電気機械的に操作可能なディスクブレーキ用の操作ユニット
【発明の詳細な説明】 本発明は、電気機械的に操作可能な自動車用ディスクブレーキのための操作ユニットに関する。この操作ユニットは駆動ユニット(1)または電動機(11)と、操作要素(15)を備えている。この操作要素によって、ブレーキキャリパ内に移動可能に配置された2個の摩擦パッド(4,5)の一方(4)が摩擦ディスク(6)に作用可能である。操作ユニットは更に、第1の減速装置(2)と第2の減速装置(3)とを備えている。第2の減速装置(3)を第1の減速装置(1)から切り離すために、本発明は、電動機(11)と第1の減速装置(2)と第2の減速装置(3)が、互いに独立して取扱い操作可能な少なくとも2個のアセンブリとして形成されていることを提案する。 【特許請求の範囲】
【0001】
本発明は、ブレーキキャリパに設けられた、電気機械的に操作可能な自動車用ディスクブレーキのための操作ユニットに関し、更に詳しくは、ブレーキキャリパ内に、ブレーキディスクの各々1個の側面と協働する2個の摩擦パッドが制限されて移動可能に配置され、摩擦パッドの一方が操作要素を用いて操作ユニットによって直接的に摩擦ディスクに作用可能であり、他方の摩擦パッドがブレーキキャリパによって加えられる反力の作用によってブレーキディスクに作用可能であり、操作ユニットが電動機と、この電動機と操作要素の間に作用的に配置された第1の減速装置と、電動機と第1の減速装置の部分の間に配置された第2の減速装置とを備え、電動機のロータがリング状に形成され、半径方向において第1の減速装置を取り囲んでいる、操作ユニットに係る。
【0002】
このような電気機械式操作ユニットは例えばドイツ連邦共和国特許出願公開第19511287号公報によって知られている。公知の操作ユニットの場合、電動機は遊星歯車装置を介在してローラねじ装置のねじ付きナットを駆動する。ローラねじ装置のねじ付きスピンドルは第1の摩擦パッドを操作する。電動機のロータは同時に、遊星歯車装置の太陽歯車としての働きをし、遊星歯車装置の遊星歯車はねじ付きナットに支承され、ブレーキキャリパに形成された内歯歯車と協働する。このロータの軸承はねじ付きナットを介して、ブレーキキャリパ内に配置された中央軸受によって行われる。
【0003】
公知の操作ユニットの場合、その操作時に、電気機械式ブレーキの締付け力と、運転中に発生する横方向力および曲げモーメントとによる外乱が、ローラねじ装置を介してロータに伝達されるので、ステータとロータの間の一定の空隙が保証されないという欠点がある。これは公知の装置の効率を悪化させることになる。更に、遊星歯車装置の太陽歯車としての働きをするロータが、ステータに対して傾斜させることになる前述の力または曲げモーメントの作用によって損傷し得る。
【0004】
そこで、本発明の課題は、第1の減速装置から第2の減速装置が切離され、それによって遊星歯車と相対的なロータの同じ位置と、内歯歯車と相対的な遊星歯車の同じ位置が保証可能であるように、冒頭に述べた種類の電気機械式操作ユニットを改良することである。
【0005】
この課題は本発明に従い、電動機と第1の減速装置と第2の減速装置が、互いに独立して取扱い操作可能な少なくとも2個のアセンブリとして形成されていることによって解決される。それによって、電動機が締付け力の力線の外に配置可能であり、電動機の機能が外乱によって損なわれることがない。
【0006】
本発明思想を具体化するために、電動機と第1の減速装置と第2の減速装置が、独立して取扱い操作可能なアセンブリとして形成されている。このように構成された電気機械式操作ユニットは、効率が高く、ブレーキ操作の動特性が優れており、構造がきわめてコンパクトで伝達可能な単位質量あたりのブレーキトルクが大きいという利点がある。
【0007】
本発明対象物の他の有利な実施形では、第2の減速装置がブレーキパッドと反対の電動機の側に配置されている。この手段により、第1の減速装置から第2の減速装置を構造的に切り離すことができるので、第2の減速装置の変形が効果的に防止され、減速装置において一定の遊びが維持される。
【0008】
他の有利な実施形では、第1の減速装置が転動体ねじ装置として形成され、この転動体ねじ装置のねじ付きナットが第2の減速装置と協働することにより、締付け力の短い力伝達ストロークが達成される。
【0009】
その代わりに、第1の減速装置が転動体ねじ装置として形成され、この転動体ねじ装置のねじ付きスピンドルが第2の減速装置と協働してもよい。この手段によって、ねじ付きスピンドルと協働する中央軸受の最適化が達成される。
【0010】
本発明の他の有利な実施形では、第1の減速装置がローラねじ装置として、特に内側のローラ戻し装置を備えたローラねじ装置として形成されている。ねじ付きローラの大きな耐荷重によって、最適な力伝達が達成される。この場合、ねじ付きスピンドルの内側のローラ戻し装置はねじ付きナットの簡単な製作を可能にする。
【0011】
特に横方向力に対して敏感でないという利点を有する本発明の他の実施形では、第1の減速装置がボールねじ装置として形成されている。
【0012】
その際、操作要素が転動体ねじ装置のねじ付きスピンドルに力を伝達するように連結され、かつ力伝達板によって形成され、この力伝達板が転動体ねじ装置を収容するリング状の減速装置ケーシング内で案内されていると特に有利である。力伝達板は好ましくは、半径方向において互いに向き合う少なくとも2本の案内ピンを備え、この案内ピンが対応して形成された、減速装置ケーシングの案内面または穴によって収容されている。この手段により、運転中に発生しブレーキキャリパに伝達される横方向力から締付け力を効果的に分離することができる。
【0013】
本発明の他の有利な実施形では、ねじ付きナットが減速装置ケーシング内に配置された軸受リングに軸方向で支持され、軸受リングと減速装置ケーシングの間に力センサが配置されている。この手段により、非常に短い力線を有するコンセプトが実現可能である。この場合、力センサは力線内に配置された一緒に動かない部品を形成している。
【0014】
ボールねじ装置内の所望な荷重分布は、本発明の他の有利な特徴に従って、ボールねじ装置のねじ付きスピンドルが円錐状の穴を有し、この穴が押圧力を伝達する働きをする押圧棒を収容し、この押圧棒の端部が力伝達板の軸方向突出部内にまたは穴の底に回転しないように支持されている。この手段により、ねじ付きスピンドルは引張り荷重だけを受け、個々のボールの荷重支持割合が均一になる。
【0015】
操作機構を汚染物、例えば水しぶきから効果的に保護するために、本発明の他の有利な実施形では、力伝達板と減速装置ケーシングとの間に、弾性的なシールが設けられている。
【0016】
電動機によって加えられる必要な駆動トルクを大幅に低減するために、第2の減速装置が遊星歯車装置として形成されている。この遊星歯車装置は摩擦を有していない減速装置であり、その中で形状変更作業が不要であり、小さなスペースで高い効率が達成可能である。
【0017】
大きな減速は本発明の他の実施形に従って、第2の減速装置が段付き遊星歯車を備えた遊星歯車装置として形成されていることによって達成される。
【0018】
達成可能な減速比を更に高めるために、遊星歯車の第1の段は太陽歯車にかみ合い、第2の段は各々1個の平歯車を介在して内歯歯車にかみ合っている。しかし、第2の減速装置が2段の差動遊星歯車装置として形成されていてもよい。後者の場合には、大きな太陽歯車を使用することによって最適な構造長さが達成さ可能である。
【0019】
本発明対象の他の有利な実施形では、遊星歯車装置の太陽歯車がロータに形成され、遊星歯車がねじ付きナットに力を伝達するように連結された遊星歯車キャリヤに支承され、かつ太陽歯車にかみ合う大径の第1の遊星歯車と、内歯歯車にかみ合う小径の第2の遊星歯車を各々1個ずつ備えていることによって構造スペースの最適化が達成される。その際好ましくは、遊星歯車装置の内歯歯車が内歯を備えたラジアル軸受の外側リングによって形成され、この外側リングに遊星歯車キャリヤが支承されている。この手段により、装置の高い集積度が達成される。
【0020】
運転中に発生する横方向力の効果的な切離しは、本発明の有利な実施形に従って、操作要素が転動体ねじ装置のねじ付きナットによって形成されていることによって達成される。
【0021】
駆動ユニットすなわち電動機から力線の切離しは、本発明の他の特徴に従って、ねじ付きナットを取り囲む案内部材が設けられ、この案内部材が転動体ねじ装置を収容するリング状の減速装置ケーシングに支持され、ねじ付きスピンドルがこの案内部材に軸方向で支持されていることによって保証さえる。ねじ付きスピンドルの軸方向の支持は、スラスト軸受を介在して半径方向のつばによって行われる。それによって、小径の軸受を使用可能である。
【0022】
更に、力測定要素が案内部材に設けられていると特に有利である。それによって、所定の変形を受け、一緒に動かない部分で力の測定を行うことができる。
【0023】
ねじ付きナットと案内部材の間に配置された弾性的なシールまたはカップシールによって、装置の汚れや水の侵入が効果的に防止される。
【0024】
運転中に発生する横方向力が第1の減速装置のケーシングに直接伝わることは、ねじ付きナットが第1の摩擦パッド寄りのその端部において、案内リング内を案内されていることによって達成される。汚れ、例えば水しぶきの、装置への侵入を効果的に防止するために、ねじ付きナットと案内リングの間に弾性的なシールが設けられている。
【0025】
本発明対象の他の有利な実施形では、遊星歯車装置の太陽歯車がロータに形成され、遊星歯車がねじ付きスピンドルに力を伝達するように連結された遊星歯車キャリヤに支承され、かつ太陽歯車にかみ合う大径の第1の遊星歯車と、内歯歯車にかみ合う小径の第2の遊星歯車を備えている。
【0026】
前述の実施形の場合、遊星歯車装置の内歯歯車がキャップに形成された内歯によって形成され、このキャップが遊星歯車装置のケーシングを形成し、かつ電動機の電動機ケーシングに設けられていることによって、構造スペースの最適化が達成される。
【0027】
本発明対象の他の実施形の場合、遊星歯車キャリヤとねじ付きスピンドルの間の力伝達が形状補完的な差込み継手によって行われると、本発明による操作ユニットの組み立てが大幅に簡単化される。
【0028】
本発明による操作ユニットの低コストの実施形では、遊星歯車キャリヤがラジアル軸受によってキャップに支承されている。このような遊星歯車装置は簡単に製作可能であり、かつ別個に検査可能である。
【0029】
その際、形状補完的な差込み継手がねじれにくく、半径方向に可撓性でそして曲がり得るように遊星歯車キャリヤに連結されていることが重要である。この手段にって、外乱の効果的な切り離しが達成される。
【0030】
ねじ付きスピンドルは好ましくは一体にあるいは複数の部分によって形成されている。
【0031】
本発明対象の他の有利な実施形では、ねじ付きナットが第1の摩擦パッド寄りのその端部に突起を備え、この突起がねじ付きスピンドルに形成された周方向に作用するストッパーに接触可能である。この手段により、特に、ねじ付きナットがストッパーまで戻し回転させられる誤った解放過程の際に、第1の減速装置の締付け固定または挟持固定が生じない。
【0032】
本発明による操作ユニットによって同時に駐車ブレーキ機能を満たすことができるようにするために、電動機のロータをロックすることができる電気機械的な手段が設けられている。
【0033】
形状補完的な原理で作動する特にフェールセーフの実施形では、手段がロータに連結された歯付きリムと電磁操作可能なロック爪によって形成されている。
【0034】
その際好ましくは、ロック爪が係止手段を備え、この係止手段が操作位置と非操作位置でそのロック爪の係止を可能にする。
【0035】
本発明の他の有利な実施形では、電動機が永久磁石によって励磁され電子的に電流の方向を転換する電動機(ブラシレス直流モータ)として、あるいは切換えられるリラクタンスモータとして形成されている。
【0036】
上記のモターは静止状態で大きなトルクを発生するために特に適している。
【0037】
操作ユニットのモーアを電子的に電流の方向を転換するためには、ステータと相対的なロータの位置を認識することができ、特にホールセンサまたは磁気抵抗要素を備えた位置認識装置を設ける必要がある。
【0038】
次に、図を参照して本発明による3つの実施の形態を詳しく説明する。
【0039】
図に示した、本発明による電気機械式操作ユニットは、フローティングキャリパー型ディスクブレーキを操作する働きをする。このディスクブレーキの示唆的に示したブレーキキャリパは図示していないホルダーに摺動可能に支持されている。対の摩擦パッド4,5は、ブレーキディスク6の右側の側面と左側の側面に向くうように、ブレーキキャリパ内に配置されている。
【0040】
以下において、図で右側に示した摩擦パッド4を第1摩擦パッドと呼び、5で示した他の摩擦パッドを第2摩擦パッドと呼ぶ。
【0041】
第1摩擦パッド4は操作要素15を用いて、操作ユニット2によってブレーキディスク3に直接作用させることが可能である。これに対して、第2摩擦パッド5はブレーキキャリパの構造体の操作時に加えられる反力の作用によって、ブレーキディスク6の反対側の側面に押し付けられる。
【0042】
図示していない固定手段を用いてブレーキキャリパに取付けられた本発明による操作ユニットは、モジュラー構造であり、実質的に、独立して取扱い操作可能な3つのアセンブリまたはモジュール、すなわち駆動ユニット1と、第1の摩擦パッド4を操作する第1の減速装置2と、駆動ユニット1と第1の減速装置2の間に作用的に連結配置された第2の減速装置3とからなっている。
【0043】
前述の駆動ユニット1は電動機11を備えている。この電動機は図示した例では、永久磁石で励磁され電子的に電流の方向を転換することができるモータとして形成されている。このモータのステータ9はモータケーシング12内に動かないように配置され、ロータ10はリング状の支持体13によって形成されている。この支持体は複数の永久磁石セグメント14を支持している。トルクモータ11と前述の操作要素15との間には、第1の減速装置2が作用的に配置されている。この第1の減速装置は図示例ではボールねじ装置16~18として形成されている。このボールねじ装置は減速装置ケーシング19に支承されている。その際、このボールねじ装置はねじ付きナット16とねじ付きスピンドル17とからなっている。この場合、ねじ付きナット16とねじ付きスピンドル17の間には、複数のボール18が配置されている。このボールはねじ付きナット16の回転運動時に循環し、ねじ付きスピンドル17を軸方向移動すなわち並進運動させる。減速装置ケーシング19は前述のブレーキキャリパと一体に形成可能である。
【0044】
その際、配置は好ましくは、モータ11のロータ10が第2の減速装置3を介してねじ付きナット16を駆動し、ねじ付きスピンドル17が押圧棒24を介して前述の操作要素15と協働するように行われている。この操作要素は好ましくは、第1の摩擦パッド4に支持された力伝達板によって形成されている。ねじ付きスピンドル17に形成されたテーパ穴25に収容された押圧棒24は、一方では多角形部28によって力伝達板15の軸方向の突出部26内に、他方では穴25の底に相対回転しないように支持されている。本発明による操作ユニットの運転中発生する横方向力を減速装置ケーシング19に伝達するために、力伝達板15は、半径方向において向き合う2本の案内ピン20を備えている。この案内ピンは減速装置ケーシング19に形成された案内面または穴21内に案内されている。減速装置ケーシング19におけるねじ付きナット16の支承のために、スラスト軸受またはボールベアリングが役立つ。このベアリングはねじ付きナット16に形成された半径方向つば29と、詳しく示していない多数のボールと、軸受リング22とからなっている。軸受リング22と、減速装置ケーシング19に形成されたリング状の支持面との間には、力センサ23が設けられている。この力センサは操作ユニットによって加えられる締付け力を検出する働きをする。例えば水しぶきのような汚染物から第1の減速装置2を保護するために、力伝達板15と減速装置ケーシング19の間には、弾性的なシール27が設けられている。このシールは図示実施の形態ではカップシールとして形成されている。
【0045】
図1に示した本発明の実施の形態の場合、必要なトルクの低減は、遊星歯車装置30~34の好ましい一体化によって行われる。ロータ10とねじ付きナット16の間に作用的に配置された遊星歯車装置は、特にロータ10に形成された外歯付き範囲42によって形成された太陽歯車30と、2つだけを示し参照符号31と32を付けた複数の段付き遊星歯車と、内歯歯車33とによって形成されている。遊星歯車キャリヤ34に支承された段付き遊星歯車31,32は、太陽歯車と協働する第1の段部と、内歯歯車33と協働する第2の段部を備えている。この場合、第1の段部は大径の歯車31a,32aによって形成され、第2の段部は小径の歯車31b,32bによって形成されている。その際、前述の遊星歯車キャリヤ34は好ましくは、遊星歯車31,32の支承個所とねじ付きナット16の連結個所の間にあるその範囲が小さな軸方向隙間および半径方向隙間と小さな角度ずれを許容し、例えば積層板または折畳みベローとして形成されるように構成されている。内歯歯車33はラジアル軸受35の外側リング36の内歯付き範囲によって形成されている。このラジアル軸受は図示した例ではボールベアリングとして形成されている。このボールベアリングの内側リングは遊星歯車キャリヤ34の半径方向外側にある外周範囲によって形成されている。
【0046】
駐車ブレーキの機能を実現可能にするために、本発明による操作ユニットは、電動機11のロータ10と協働してロータのロックを可能にする電気機械的な手段を備えている。そのために、図1に示した実施の形態では、ロータ10は歯付きリム37を支持している。この歯付きリムの歯はロック爪38に係合可能である。ロック爪38に付設された電気的なアクチュエータは機械的なフリップフロップのように構成されている。このフリップフロップの状態は短い通電の度に変更される。図示した実施の形態の場合、ロック爪38は示唆的に示した永久磁石39を備えている。この永久磁石はコイル40によって動かされる。ロック爪39は更に、参照符号41をつけた係止手段を備えている。この係止手段はロック爪39を操作位置と非操作位置に係止することができる。その際、前述の歯付きリム37がロータ10を支承することにより、ラジアル軸受43の構成部材を形成すると特に有利である。更に、歯付きリム37は詳しく示していない位置認識装置46の一部として形成可能である。この位置認識装置によって、ロータ10の実際の位置が検出される。位置情報はホールセンサまたは磁気抵抗要素によって検出される。
【0047】
図2に示した本発明対象の第2の実施の形態の場合、その構造は図1の実施の形態とほぼ一致しており、対応する部品には同じ符号が用いられている。この第2の実施の形態の場合、第1の減速装置2はローラねじ装置、特にローラ52の内側戻し装置を備えたローラねじ装置として形成されている。図1に関連して述べた操作要素15はローラねじ装置のねじ付きナット50によって形成されている。このねじ付きナットは第1の摩擦パッド4寄りのその範囲に、減速装置ケーシング19内に配置された案内リング54内を案内されている。この手段により、横方向力が減速装置ケーシング19に伝達される。案内リング54の滑り特性を改善するために、案内リング54はテフロンブッシュ55を備えている。その際、ねじ付きナット50は、案内リング54内で案内されるその部分の直径が摩擦パッド4に接触するその接触面の直径よりも小さくなるように形成されている。それによって、必要な案内長さを短くすることができる。遊星歯車キャリヤ34によって駆動されるねじ付きスピンドル51は、大径の半径方向つば53を備えている。ねじ付きスピンドルはこのつばを介して、ローラねじ装置を半径方向で取り囲むカップ状の案内部材56に軸方向で支持されている。その際、配置は好ましくは、つば53と、それ寄りの案内部材56の範囲との間に、転動体、例えばボール57を設け、それによってスラスト軸受が形成されることによって行われる。操作時に加えられる締付け力は、図示していない力測定要素、例えばストレンゲージによって検出可能である。この力測定要素は好ましくは案内部材56に取付けられている。ローラねじ装置が汚れないようにするためのカップシール58は一方ではねじ付きナット50に固定され、他方では案内リング54に固定されている。図1に関連して説明した、遊星歯車キャリヤ34を支承するためのラジアル軸受は、図2において参照符号44で示してあり、外側リングは参照符号45で示してある。駐車ブレーキと第2の減速装置3の実施形は、図1に関連して説明した実施形と正確に一致しているので、詳しく説明する必要はない。
【0048】
図3,4に示した本発明による操作ユニットの第3の実施の形態の場合には、第1の減速装置2としてボールねじ装置が使用される。このボールねじ装置のねじ付きナット60は前述の操作要素を形成している。案内部材66内でのねじ付きナット60の支承は、第1の摩擦パッド4寄りのその範囲において、案内部材66内に配置された第1のスライドリング65によって、および摩擦パッド60上に配置された第2のスライドリング67によって行われる。第2の減速装置3は前述の実施の形態の場合のように、段付き遊星歯車を備えた遊星歯車装置として形成されている。この遊星歯車装置はそのケーシングを形成するキャップ69内に設けられている。一体のねじ付きスピンドルを設けることが考えられるが、第2の減速装置3を介して電動機11によって駆動されるねじ付きスピンドルは、図示した実施の形態では3つの部分によって形成され、多数のボール64によってねじ付きナット60に係合する管状の第1のスピンドル部分61と、案内部材66内に配置されたスラスト軸受68に支持されたリング状の第2のスピンドル部分62と、形状補完的な差込み連結によって第2の減速歯車装置3の遊星歯車キャリヤ34に連結された第3のスピンドル部分63とからなっている。この差込み連結のために、第3のスピンドル部分63の端部は例えばトルックス(Torx)継手または六角部として形成され、遊星歯車キャリヤ34の対応して形成された穴に挿入されている。その際、形状補完的な連結部がねじれにくく、半径方向に可撓性を有しそして曲がり得るように遊星歯車キャリヤ34に連結されていると特に有利である。連結はキャップ69内に設けられたラジアル軸受71の外側リング72によって行われる。この場合、キャップ69内に歯付き範囲が形成され、この歯付き範囲が遊星歯車装置の内歯歯車70を形成している。ねじ付きナット60と案内部材66の間に挟持された弾性的なカップシール59は、ボールねじ装置の内部への汚れの侵入を防止する。
【0049】
特に図4から判るように、ねじ付きナット60は摩擦パッド4と反対側のその端部に、軸方向の突起73を備えている。この突起はねじ付きナット60をリセットする際に、スピンドル部分61の外周に形成されたストッパー74と協働する。突起73の側面がストッパー74に支持されることにより、ねじ付きナット60のそれ以上のリセットが阻止されるので、両部分60,61が締付けられて動かなくなることがない。
【0050】
本発明の範囲内では勿論、多数の変形が考えられる。例えば、駆動ユニット1としての働きをする電動機は、切換えられるリラクタンスモータ(SRモータ)として形成可能である。例えば2段型差動遊星歯車装置または遊星歯車の第1の段が太陽歯車にかみ合い、第2段が各々1個の平歯車を介在して内歯歯車にかみ合う減速装置が考えられる。勿論、変形可能な歯付きリングと偏心によって大きな減速比を達成する減速装置も考えられる。
【図面の簡単な説明】
【図1】
本発明による電気機械式操作ユニットの第1の実施の形態の軸方向断面図である。
【図2】
本発明対象の第2の実施の形態の、図1と同様な図である。
【図3】
本発明による電気機械式操作ユニットの第3の実施の形態の、図1と同様な図である。
【図4】
図3の第3の実施の形態で使用される第1の減速装置の分解図である。
【符号の説明】
1 駆動ユニット
2 減速装置
3 減速装置
4 摩擦パッド
5 摩擦パッド
6 ブレーキディスク
9 ステータ
10 ロータ
11 電動機
12 モータケーシング
13 支持体、磁石支持体
14 永久磁石セグメント
15 操作要素、力伝達板
16 ねじ付きナット
17 ねじ付きスピンドル
18 ボール
19 減速装置ケーシング
20 案内ピン
21 案内面、穴
22 軸受リング
23 力センサ
24 押圧棒
25 穴
26 突起
27 シール
28 多角形部
29 カラー
30 太陽歯車
31 遊星歯車
31a 遊星歯車
31b 遊星歯車
32 遊星歯車
33a 遊星歯車
33b 遊星歯車
33 内歯歯車
34 遊星歯車キャリヤ
35 ラジアル軸受
36 外側リング
37 歯付きリム
38 ロック爪
39 永久磁石
40 コイル
41 係止手段
42 範囲
43 ラジアル軸受
44 ラジアル軸受
45 外側リング
46 位置認識装置
50 ねじ付きナット
51 ねじ付きスピンドル
52 ねじ付きローラ
53 つば
54 案内リング
55 テフロンブッシュ
56 案内部材
57 ボール
58 シール
59 カップシール
60 ねじ付きナット
61 スピンドル部分
62 スピンドル部分
63 スピンドル部分
64 ボール
65 スライドリング
66 案内部材
67 スライドリング
68 スラスト軸受
69 キャップ
70 内歯歯車
71 ラジアル軸受
72 外側リング
73 突起
74 ストッパー
【請求項1】 ブレーキキャリパに設けられた、電気機械的に操作可能な自動車用ディスクブレーキのための操作ユニットであって、ブレーキキャリパ内に、ブレーキディスク(6)の各々1個の側面と協働する2個の摩擦パッド(4,5)が制限されて移動可能に配置され、摩擦パッド(4,5)の一方(4)が操作要素(15)を用いて操作ユニットによって直接的に摩擦ディスク(6)に作用可能であり、他方の摩擦パッド(5)がブレーキキャリパによって加えられる反力の作用によってブレーキディスク(6)に作用可能であり、操作ユニットが電動機(11)と、この電動機(11)と操作要素(15)の間に作用的に配置された第1の減速装置(2)と、電動機(11)と第1の減速装置(2)の部分の間に配置された第2の減速装置(3)とを備え、電動機(11)のロータ(10)がリング状に形成され、半径方向において第1の減速装置(2)を取り囲んでいる、操作ユニットにおいて、電動機(11)と第1の減速装置(2)と第2の減速装置(3)が、互いに独立して取扱い操作可能な少なくとも2個のアセンブリとして形成されていることを特徴とする操作ユニット。
【請求項2】 電動機(11)と第1の減速装置(2)と第2の減速装置(3)が、独立して取扱い操作可能なアセンブリとして形成されていることを特徴とする請求項1記載の操作ユニット。
【請求項3】 第2の減速装置(3)がブレーキパッド(4,5)と反対の電動機(11)の側に配置されていることを特徴とする請求項1記載の操作ユニット。
【請求項4】 第1の減速装置(2)が転動体ねじ装置として形成され、この転動体ねじ装置のねじ付きナット(16)が第2の減速装置(3)と協働することを特徴とする請求項1~3のいずれか一つに記載の操作ユニット。
【請求項5】 第1の減速装置(2)が転動体ねじ装置として形成され、この転動体ねじ装置のねじ付きスピンドル(51,61~63)が第2の減速装置(3)と協働することを特徴とする請求項1~3のいずれか一つに記載の操作ユニット。
【請求項6】 第1の減速装置(2)がローラねじ装置(50~53)として形成されていることを特徴とする請求項4または5記載の操作ユニット。
【請求項7】 ローラねじ装置が内側のローラ戻し装置を備えたローラねじ装置として形成されていることを特徴とする請求項6記載の操作ユニット。
【請求項8】 第1の減速装置(2)がボールねじ装置(16~18)として形成されていることを特徴とする請求項4または5記載の操作ユニット。
【請求項9】 操作要素が転動体ねじ装置(16~18)のねじ付きスピンドル(17)に力を伝達するように連結され、かつ力伝達板(15)によって形成され、この力伝達板が転動体ねじ装置を収容するリング状の減速装置ケーシング(19)内で案内されていることを特徴とする請求項4,6,7,8のいずれか一つに記載の操作ユニット。
【請求項10】 力伝達板(15)が半径方向において互いに向き合う少なくとも2本の案内ピン(20)を備え、この案内ピンが対応して形成された、減速装置ケーシング(19)の案内面(21)または穴によって収容されていることを特徴とする請求項9記載の操作ユニット。
【請求項11】 ねじ付きナット(16)が減速装置ケーシング(19)内に配置された軸受リング(22)に軸方向で支持されていることを特徴とする請求項4,6,7,8のいずれか一つに記載の操作ユニット。
【請求項12】 軸受リング(22)と減速装置ケーシング(19)の間に力センサ(23)が配置されていることを特徴とする請求項11記載の操作ユニット。
【請求項13】 ボールねじ装置のねじ付きスピンドル(17)が円錐状の穴(25)を有し、この穴が押圧力を伝達する働きをする押圧棒(24)を収容し、この押圧棒の端部が力伝達板(15)の軸方向突出部(26)内にまたは穴(25)の底に回転しないように支持されていることを特徴とする請求項4,8に記載の操作ユニット。
【請求項14】 力伝達板(15)と減速装置ケーシング(19)との間に、弾性的なシール(27)が設けられていることを特徴とする請求項9~13のいずれか一つに記載の操作ユニット。
【請求項15】 第2の減速装置(3)が遊星歯車装置として形成されていることを特徴とする請求項1~14のいずれか一つに記載の操作ユニット。
【請求項16】 第2の減速装置(3)が段付き遊星歯車(31,32)を備えた遊星歯車装置として形成されていることを特徴とする請求項15記載の操作ユニット。
【請求項17】 遊星歯車の第1の段が太陽歯車にかみ合い、第2の段が各々1個の平歯車を介在して内歯歯車にかみ合っていることを特徴とする請求項16記載の操作ユニット。
【請求項18】 第2の減速装置が2段の差動遊星歯車装置として形成されていることを特徴とする請求項15記載の操作ユニット。
【請求項19】 遊星歯車装置の太陽歯車(30)がロータ(10)に形成され、遊星歯車(31,32)がねじ付きナット(16)に力を伝達するように連結された遊星歯車キャリヤ(34)に支承され、かつ太陽歯車(30)にかみ合う大径の第1の遊星歯車(31a,32a)と、内歯歯車(33)にかみ合う小径の第2の遊星歯車(31b,32b)を各々1個ずつ備えていることを特徴とする請求項16記載の操作ユニット。
【請求項20】 遊星歯車装置の内歯歯車(33)が内歯を備えたラジアル軸受(35)の外側リングによって形成され、この外側リングに遊星歯車キャリヤ(34)が支承されていることを特徴とする請求項19記載の操作ユニット。
【請求項21】 操作要素が転動体ねじ装置のねじ付きナット(50,60)によって形成されていることを特徴とする請求項5記載の操作ユニット。
【請求項22】 ねじ付きナット(50,60)を取り囲む案内部材(56,66)が設けられ、この案内部材が転動体ねじ装置を収容するリング状の減速装置ケーシング(19)に支持され、ねじ付きスピンドル(51,61,62)がこの案内部材に軸方向で支持されていることを特徴とする請求項21記載の操作ユニット。
【請求項23】 ねじ付きスピンドル(51,61)の軸方向の支持が、スラスト軸受(57,68)を介在して半径方向のつば(53,62)によって行われていることを特徴とする請求項22記載の操作ユニット。
【請求項24】 力測定要素が案内部材に設けられていることを特徴とする請求項22または23記載の操作ユニット。
【請求項25】 ねじ付きナット(50)が第1の摩擦パッド(4)寄りのその端部において、案内リング(54)内を案内されていることを特徴とする請求項6,7,21のいずれか一つに記載の操作ユニット。
【請求項26】 ねじ付きナット(50)と案内リング(54)の間に弾性的なシール(58)が設けられていることを特徴とする請求項25記載の操作ユニット。
【請求項27】 遊星歯車装置の太陽歯車(30)がロータ(10)に形成され、遊星歯車(31,32)がねじ付きスピンドル(51,63)に力を伝達するように連結された遊星歯車キャリヤ(34)に支承され、かつ太陽歯車(30)にかみ合う大径の第1の遊星歯車(31a,32a)と、内歯歯車(33)にかみ合う小径の第2の遊星歯車(31b,32b)を各々1個ずつ備えていることを特徴とする請求項16記載の操作ユニット。
【請求項28】 遊星歯車装置の内歯歯車(33)が内歯を備えたラジアル軸受(44)の外側リング(45)によって形成され、この外側リングに遊星歯車キャリヤ(34)が支承されていることを特徴とする請求項27記載の操作ユニット。
【請求項29】 遊星歯車装置の内歯歯車(33)がキャップ(69)に形成された内歯(70)によって形成され、このキャップが遊星歯車装置のケーシングを形成し、かつ電動機(11)の電動機ケーシング(12)に設けられていることを特徴とする請求項27または28記載の操作ユニット。
【請求項30】 遊星歯車キャリヤ(34)とねじ付きスピンドル(63)の間の力伝達が形状補完的な差込み継手によって行われることを特徴とする請求項29記載の操作ユニット。
【請求項31】 遊星歯車キャリヤ(34)がラジアル軸受(71)によってキャップ(71)に支承されていることを特徴とする請求項30記載の操作ユニット。
【請求項32】 形状補完的な差込み継手がねじれにくく、半径方向に可撓性でそして曲がり得るように遊星歯車キャリヤ(34)に連結されていることを特徴とする請求項30または31記載の操作ユニット。
【請求項33】 ねじ付きスピンドル(51)が一体に形成されていることを特徴とする請求項1~32のいずれか一つに記載の操作ユニット。
【請求項34】 ねじ付きスピンドル(61,62,63)が複数の部分によって形成されていることを特徴とする請求項1~33のいずれか一つに記載の操作ユニット。
【請求項35】 ねじ付きナット(60)が第1の摩擦パッド(4)寄りのその端部に突起(73)を備え、この突起がねじ付きスピンドル(61)に形成された周方向に作用するストッパー(74)に接触可能であることを特徴とする請求項1~34のいずれか一つに記載の操作ユニット。
【請求項36】 電動機(11)のロータ(10)をロックすることができる電気機械的な手段(37~41)が設けられていることを特徴とする請求項1~35のいずれか一つに記載の操作ユニット。
【請求項37】 手段がロータ(10)に連結された歯付きリム(37)と電磁操作可能なロック爪(38)によって形成されていることを特徴とする請求項35記載の操作ユニット。
【請求項38】 ロック爪(36)が係止手段(41)を備え、この係止手段が操作位置と非操作位置でそのロック爪の係止を可能にすることを特徴とする請求項36記載の操作ユニット。
【請求項39】 電動機(11)が永久磁石によって励磁され電子的に電流の方向を転換する電動機として形成されていることを特徴とする請求項1~38のいずれか一つに記載の操作ユニット。
【請求項40】 電動機が切換えられるリラクタンスモータとして形成されていることを特徴とする請求項1~39のいずれか一つに記載の操作ユニット。
【請求項41】 ロータ(10)の位置を認識することができる位置認識装置(46)が設けられていることを特徴とする請求項1~40のいずれか一つに記載の操作ユニット。
【請求項42】 位置認識装置(46)がホールセンサを備えていることを特徴とする請求項40記載の操作ユニット。
【請求項43】 位置認識装置(46)が磁気抵抗要素を備えていることを特徴とする請求項40記載の操作ユニット。
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