、厚さとして300μm~500μmとすることが可能である。
さらに、抵抗体13は、絶縁基板11の上面において、一対の第1上面電極12の間に、銀パラジウム、酸化ルテニウム、または銅ニッケルからなる厚膜材料を印刷した後、焼成することによって形成されている。抵抗体13の両側の端部13aは、一対の第1上面電極12の上面に位置している。なお、抵抗体13は棒状ではなく、その両側の端部13aは絶縁基板11の内側に位置している。
そして、抵抗体13を覆うようにプリコートガラスなどの保護ガラス層を設けてもよい。さらに、抵抗体13に抵抗値調整用のトリミング溝(以下、図示せず)を設けてもよい。
また、一対の第2上面電極14は、銀、銀パラジウム、または銅からなる厚膜材料を印刷、焼成することによって形成されている。この一対の第2上面電極14は、抵抗体13に覆われていない第1上面電極12のうちの一部と抵抗体13の上面に形成され、抵抗体13と接続している。一対の第2上面電極14の互いに対向する(内側に向かう)端部14aは保護膜15に覆われている。
そして、保護膜15は、一対の第2上面電極14の一部と抵抗体13を覆うように、ガラスまたはエポキシ樹脂からなる厚膜材料により設けられている。
一対の端面電極16は、絶縁基板11の両端部に設けられ、一対の第2上面電極14から露出した一対の第1上面電極12と電気的に接続されるように、Agと樹脂からなる材料を印刷することによって形成される。
さらに、この一対の端面電極16の表面には、Cuめっき層、Niめっき層、Snめっき層からなるめっき層17が形成されている。このとき、めっき層17は、一対の第2上面電極14の一部を覆うように一対の第2上面電極14と接続され、かつ保護膜15と接する。
(実施例)
本実施例において、第1上面電極12、抵抗体13、第2上面電極14、保護膜15、端面電極16およびめっき層17を構成する材料および各層の層厚は、[表2]のようになる。なお、めっき層17については、Cu層、Ni層およびSn層それぞれの厚さである。なお、絶縁基板11として、Al2O3を96%含有するアルミナで構成され、その形状は矩形状となっている。絶縁基板11の長さ、幅および厚さは、上記[表1]に示すとおりである。
なお、本実施例において、上記にて説明したパラメータt1、w1およびw2の値は、[表3]のようになる。
ここで、抵抗体13の両側の端部13aを絶縁基板11の端面11a近傍に位置させ、抵抗体13の一対の第1上面電極12間に形成された部分の長さw1より、抵抗体13の一対の第1上面電極12上に形成された長さw2を長くしている。さらに、抵抗体13の両側の端部13aの先端部と絶縁基板11の端面11aとの距離t1を100μm以下としている。また、w1の寸法は抵抗値を規定する。w2の寸法はw1の寸法の1.5倍以上、2.5倍以下とするのが好ましい。
上記したように本実施例においては、抵抗体13の一対の第1上面電極12間に形成された部分の長さw1より、抵抗体13の一対の第1上面電極12上に形成された長さw2を長くしている。また、抵抗体13の両側の端部13aと、一対の第2上面電極14の互いに対向する端部14a同士の位置とを離している。そのため、一対の第2上面電極14の端部14aが上方に突出するのを抑えることができる。これにより、一対の第2上面電極14の上面に傾斜や起伏が生じないようにすることができる。そのため、上面側を実装面として実装するときでも、傾斜や起伏の高低差によるチップ立ち等の実装不良が発生する可能性を低減できるという効果が得られる。
すなわち、抵抗体13の一対の第1上面電極12間に形成された部分の長さw1より、抵抗体13の一対の第1上面電極12上に形成された長さw2を長くしている。そのため、抵抗体13の両側の端部13aが絶縁基板11の端面11aに近づき、かつ抵抗体13の両側の端部13aが一対の第1上面電極12の上面端部から離れる。これにより、抵抗体13の両側の端部13aは上方に盛り上がらないため、一対の第2上面電極14の上面が平らで傾斜や起伏の高低差が小さくなる。この結果、一対の第2上面電極14の上面のめっき層17の上面の傾斜や起伏も小さくなる。また、保護膜15の両端部も上方に突出しないため、チップ抵抗器の上面は水平(フラット)で、チップ抵抗器の上面の高低差によるチップ立ち等の実装不良が発生を抑制できる。
一方、従来のように抵抗体13の両側の端部13aが絶縁基板11の端面11aから離れ、かつ抵抗体13の両側の端部13aが一対の第1上面電極12の上面端部に近い場合、抵抗体13の両側の端部13aが上方に盛り上がる。これにより、その盛り上がった形状に沿うように一対の第2上面電極14の表面は保護膜15に近づくにしたがって傾斜する。この結果、一対の第2上面電極14の上面のめっき層17の上面の傾斜や起伏も大きくなる。また、保護膜15の両端部も上方に突出するため、チップ抵抗器の上面はフラットではなくなり、チップ抵抗器の上面の傾斜や起伏の高低差によるチップ立ち等の実装不良が発生する可能性がある。
ここで、本開示の抵抗器では、抵抗体13の両側の端部13aの先端部と絶縁基板11の端面11aとの距離t1を100μm以下に近づけるのが好ましい。
図2は、[表1]に示す1608サイズのチップ抵抗器において、抵抗体13の両側の端部13aの先端部と絶縁基板11の端面との距離t1と、一対の第2上面電極14の上面の傾斜や起伏の高低差の寸法との関係を示す図である。
このとき、絶縁基板11の端面11aから100μmでの一対の第2上面電極14の上面(図3、図4の点A)と、一対の第2上面電極14の保護膜15との接触部での上面(図3、図4の点B)の高低差の寸法を測定した。なお、保護膜15の長さは変わらない。
図2から、以下のことがわかる。すなわち、抵抗体13の両側の端部13aの先端部と絶縁基板11の端面11aとの距離t1を100μm以下(絶縁基板11の長さの6%以下)になるところまで抵抗体13の両側の端部13aを絶縁基板11の端面11aに近づける。そして、抵抗体13の両側の端部13aと、一対の第2上面電極14の互いに対向する端部14a同士の位置とを離す。このようにすることによって、高低差が小さくなることが分かる。
本開示の抵抗器のように、距離t1が100μm以下の場合は、図3に示すように、抵抗体13の両側の端部13aが一対の第1上面電極12の上面端部から離れ、抵抗体13の両側の端部13aは上方に盛り上がらない。これにより、一対の第2上面電極14の上面が水平で傾斜、高低差が小さい。なお、距離t1を50μm以下とするのがより好ましい。
逆に、図4に示すように、距離t1を100μmより大きくすれば、抵抗体13の両側の端部13aが一対の第1上面電極12の上面端部に近くなり、これにより、抵抗体13の両側の端部13aが上方に盛り上がる。その盛り上がった形状に沿うように一対の第2上面電極14の上面は保護膜15に近づくにしたがって傾斜し、高低差が大きくなる。なお、図3、図4は、説明を簡単にするために、一対の端面電極16、めっき層17を省略している。図3、図4では、絶縁基板11の端面11aから保護膜15までの距離を200μmとしている。距離t1が200μmを越えると、抵抗体13の両側の端部13aの先端部が保護膜15より内側になるため、一対の第2上面電極14と抵抗体13の両側の端部13aとの間に保護膜15が形成される。これによって傾斜が吸収されて、高低差の大きさが大きくならない。
ここで、抵抗体13の両側の端部13aの先端部と絶縁基板11の端面11aとの距離t1の下限は、印刷精度や分割精度を考慮して決定され、例えば5μmとされる。
本開示に係るチップ抵抗器は、実装不良が発生する可能性を低減できるという効果を有するものであり、特に、各種電子機器に使用され低い抵抗値の厚膜抵抗体で形成された小形のチップ抵抗器等において有用となるものである。
11 絶縁基板 The purpose of the present disclosure is to provide a chip resistor that is capable of reducing the possibility of occurrence of mounting failures. A chip resistor according to the present invention is provided with: an insulating substrate (11); a pair of first upper surface electrodes (12) that are provided to both ends of the upper surface of the insulating substrate (11); and a resistor (13) that is formed between the first upper surface electrodes (12) and provided to the upper surface of the insulating substrate (11). The chip resistor is further provided with: a pair of second upper surface electrodes (14) that are connected to the resistor (13) and formed on the upper surface of the first upper surface electrodes (12); and a protective film (15) that is provided so as to cover parts of the exposed resistor (13) and the pair of second upper surface electrodes (14). Further, the length of the portions of the resistor (13) that are formed on the first upper surface electrodes (12) is set longer than that of the portion of the resistor (13) formed between the pair of first upper surface electrodes (12), and the distance between the end (13a) of each of opposing sides of the resistor (13) and the corresponding end surface (11a) of the insulating substrate (11) is set equal to or less than 100 µm.
絶縁基板と、
前記抵抗体の両端部の先端部と前記絶縁基板の端面との距離を100μm以下とした、請求項1に記載のチップ抵抗器。
本実施形態の一実施例について、以下に説明する。
11a 端面
12 第1上面電極
13 抵抗体
13a 端部
14 第2上面電極
14a 端部
15 保護膜
前記絶縁基板の上面の両端部に設けられた一対の第1上面電極と、
前記絶縁基板の上面に設けられ、かつ前記一対の第1上面電極間に形成された抵抗体と、
前記一対の第1上面電極の上面に設けられ、かつ前記抵抗体の両端部に設けられた一対の第2上面電極と、
前記抵抗体の前記一対の第2上面電極間に存在する部分と、前記一対の第2上面電極の一部と、を覆うように設けられた保護膜とを備え、
前記抵抗体の前記一対の第1上面電極間に存在する部分の長さより、前記抵抗体の前記一対の第1上面電極上に存在する部分の長さを長くした、チップ抵抗器。