MULTILAYER FILM FOR AIR BAGS, AND AIR BAG

13-02-2020 дата публикации
Номер:
WO2020032032A1
Принадлежит: 旭化成株式会社
Контакты:
Номер заявки: JP09-03-201926
Дата заявки: 06-08-2019

エアバッグ用多層フィルム及びエアバッグ
[1]

 本発明はエアバッグ用多層フィルム及びエアバッグに関する。
 更に詳しくは、合成繊維織物の表面に熱等によって接着する接着層と、外層と、を含むエアバッグ用多層フィルム、及び上記エアバッグ用多層フィルムが熱ラミネートにより合成繊維織物に積層されたエアバッグに関する。

[2]

 エアバッグの代表的な用途には車載用途がある。この用途では、衝突時にインフレータが瞬時に作動し、折り畳まれた状態のエアバッグを膨張させ、乗員の運動エネルギーを吸収することで重症化を防ぐことができる。近年、車輛の安全規制や安全意識の高まりからエアバッグを搭載する車輛が増えている。

[3]

 この車輛用エアバッグには、正面衝突を想定したフロントエアバッグをはじめ、側面衝突や横転を想定したサイドエアバッグ及びサイドカーテンエアバッグ、更には歩行者を保護するための車外エアバッグ等、様々な種類がある。これらのエアバッグに求められる性能としては、狭いスペースにコンパクトに収納するための柔軟性、膨張時の圧力に耐えうる強度特性、膨張を一定時間保持するための気密性等が挙げられる。特にサイドカーテンエアバッグに関しては、側面衝突とそれに伴う車輛の横転から乗員を守るため、フロントエアバッグよりも長時間膨張を維持する必要があり、より高い気密性が求められている。

[4]

 エアバッグを構成する素材としては、合成繊維織物(本明細書において「基布」とも言う)を支持層として、その表面には気密性を持たせるため、バリア性素材が被覆される。このバリア性素材には、シリコーンゴム(コーティング方式)や多層フィルム(熱ラミネート方式)が要求特性に応じて使用されている。

[5]

 上記バリア性素材として、特許文献1には、高融点の樹脂層と低融点の樹脂層からなる多層フィルムに関する技術が開示されている。これによれば、基布と接着する低融点の樹脂層には、85~105℃の融点を有する変性ポリオレフィンを用いることが記載されている。また、特許文献2には、ガラス転移温度が異なる樹脂層よりなる多層フィルムに関する技術が開示されている。これによれば、基布と接着する第一の樹脂層にガラス転移温度が-10℃以下の共重合ポリアミド、共重合ポリエステル、ポリアミドエラストマーを用いることが記載されている。

[6]

特許第4965757号公報欧州特許出願公開第1518761号明細書

[7]

 しかしながら、特許文献1では、基布と接着する接着層に変性ポリオレフィンを用いるため、ポリアミド繊維やポリエステル繊維よりなる基布との親和性が乏しく、接着強度が十分とはいえなかった。また、接着強度が不足することで、エアバッグが膨張した際、基布から多層フィルムが剥離し、十分な機能を果たせなくなる虞があった。

[8]

 また、特許文献2のバリア性素材は、ガラス転移温度が-10℃以下の共重合ポリアミド、ポリアミドエラストマー、ポリエステルエラストマーのいずれかを接着層に用いることで、柔軟性、接着性には優れるものの、分子構造的な立体規則性が乏しいために結晶性が低く、その結果、ブロッキング(融着)が起こり易いと言った欠点を有していた。このため、例えば、バリア性素材の生産方法に、生産性に優れたインフレーション法(図1)を採用した場合には、ブローアップ後のピンチロール部でブロッキングが発生し、その後の剥離工程において二枚重ねのフィルムを単独で引き剥がすことが困難となり、フィルム破断や剥離位置の変動によるシワや巻ズレが発生し、安定的に生産することが困難であった。また、ブロッキングが起こり易いフィルムを巻いた製品では、巻張力や保管中の温湿度条件等により、ブロッキングが発生し、フィルムを引き出すことができなくなると言った保存性にも問題があった。

[9]

 本発明は、接着性と耐ブロッキング性の双方を十分両立させたエアバッグ用多層フィルムを提供することを目的とする。

[10]

 本発明は、上記の課題を鑑み、鋭意検討を重ねた結果なされたものであり、接着層をガラス転移温度と融点とが特定範囲の樹脂を含む接着層とし、外層を接着層に含まれる前記樹脂よりも融点が20℃高い樹脂を含む層にすることにより、耐ブロッキング性と接着性とをより優れたバランスにすることができることを見出し、本発明に至った。

[11]

 すなわち、本発明は以下の通りである。
(1)
 接着層と外層とを含み、
 前記接着層は、ガラス転移温度が0~80℃、融点が100~160℃の樹脂を含み、
 前記外層が、前記接着層に含まれる前記樹脂の融点よりも20℃以上高い融点を有する樹脂を含むことを特徴とする、エアバッグ用多層フィルム。
(2)
 前記接着層に含まれる前記樹脂がポリアミド系樹脂である、(1)に記載のエアバッグ用多層フィルム。
(3)
 前記ポリアミド系樹脂が共重合ポリアミドである、(2)に記載のエアバッグ用多層フィルム。
(4)
 前記共重合ポリアミドが、ポリアミド12とポリアミド6との共重合体である、(3)に記載のエアバッグ用多層フィルム。
(5)
 前記接着層100質量%に対して、前記共重合ポリアミドを10質量%以上含む、(3)又は(4)に記載のエアバッグ用多層フィルム。
(6)
 前記接着層が、アンチブロッキング剤及び/又は結晶核剤をさらに含む、(1)~(5)のいずれか1つに記載のエアバッグ用多層フィルム。
(7)
 前記接着層と前記外層の間に中間層を含み、前記中間層にはポリオレフィン系樹脂が含まれる、(1)~(6)のいずれか1つに記載のエアバッグ用多層フィルム。
(8)
 (1)~(7)のいずれか1つに記載のエアバッグ用多層フィルムの接着層と、合成繊維織物とが積層されたことを特徴とする、エアバッグ。
(9)
 前記合成繊維織物がポリアミド繊維又はポリエステル繊維である、(8)に記載のエアバッグ。

[12]

 本発明によれば、ブロッキング性が抑制されることから保存性に優れると共に、合成繊維織物との接着性にも優れていることから品質が安定した信頼性の高いエアバッグが得られる。

[13]

図1は、インフレーション法の一例の概略図を示す。図2は、インフレーション法で得られた二枚重ねのフィルムの耐ブロッキング性の評価方法の概略図を示す。図3は、基布に多層フィルムをヒートシールしたサンプルの180°剥離テストの概略図を示す。図4は、ラミネーターの概略図を示す。

[14]

 以下に本発明が実施するための形態の詳細を説明するが、本発明は以下に示す実施形態及び例示物等に限定されるものではなく、本発明の要旨及び均等の範囲を逸脱しない範囲で任意に変更可能である。

[15]

 本実施形態のエアバッグ用多層フィルムは、少なくとも二つの層より構成され、その内、エアバッグの基布と接着する層を「接着層」と言い、エアバッグの外側に露出する層を「外層」と言う。
 本実施形態のエアバッグ用多層フィルムによれば、さらに、ブロッキング性が抑制されることから保存性にも優れると共に、基布との接着性にも優れていることから品質が安定した信頼性の高いエアバッグが得られる。
 以下の本実施形態の多層フィルムについて説明する。

[16]

 本実施形態の多層フィルムは、接着層と外層とが積層した接着層/外層の2層構成であってもよいし、接着層/中間層/外層の3層構成、接着層/Glue層/中間層/Glue層/外層の5層構成であってもよい。また、上記以外の他の層をさらに含んでいてもよい。なお、上記接着層および上記外層は、本実施形態の多層フィルムの両表面の表層であることが好ましい。

[17]

(接着層)
 結晶性樹脂のブロッキング性は、結晶性(結晶化度、結晶化速度)が支配的であることが知られていたが、ガラス転移温度によってもブロッキング性を抑制することができることが、本発明者らの検討の結果明らかとなった。さらに、接着層にガラス転移温度と融点とが特定の範囲である樹脂を用いることにより、耐ブロッキング性と接着性のバランスがより優れたエアバッグ用多層フィルムが得られることを見出し、本発明に至った。

[18]

 上記接着層は、ガラス転移温度が0~80℃であり、融点が100~160℃の樹脂(本明細書において、「樹脂A」と称する場合がある)を含むことが好ましい。上記接着層は、上記樹脂A以外に、他の樹脂(本明細書において、「樹脂B」と称する場合がある)を含んでいてもよい。上記樹脂A及び上記樹脂Bは、1種であってもよいし、複数種であってもよい。
 上記接着層は、樹脂Aのみから構成されていてもよいし、さらに上記樹脂B、後述の添加剤を含んでいてもよい。

[19]

 上記樹脂Aのガラス転移温度は、0~80℃であることが好ましく、より好ましくは10~70℃、さらに好ましくは20~60℃である。ガラス転移温度の範囲は、耐ブロッキング性と融点の観点より定められる範囲であり、ガラス転移温度が0℃以上では、耐ブロッキング性が一層抑制され、ガラス転移温度を80℃以内にすることで後述する融点を適切な範囲にすることができる。
 なお、上記ガラス転移温度は、後述の実施例に記載の方法により測定することができる。
 樹脂Aが複数種である場合、各樹脂Aのガラス転移温度は同じであってもよいし、異なっていてもよい。

[20]

 上記樹脂Aの融点は、100~160℃であることが好ましく、より好ましくは110~150℃、さらに好ましくは120~140℃である。融点を100℃以上にすることで高温の使用環境下でも基布との接着強度が維持できると共に、ラミネート加工時の温度、圧力、時間等の条件の範囲(プロセスウィンドウとも言う)を広くすることができ、品質の安定した多層フィルムが得られる。一方、160℃以下にすることで、適度な柔軟性が得られる。
 なお、上記融点は、後述の実施例に記載の方法により測定することができる。
 樹脂Aが複数種である場合、各樹脂Aの融点は同じであってもよいし、異なっていてもよい。また、樹脂Aが複数種含まれ、複数の融解ピークがある場合、樹脂Aの高温側の融解ピーク温度が、100~160℃であることが好ましく、より好ましくは110~150℃、さらに好ましくは120~140℃である。

[21]

 上記樹脂Aは、単独又は複数の成分をブレンドした混合物でもよく、更には極性を有する他の成分をブレンドした混合物であってもよい。
 上記樹脂Aとしては、使用環境での温湿度変化に対し、柔軟性、接着性などの特性変化が小さい点で、ポリアミド系樹脂が好ましい。中でも上記ポリアミド系樹脂としては、共重合ポリアミド(a-1)、ダイマー酸系ポリアミド(a-2)、熱可塑性ポリアミドエラストマー(a-3)が好ましく、柔軟性、接着性、コストの観点から、共重合ポリアミド(a-1)がより好ましい。

[22]

 上記共重合ポリアミド(a-1)としては、脂肪族系ポリアミドを構成するモノマー成分として知られるモノマー成分(例えば、ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド610、ポリアミド11、ポリアミド12を構成するモノマー成分)を2種以上用いて共重合した共重合ポリアミドが挙げられ、ポリアミド6/66、ポリアミド6/12、ポリアミド6/11、ポリアミド6/66/11等が挙げられる。
 上記ダイマー酸系ポリアミド(a-2)としては、天然植物油の脂肪酸(炭素数18の不飽和脂肪酸(例えば、オレイン酸、リノール酸等))を2量化した原料を用いたものが挙げられる。
 上記熱可塑性ポリアミドエラストマー(a-3)としては、ソフトセグメント(非晶相)にポリエーテル、ハードセグメント(結晶相)にポリアミド成分を含む熱可塑性ポリアミドエラストマー(ダイマー酸系熱可塑性ポリアミドエラストマーも含む)が挙げられる。
 中でも、柔軟性及び接着性に特に優れる観点から、ポリアミド6/12が好ましい。

[23]

 上記接着層は、上記樹脂A以外に上記樹脂Bを含む混合樹脂層であっても良い。この場合に用いる樹脂Bは、好ましくは酸変性ポリオレフィン、アイオノマー、熱可塑性ポリアミドエラストマー等が挙げられる。低温環境下での柔軟性、接着性の観点より、ガラス転移温度が0℃未満であり、融点が80~160℃の範囲であることが好ましい。
 また、上記接着層(100質量%)中の上記樹脂Bの質量割合としては、接着性の観点より、好ましくは90質量%以下、より好ましくは80質量%以下、更に好ましくは70質量%以下である。

[24]

 上記接着層は、アンチブロッキング剤、滑剤、結晶核剤、難燃剤、帯電防止剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、着色剤、充填剤等の各種添加剤を、接着性等の実用特性を損なわない範囲で適宜含んでいてよい。中でも、接着層の耐ブロッキング性が一層向上する観点から、アンチブロッキング剤、結晶核剤、及び/又は滑剤を含むことが好ましく、アンチブロッキング剤及び/又は結晶核剤を含むことがより好ましく、アンチブロッキング剤及び結晶核剤を含むことがさらに好ましい。

[25]

 上記アンチブロッキング剤としては、架橋ポリスチレン、架橋アクリル(PMMA)樹脂、フッ素(PTFE)粒子等の有機系粒子やシリカ系粒子、カオリン、炭酸カルシウム等の無機系粒子等が挙げられる。
 上記結晶核剤としては、タルク、アルミナ、カオリン、高融点ポリアミド(例えば、融点が160℃超のポリアミド)等が挙げられる。
 上記滑剤としては、脂肪族系アマイド、金属石鹸等が挙げられる。

[26]

 上記接着層(100質量%)中の上記樹脂Aの質量割合としては、接着性と耐ブロッキング性とが一層向上する観点から、10質量%以上であることが好ましく、より好ましくは20質量%以上、更に好ましくは30質量%以上である。

[27]

 上記接着層(100質量%)中の上記添加剤の質量割合としては、接着性と耐ブロッキング性との観点から、30質量%以下であることが好ましく、より好ましくは20質量%以下、さらに好ましくは10質量%以下である。

[28]

 上記接着層100質量%に対する上記樹脂A(例えば、共重合ポリアミド等)の質量割合は、接着性と耐ブロッキング性の観点から、10質量%以上であることが好ましく、より好ましくは20質量%~100質量%、さらに好ましくは30質量%~100質量%である。

[29]

(外層)
 上記外層は、樹脂を含むことが好ましい。
 上記外層に用いられる上記樹脂は、上記樹脂Aの融点よりも融点が高い樹脂であることが好ましい。また、外層に用いられる樹脂は、上記接着層の融点よりも融点が高い樹脂であることが好ましい。
 上記外層に用いられる上記樹脂の融点は、上記樹脂Aの融点よりも20℃以上高いことが好ましく、25℃以上高いことがより好ましく、30℃以上高いことがさらに好ましい。上記外層に用いられる上記樹脂の融点は、基布とのラミネート工程で使用する加熱ロールへの融着(貼り付き)のしやすさにより定められ、樹脂Aの融点よりも20℃以上高い融点の樹脂を用いることで熱ロールへの融着が起こり難く、安定したラミネートが達成できる。
 なお、接着層中に樹脂Aが複数種含まれる場合、及び/又は外層中に樹脂が複数種含まれる場合、混合樹脂の上記融点とは層中に含まれる混合樹脂に帰属する融解ピーク温度の内、最も高温側に現れる融解ピーク温度として良い。

[30]

 外層に用いられる上記樹脂としては、気密性、耐摩耗性、柔軟性、強度、デッドフォールド性(折り畳まれた時に発生する応力への耐性を意味する)、難燃性、滑り性等の特性に優れる外層が得られる観点から、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂が好ましい。
 上記ポリアミド系樹脂としては、上記接着層に含まれる樹脂Aとして例示したポリアミド系樹脂(a-1、a-2、a-3)が挙げられ、単独又は複数をブレンドした組成物が好適に使用できる。
 上記ポリエステル系樹脂としては、熱可塑性ポリエステルエラストマーが好ましく、例えばソフトセグメントにポリエーテル成分を用いたタイプ(ポリエーテル-ポリエステル型)、ソフトセグメントにポリエステル成分を用いたタイプ(ポリエステル-ポリエステル型)等が挙げられる。

[31]

(中間層)
 上記中間層としては、例えば、直鎖状低密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、酸変性ポリオレフィン系樹脂、ポリオレフィン共重合樹脂、ポリオレフィン系熱可塑性エラストマー、酸変性ポリオレフィン系エラストマー等を単独又は複数をブレンドした組成物からなる層が挙げられ、柔軟性の観点より、ポリオレフィン共重合樹脂又は/及びポリオレフィン系熱可塑性エラストマーを含むことが好ましい。

[32]

(Glue層)
 上記Glue層は、各層を接着させるための層であり、例えば、酸変性ポリエチレン、酸変性ポリプロピレン等の極性のある官能基を有する酸変性ポリオレフィン系樹脂又は/及びポリオレフィン系熱可塑性エラストマーからなる層等が挙げられ、使用される用途での耐熱性等に対する要求を勘案し、選定することが望ましい。
 上記Glue層は、1種の樹脂のみからなる層であってもよいし、複数種の樹脂を含む層であってもよい。

[33]

(多層フィルム)
 本実施形態の多層フィルムは、少なくとも2層以上のフィルムであり、フィルムの総厚さは5~100μmであることが好ましく、より好ましくは10~80μm、さらに好ましくは15~50μmである。これらの範囲は、強度と柔軟性とのバランスにより定められ、厚さ5μm以上では強度が良好となり、100μm以下では柔軟性が良好となる。

[34]

 本実施形態の多層フィルムにおいて、上記接着層の厚み(100%)に対する上記外層の厚み割合は、柔軟性と耐摩耗性とのバランスの観点から、20~500%であることが好ましく、より好ましくは50~400%である。
 また、本実施形態の多層フィルムが、外層/Glue層/中間層/Glue層/接着層の5層構成である場合、上記接着層の厚み(100%)に対する上記各層の厚み割合としては、Glue層は10~500%であることが好ましく、中間層は50~10000%であることが好ましく、外層は10~5000%であることが好ましい。

[35]

 上記多層フィルムの製造方法としては、例えば、多層サーキュラーダイで各層を含む溶融樹脂を共押し出し、インフレーション法により製造する方法、Tダイから溶融樹脂を共押し出しし、キャストロールでフィルムを冷却固化するTダイ法等が挙げられる。中でもインフレーション成形は、生産性に優れる事から好ましく使用できる。
 インフレーション法を使用した場合、ダイ温度としては、170~280℃が挙げられる。また、サーキュラーダイのリップ外形としては50~500mm、リップクリアランスとしては0.5~10mmが挙げられる。また、ブローアップ比としては1~10倍、エアリング温度としては-30~50℃、サーキュラーダイとピンチロール間の距離としては1~100m、引取速度としては1~200m/分が挙げられる。

[36]

(エアバッグ)
 本実施形態のエアバッグは、上記多層フィルムを含む。さらに、合成繊維織物(基布)を含むことが好ましい。
 上記合成繊維織物を構成する合成繊維としては、例えば、ポリアミド繊維、ポリエステル繊維、ポリオレフィン系繊維、含塩素系繊維、含フッ素系繊維、ポリアセタール系繊維、ポリサルフォン系繊維、ポリフェニレンサルファイド系繊維(PPS)、ポリエーテルエーテルケトン系繊維(PEEK)、全芳香族ポリアミド系繊維、全芳香族ポリエステル系繊維、ポリイミド系繊維、ポリエーテルイミド系繊維、ポリパラフェニレンベンズビスオキサゾール系繊維(PBO)、ビニロン系繊維、アクリル系繊維、セルロース系繊維、炭化珪素系繊維、アルミナ系繊維、ガラス系繊維、カーボン系繊維、スチール系繊維等が挙げられ、中でも、強度、比重、コスト、多層フィルムとの接着強度等の観点からポリアミド繊維又はポリエステル繊維が好ましい。

[37]

 上記エアバッグは、上記多層フィルムにおける上記接着層と、上記合成繊維織物とが積層していることが好ましい。

[38]

 上記エアバッグの製造方法としては、加熱ロールを用い、Roll to Rollで連続的にラミネートする熱ラミネート法、減圧して単発的にラミネートする真空ラミネート法等が挙げられ、上記多層フィルムの上記接着層と、上記合成繊維織物(基布)とを、例えば、加熱温度が120~160℃の温度範囲で実施することが好ましい。

[39]

 上記エアバッグは、フロントエアバッグ、サイドエアバッグ、サイドカーテンエアバッグ、車外エアバッグ等の車輛用のエアバッグとして用いることができる。中でも、サイドカーテンエアバッグは側面衝突の時の衝撃から乗員を守ることに加えて、横転時には乗員がサイドルーフより放出させない機能が求められている。このため、サイドカーテンエアバッグには、サイドルーフ全体を瞬時に塞ぐと同時にフロントエアバッグに比べて長時間、膨張状態を持続させる必要があり、気密性は勿論、バリア性素材と基布との接着強度がより一層高いものが望ましく、上記バリア素材には本発明の多層フィルムが、より好適に使用できる。

[40]

 以下、実施例により、本発明を説明する。但し、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。

[41]

(原料)
 実施例及び比較例に用いた原料とその表記を以下に示す。また、各原料のガラス転移温度(Tgと記載することがある)及び融点(Tmと記載することがある)は後述する動的粘弾性測定機及びDSCを用いて得られた値である。

[42]

<接着層>
(樹脂A)
CoPA1:商品名「Ube Nylon 7128B」(宇部興産製)共重合ポリアミド6/12 (Tg=47℃、Tm=128℃)
CoPA2:商品名「Grilon BM13SBG」(エムスケミー製)共重合ポリアミド6/12 (Tg=18℃、Tm=134℃)
CoPA3:商品名「Griltex 1299A」(エムスケミー製)多元系共重合ポリアミド (Tg=17℃、Tm=104℃)
(樹脂B)
m-PE:商品名「Admer NF587」(三井化学製)酸変性ポリエチレン (Tg=-24℃、Tm=121℃)
L-TPAE:商品名「UBESTA XPA 9040F1」(宇部興産製)低融点熱可塑性ポリアミドエラストマー (Tg=-43℃、Tm=133℃)
(添加剤)
 接着層に添加した添加剤を以下に示す。尚、樹脂に添加するにあたっては、予め添加剤を5質量%含むマスターバッチを東芝機械製二軸押出機「TEM-18SS」により、温度180℃、スクリュ回転数100rpmの条件で溶融混練し、ペレタイズしたものを準備し、このペレット(マスターバッチ)と樹脂とドライブレンドした。その後、後述の方法でインフレーション法により多層フィルムを製膜した。
・アンチブロッキング剤(AB剤):商品名「シルトンJC-70」(水澤化学製)、成分名:ソジウムカルシウムアルミノシリケート、形状:球状、平均粒子径:7μm
・結晶核剤(NA剤):商品名「ミクロエースP-8」(日本タルク製)、成分名:タルク、形状:鱗片状、平均粒子径:3.3μm

[43]

<Glue層>
m-PE:商品名「Admer NF587」(三井化学製)酸変性ポリエチレン(Tg=-24℃、Tm=121℃)

[44]

<中間層>
LLDPE:商品名「Umerit 3570FC」(宇部丸善ポリエチレン製)メタロセン系ポリエチレン(Tg<-70℃、Tm=122℃)
OBC:商品名「INFUSE 9500」(ダウ・ケミカル製) ポリオレフィンブロックコポリマー(Tg=-51℃、Tm=120℃)
m-PE:商品名「Admer NF587」(三井化学製)酸変性ポリエチレン(Tg=-24℃、Tm=121℃)

[45]

<外層>
H-TPAE:商品名「UBESTA XPA 9063F1」(宇部興産製)高融点熱可塑性ポリアミドエラストマー (Tg=24℃、Tm=172℃)

[46]

 以下に、各物性の測定方法を説明する。

[47]

(融点)
 東洋精機製作所製プレス成形機「P2-30T-400」にて150μm厚さのシートを作製し、DSC(パーキングエルマー製「ダイアモンドDSC」)を用い、10℃/分の昇温速度で得られた融解ピーク温度を融点とした。尚、プレス成形条件は以下の条件に従ってサンプルを採取した。

[48]

(ガラス転移温度)
 東洋精機製作所製プレス成形機「P2-30T-400」にて0.9mm厚さのシートを作製し、動的粘弾性測定機(アントンパール製「MCR301」)にて損失正接tanδを測定し、損失正接tanδのピーク温度をガラス転移温度とした。
・測定モード:トーション (測定アタッチメント:SRF10)
・サンプル:厚み=0.9mm 幅=10mm 測定スパン=38mm
・ノーマルフォース:-0.3N
・振り角:0.1%
・周波数:1Hz
・昇温速度:2℃/分

[49]

(耐ブロッキング性)
 インフレーション法(図1)により、後述の条件で製膜した多層フィルムを二枚重ねの状態で巻き取り、直ちに(巻き取ってから10分以内)剥離性を評価した。評価の方法は、フィルムの端部の両面(図2)にニチバン製「セロテープ」(登録商標)を貼り合せて、多層フィルム表面に対して垂直の方向に2枚のセロテープを同時に引っ張り、剥離した時の抵抗(官能)と回数で評価した。この時、重ねた多層フィルムが剥がれず、セロテープが剥がれた場合は、同じ場所に新しいセロテープを貼り合わせ、同様の剥離試験を繰り返した。この試験を同一のサンプルについて場所を変えて3箇所を評価し、3箇所剥離するまでの回数を平均し、以下の基準に従い評価した。なお、多層フィルムが剥離するとは、接着層同士の界面が1cm以上の長さで分離した状態をいう。
-基準-
◎(非常に優れる):1回の剥離テストで、殆ど抵抗なく剥離できる。
〇(優れる):1回の剥離テストで剥離できるが、抵抗がある。
△(良好):2回~5回の剥離テストで剥離する。
×(劣る):6~20回の剥離テストで剥離する。
××(劣悪):20回の剥離テストでも剥離しない。

[50]

(接着強度)
 下記の条件によりヒートシールを行ったサンプルにおいて、剥離試験の時に多層フィルムが伸びて剥離速度が遅くなることを抑制するため、多層フィルムの外層表面全体にニチバン製「セロテープ」を貼り合わせた後、引張試験機(島津製作所製「オートグラフAG-IS」)にて180°剥離試験(図3)を5回行い、それぞれの最大値の平均を接着強度とした。尚、180°剥離試験を行った時の条件は以下の通りである。
・サンプルの状態調整:23℃-50%RHの条件にて2日間保管
・剥離テスト:23℃-50%RH
・チャック間:30mm(接着部がチャック間の中央になるように取り付け)
・剥離速度:5mm/分
<ヒートシール>
 実施例、比較例で得られた多層フィルムを10mm(W)×70mm(L)のサイズに切り出し、多層フィルムの接着層とポリアミド66製基布とを重ね合わせ、テスター産業製「ヒートシーラーTB-70-B」を用い、以下の条件で接着した。
・シールバーサイズ:5mmW×300mmL
・接着モード:ヒートシール
・シール圧力:0.4MPaゲージ圧 (シリンダー内径=50mm)
・シール時間:2秒
・接着温度設定:130℃、140℃、150℃(上部と下部のシールバー設定温度)

[51]

(柔軟性)
 後述のラミネーターを用い、熱ラミネート加工したサンプル(上記ポリアミド66製基布と実施例で得られた多層フィルムとの積層体)をループスティフネステスター(東洋精機製DA型)により、ループが押し潰される時の抵抗(最大値)を測定した。この時の測定条件は以下の通りであり、多層フィルムがループの外側になるようにセットし、サンプルを変えて3回測定を行い、平均値(1cm幅に換算)を求めた。
・サンプルの状態調整:23℃-50%RHの条件にて2日間保管
・サンプルの幅(基布の緯方向):20mm
・チャック間(基布の経方向):50mm
・試験(圧縮)速度:3.3mm/分
<ラミネート>
 実施例で得られた多層フィルムと、上記ポリアミド66製基布(繊度=235tex、単糸数=72、繊維密度:経=76本/inch、緯=74本/inch)とを重ね合わせ、ラミネーター(図4)を用い、シリコーンゴムロール側に多層フィルムが接するようにして接着した。この時のラミネート条件は以下の通りである。
・温度:160℃
・ロール速度:0.3m/分
・線圧:2.3kg/cm

[52]

(多層フィルムの作製方法)
 多層サーキュラーダイを用い、インフレーション法(図1)により所望の多層フィルムを二枚重ね状態で3インチ紙管に巻き取った。この時、チューブ状フィルムの内面側3bが接着層、外面側3aが外層となるように製膜を行った。製膜条件は以下の通りである。
・ダイ温度設定:210℃
・サーキュラーダイ:リップ外形=95mm、リップクリアランス=3mm
・ブローアップ比:1.1倍
・エアリング温度:22℃
・ピンチロール直前のフィルム表面温度:32℃
・サーキュラーダイ~ピンチロール間距離:2.4m
・引取速度:12m/分

[53]

(多層フィルムの組成分析、熱的特性測定方法)
 接着層と外層を有する多層フィルムにおいて、接着層中に含まれる成分を特定する方法の例としては、赤外分析法、NMR法により特定する方法等が挙げられる。また、融点、結晶化温度を求める他の方法として、多層フィルムが接着層と外層よりなる2種2層フィルムの場合は、直接、多層フィルムを所望の大きさにサンプリングし、上述の融点の測定方法に従い、求めることもできる。多層フィルムが接着層と外層との間に中間層を有する3種3層以上の多層フィルムの場合、接着層のみ抽出可能な溶媒(ヘキサフルオロ-2-プロパノール等)に浸漬し、得られた溶液をエバボレータにて溶媒と固形分を分離し、固形分を上述の融点の測定方法に従い、求めることもできる。

[54]

[実施例1]
 層構成が「接着層/外層」よりなる2種2層の多層フィルムであり、ここで、接着層にはCoPA1、外層にH-TPAEを用いて多層サーキュラーダイより押し出し、インフレーション法により、厚さ45μmの2種2層の多層フィルムを得た。この多層フィルムの層構成及び評価結果を表1に示した。CoPA1(ガラス転移温度Tg=47℃、Tm=128℃)は、耐ブロッキング性及び接着性(接着温度範囲、強度)は良好であった。

[55]

[実施例2]
 層構成が「接着層/中間層/外層」よりなる3種3層の多層フィルムであり、ここで、接着層と外層に使用した樹脂は実施例1に同じであり、中間層にはLLDPEとm-PEをそれぞれ50質量%をドライブレンドした原料を用いたこと以外は、実施例1と同様にして多層サーキュラーダイより押し出し、インフレーション法により、厚さ45μmの3種3層の多層フィルムを得た。この多層フィルムの層構成及び評価結果を表1に示した。この実施例2は実施例1に比べて接着層の厚みが薄くなっているが、耐ブロッキング性及び接着性(接着温度範囲、強度)は良好であった。

[56]

[実施例3]
 層構成が「接着層/Glue層/中間層/Glue層/外層」よりなる4種5層の多層フィルムである。接着層はCoPA1、Glue層はm-PE、中間層はLLDPEをそれぞれ単独で使用した。外層には実施例1と同じ原料を使用し、厚さ45μmの多層フィルムを得た。この多層フィルムの層構成、添加剤の添加質量割合(接着剤層全体を100質量%とした時の質量割合)及び評価結果を表1に示した。得られた多層フィルムも製膜性、外観は良好であり、接着層、耐ブロッキング性も良好であった。

[57]

[実施例4]
 接着層には、CoPA1を80質量%、アンチブロッキング剤「シルトンJC-70」を含むマスターバッチ(ベース樹脂:CoPA1)を20質量%採取し、ドライブレンドした原料を使用した以外は実施例3と同様にして厚さ45μmの多層フィルムを得た。この多層フィルムの層構成、添加剤の添加質量割合及び評価結果を表1に示した。接着層にアンチブロッキング剤が添加されたことにより、接着性を損なうことなく、耐ブロッキング性が一層の改善が図られた。

[58]

[実施例5]
 接着層には、CoPA1を90質量%、結晶核剤「ミクロエースP-8」を含むマスターバッチ(ベース樹脂:CoPA1)を10質量%採取し、ドライブレンドした原料を使用したこと以外は実施例3と同様にして厚さ45μmの多層フィルムを得た。この多層フィルムの層構成、添加剤の添加質量割合及び評価結果を表1に示した。結晶核剤が接着層に添加されたことでも接着性を損なうことなく、耐ブロッキング性が一層改善されていた。

[59]

[実施例6]
 接着層には、CoPA1を60質量%、結晶核剤「ミクロエースP-8」を含むマスターバッチ(ベース樹脂:CoPA1)を10質量%、アンチブロッキング剤「シルトンJC-70」を含むマスターバッチ(ベース樹脂:CoPA1)を30質量%採取し、ドライブレンドした原料を使用したこと以外は実施例3と同様にして厚さ45μmの多層フィルムを得た。この多層フィルムの層構成、添加剤の添加質量割合及び評価結果を表1に示した。接着層にアンチブロッキング剤と結晶核剤を併用することで耐ブロッキング性がより一層の改善が図られた。

[60]

[実施例7]
 接着層には、CoPA1を20.8質量%、CoPA2を39.2質量%、結晶核剤「ミクロエースP-8」を含むマスターバッチ(ベース樹脂:CoPA1)を10質量%、アンチブロッキング剤「シルトンJC-70」を含むマスターバッチ(ベース樹脂:CoPA1)を30質量%採取し、ドライブレンドした原料を使用したこと以外は実施例6と同様にして厚さ45μmの多層フィルムを得た。この多層フィルムの層構成、添加剤の添加質量割合及び評価結果を表1に示した。接着層にCoPA2(Tg=18℃の多元系共重合ポリアミド)を配合しても耐ブロッキング性及び接着性は良好であった。

[61]

[実施例8]
 中間層に、LLDPEとOBCをそれぞれ50質量%でドライブレンドした原料を用いたこと以外は実施例6と同様にして厚さ45μmの多層フィルムを得た。この多層フィルムの層構成、添加剤及び評価結果を表1に示した。中間層がLLDPEのみからなる多層フィルム(実施例6)よりも、中間層のLLDPEにOBC(Tg=-51℃のポリオレフィンブロックポリマー)を配合した実施例8は柔軟性が良好であった。

[62]

[実施例9]
 接着層には、CoPA1を11質量%、m-PEを49質量%、結晶核剤「ミクロエースP-8」を含むマスターバッチ(ベース樹脂:CoPA1)を10質量%、アンチブロッキング剤「シルトンJC-70」を含むマスターバッチ(ベース樹脂:CoPA1)を30質量%採取し、ドライブレンドした原料を用いた以外は実施例8と同様にして厚さ45μmの多層フィルムを得た。この多層フィルムの層構成、添加剤の添加質量割合及び評価結果を表1に示した。接着層の共重合ポリアミド(CoPA1)に変性ポリエチレン(m-PE)を配合しても製膜性、フィルムの外観は良好であり、尚且つ接着性、柔軟性も良好であった。

[63]

[実施例10]
 接着層には、CoPA1を40.4質量%、L-TPAEを19.6質量%、結晶核剤「ミクロエースP-8」を含むマスターバッチ(ベース樹脂:CoPA1)を10質量%、アンチブロッキング剤「シルトンJC-70」を含むマスターバッチ(ベース樹脂:CoPA1)を30質量%採取し、ドライブレンドした原料を用いた以外は実施例8と同様にして厚さ45μmの多層フィルムを得た。この多層フィルムの層構成、添加剤の添加質量割合及び評価結果を表1に示した。接着層の共重合ポリアミド(CoPA1)に低融点熱可塑性ポリアミドエラストマー(L-TPAE)を配合しても製膜性、フィルムの外観は良好であり、尚且つ接着性、柔軟性も良好であった。

[64]

[実施例11]
 接着層には、CoPA1を1.2質量%、m-PEを19.6質量%、L-TPAEを39.2質量%、結晶核剤「ミクロエースP-8」を含むマスターバッチ(ベース樹脂:CoPA1)を10質量%、アンチブロッキング剤「シルトンJC-70」を含むマスターバッチ(ベース樹脂:CoPA1)を30質量%採取し、ドライブレンドした原料を用いた以外は実施例8と同様にして厚さ45μmの多層フィルムを得た。この多層フィルムの層構成、添加剤の添加質量割合及び評価結果を表1に示した。接着層の共重合ポリアミド(CoPA1)に酸変性ポリエチレン(m-PE)と低融点熱可塑性ポリアミドエラストマーとを配合しても製膜性、フィルムの外観は良好であり、尚且つ接着性、柔軟性も良好であった。

[65]

[実施例12]
 接着層には、CoPA1を30.6質量%、CoPA3を29.4質量%、結晶核剤「ミクロエースP-8」を含むマスターバッチ(ベース樹脂:CoPA1)を10質量%、アンチブロッキング剤「シルトンJC-70」を含むマスターバッチ(ベース樹脂:CoPA1)を30質量%採取し、ドライブレンドした原料を用いた以外は実施例8と同様にして厚さ45μmの多層フィルムを得た。この多層フィルムの層構成、添加剤の添加質量割合及び評価結果を表1に示した。接着層の共重合ポリアミド(CoPA1)に多元系共重合ポリアミド(CoPA3)を配合しても製膜性、フィルムの外観は良好であり、尚且つ接着性、柔軟性も良好であった。

[66]

[比較例1]
 接着層のCoPA1に替えてL-TPAEを用いたこと以外は実施例3と同様にして多層フィルムを得た。この多層フィルムの層構成及び評価結果を表1に示したが、フィルム製膜段階でブロッキングが強く、剥離できなかったため、接着強度の評価ができなかった。尚、この時の接着層に用いたL-TPAE(プレスシート)のガラス転移温度は-43℃、融点は133℃であり、結晶化温度は99℃であった。

[67]

[比較例2]
 接着層の樹脂にL-TPAEを60質量%、結晶核剤「ミクロエースP-8」を含むマスターバッチ(ベース樹脂:L-TPAE)を10質量%、アンチブロッキング剤「シルトンJC-70」を含むマスターバッチ(ベース樹脂:L-TPAE)を30質量%採取し、ドライブレンドしたこと以外は実施例5と同様にして多層フィルムを得た。この多層フィルムの層構成、添加剤の添加質量割合及び評価結果を表1に示した。耐ブロッキング性、接着性は劣る結果であった。

[68]

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[69]

 表1の結果より明らかなように、接着層のガラス転移温度を特定の範囲にすることで、耐ブロッキング性が改善し、結晶核剤、アンチブロッキング剤を添加することで、耐ブロッキング性はより一層の改善が図られた。また、接着層の融点を特定の範囲にすることで接着のプロセスウィンドウが広がり、更には接着層中に含まれる樹脂として共重合ポリアミドを用いることで、接着強度にも優れた特性が得られた。

[70]

 本発明の多層フィルムは、フィルム製膜時のブロッキングが起こり難いことから安定的に生産が可能であり、合成繊維織物との接着性にも優れていることからエアバッグ用途に好適に用いることができる。

[71]

1・・・・多層サーキュラーダイ
2・・・・エアリング
3・・・・多層フィルム
3a・・・外面側(外層)
3b・・・内面側(接着層)
4・・・・デフレーター
5・・・・ピンチロール
6・・・・ガイドロール
7・・・・セロテープ
8・・・・接着層同士の重なり部
9・・・・ポリアミド66製基布
10・・・カプトン粘着テープ
11・・・チャック
12・・・加圧ロール(シリコンゴムラインニング)
13・・・加熱ロール(クロムメッキ加工)



[1]

The purpose of the present invention is to provide a multilayer film for air bags, which has achieved a good balance between adhesiveness and blocking properties. A multilayer film for air bags according to the present invention is characterized by comprising a bonding layer and an outer layer, and is also characterized in that: the bonding layer contains a resin which has a glass transition temperature of 0-80°C and a melting point of 100-160°C; and the outer layer contains a resin which has a melting point that is higher than the melting point of the resin in the bonding layer by 20°C or more. An air bag according to the present invention is characterized in that the bonding layer of this multilayer film for air bags and a synthetic fiber fabric are superposed on each other.



 接着層と外層とを含み、
 前記接着層は、ガラス転移温度が0~80℃、融点が100~160℃の樹脂を含み、
 前記外層が、前記接着層に含まれる前記樹脂の融点よりも20℃以上高い融点を有する樹脂を含むことを特徴とする、エアバッグ用多層フィルム。

 前記接着層に含まれる前記樹脂がポリアミド系樹脂である、請求項1に記載のエアバッグ用多層フィルム。

 前記ポリアミド系樹脂が共重合ポリアミドである、請求項2に記載のエアバッグ用多層フィルム。

 前記共重合ポリアミドが、ポリアミド12とポリアミド6との共重合体である、請求項3に記載のエアバッグ用多層フィルム。

 前記接着層100質量%に対して、前記共重合ポリアミドを10質量%以上含む、請求項3又は4に記載のエアバッグ用多層フィルム。

 前記接着層が、アンチブロッキング剤及び/又は結晶核剤をさらに含む、請求項1~5のいずれか1項に記載のエアバッグ用多層フィルム。

 前記接着層と前記外層の間に中間層を含み、前記中間層にはポリオレフィン系樹脂が含まれる、請求項1~6のいずれか1項に記載のエアバッグ用多層フィルム。

 請求項1~7のいずれか1項に記載のエアバッグ用多層フィルムの接着層と、合成繊維織物とが積層されたことを特徴とする、エアバッグ。

 前記合成繊維織物がポリアミド繊維又はポリエステル繊維である、請求項8に記載のエアバッグ。



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