IGNITION CONTROL SYSTEM FOR INTERNAL COMBUSTION ENGINE AND IGNITION CONTROL METHOD
この発明は、一次コイルおよび二次コイルを含む点火コイルを用いた内燃機関の点火に関し、特に、排気還流に伴う燃焼悪化を補うように重ね電圧の印加による重ね放電を行う点火制御装置および点火制御方法に関する。
点火コイルを用いた点火装置にあっては、一次コイルに一次電流を通電した後、所定の点火時期に一次電流を遮断することで、二次コイルに高い放電電圧を生成し、二次コイルに接続された点火プラグの電極間に放電を生じさせる。二次コイルに生じる放電電圧ならびに放電エネルギは、基本的には一次コイルへの通電時間に応じたものとなる。
特許文献1には、放電期間を長くして確実な着火を得るために、点火時期後の放電期間に重ねて、別の昇圧回路による重ね電圧を点火プラグに与える技術が開示されている。このものでは、点火コイルによる二次電圧によって電極間の放電が開始した後、重ね電圧によって放電電流が継続され、より大きなエネルギが混合気に与えられる。
排気系から吸気系に至る排気還流通路を用いた外部排気還流(外部EGR)あるいは吸気弁と排気弁のバルブオーバラップ量制御による内部排気還流(内部EGR)として、燃焼室内に比較的大量の還流排気の導入を行うことで、ポンピングロスの低減などによる燃料消費率の向上が得られることが知られている。しかし、このような排気還流は、同時に点火プラグによる着火性の低下を招来する。
本発明の目的は、上記重ね放電技術を利用して排気還流時の着火性の改善を図ると同時に、排気還流の有無もしくは大小が切り換わる過渡時に、重ね放電の実行・停止の切換を適切に行うことで、排気還流が切り換わる過渡時の失火や無駄なエネルギ消費を抑制することにある。
本発明は、点火コイルの一次コイルに一次電流を通電しかつ遮断することで、二次コイルに接続された点火プラグの電極間に放電電圧を発生させる内燃機関の点火制御装置において、
すなわち、本発明では、排気還流の有無もしくは大小に対応して、重ね放電実行領域と重ね放電停止領域とが設定されており、機関運転条件が重ね放電実行領域内にある場合には、排気還流の実行(あるいは高い排気還流率での排気還流)に併せて重ね放電が行われ、他方、機関運転条件が重ね放電停止領域内にある場合には、排気還流の停止(あるいは低い排気還流率での排気還流)とともに重ね放電も停止される。
ここで、重ね放電実行領域から重ね放電停止領域へと運転条件が変化したとき、あるいは逆に重ね放電停止領域から重ね放電実行領域へと運転条件が変化したときには、排気還流の制御状態が直ちに切り換えられるのに対し、重ね放電の実行・停止の切換は、所定の遅れ期間の後に行われる。
例えば、一方の領域から他方の領域への移行に伴い高排気還流率から低排気還流率へ(あるいは排気還流有りから排気還流無しへ)切り換わる場合、燃焼室内における実際の還流排気の減少は緩慢であり、直ちに重ね放電を停止すると、失火の懸念がある。特に、負荷低下に伴って重ね放電実行領域から重ね放電停止領域へ移行(つまり高排気還流率から低排気還流率へ移行)する場合には、燃焼室内に導入される新気が減少するため、緩慢に減少する還流排気によって一時的に排気還流率が上昇することがあり、失火が生じやすくなる。
これに対し、本発明では、所定の遅れ期間の間、重ね放電が引き続き行われるので、失火が防止される。
また、領域の移行に伴い低排気還流率から高排気還流率へ(あるいは排気還流無しから排気還流有りへ)切り換わる場合、燃焼室内における実際の還流排気の増加は緩慢であり、従って、直ちに重ね放電を開始すると、放電エネルギを無駄に消費することとなる。
これに対し、本発明では、所定の遅れ期間の後、重ね放電が開始されるので、放電エネルギの無駄が抑制される。
好ましい一つの態様では、燃焼室における排気還流の状態が移行後の運転条件に対応した定常状態に達するまでに要する排気還流過渡期間の全体を、上記の遅れ期間とすることができる。
また他の好ましい一つの態様では、上記の排気還流過渡期間の途中で遅れ期間が終了するようにしてもよい。
本発明によれば、排気還流に伴う着火性の低下を重ね放電によって補うことができ、特に、排気還流の有無もしくは大小に対応した重ね放電実行領域と重ね放電停止領域との間での運転条件の変化に対し、失火をより確実に回避できるとともに、無駄な放電エネルギの消費を抑制することができる。
以下、この発明の一実施例を図面に基づいて詳細に説明する。
図1は、この発明に係る点火制御装置を備えた内燃機関1全体の構成を示す構成説明図であって、この内燃機関1の吸気通路2には、上流側から順に、エアクリーナ3、エアフロメータ4、スロットル弁5、がそれぞれ配置されている。内燃機関1の排気通路6には、上流側から順に、上流側触媒コンバータ7、下流側触媒コンバータ8、消音器9、がそれぞれ配置されている。上記上流側触媒コンバータ7の前後には、上流側空燃比センサ10および下流側空燃比センサ11がそれぞれ配置されている。そして、上記排気通路6の上流側触媒コンバータ7と下流側触媒コンバータ8との間から排気還流通路13が分岐しており、この排気還流通路13の先端が、吸気通路2のスロットル弁5下流側、詳しくはコレクタ部2aに接続されている。上記コレクタ部2aは、比較的大きな容積を有し、各気筒毎に分岐した下流側の複数本のブランチ部2bがこのコレクタ部2aに集合している。
上記排気還流通路13には、排気還流量を制御するために排気還流制御弁14が介装されており、その上流側(排気系側)には、高温の排気を冷却水や外気との熱交換により冷却するEGRガスクーラ15が設けられている。
図2は、上記内燃機関1の点火装置の構成を示している。内燃機関1の複数のシリンダ22の各々には、ピストン23が配置されているとともに、吸気弁24によって開閉される吸気ポート25および排気弁26によって開閉される排気ポート27がそれぞれ接続されている。上記の吸気通路2および排気通路6は上記吸気ポート25および排気ポート27にそれぞれ接続されている。また、内燃機関1は、筒内に燃料を噴射供給する燃料噴射弁28を備えている。この燃料噴射弁28の燃料噴射時期および燃料噴射量は、エンジンコントロールユニット(ECU)30によって制御される。そして、上記燃料噴射弁28によって筒内に生成された混合気の点火を行うために、例えば天井面中央に点火プラグ29が配置されている。なお、図示例は、筒内直接噴射式内燃機関として構成されているが、吸気ポート25に燃料噴射弁を配置したポート噴射型の構成であってもよい。
上記エンジンコントロールユニット30には、吸入空気量を検出するエアフロメータ4や空燃比センサ10,11(図1参照)、機関回転速度を検出するクランク角センサ32、冷却水温を検出する温度センサ33、などの多数のセンサ類からの検出信号が入力されている。
上記点火プラグ29には、エンジンコントロールユニット30からの点火信号に応答して点火プラグ29に放電電圧を出力する点火ユニット41が接続されている。また、エンジンコントロールユニット30からの重ね電圧要求信号に応答して点火ユニット41による重ね電圧を制御する重ね電圧制御ユニット42が設けられている。これらのエンジンコントロールユニット30、点火ユニット41、および重ね電圧制御ユニット42は、車載の14ボルトのバッテリ43に接続されている。
上記点火ユニット41は、図3に詳細を示すように、一次コイルおよび二次コイル(図示せず)を含む点火コイル45と、この点火コイル45の一次コイルに対する一次電流の通電・遮断を制御するイグナイタ46と、昇圧回路を含む重ね電圧生成回路47と、を含んでおり、上記点火コイル45の二次コイルに点火プラグ29が接続されている。重ね電圧生成回路47は、バッテリ43の電圧を所定の重ね電圧の電圧まで昇圧した上で、重ね電圧制御ユニット42の制御信号に基づいて、点火プラグ29の放電開始後に該点火プラグ29に対し重ね電圧を出力する。なお、重ね電圧生成回路47は、一次コイルへの一次電流遮断時に点火プラグ29の電極間に生じる本来の放電電圧と同じ電位の方向に重ね電圧を生成する。
図4は、重ね電圧の有無による二次電流(放電電流)の変化を説明するものであり、重ね電圧の非供給時と供給時について、一次電流(一次コイル通電信号)、重ね電圧、二次電圧、二次電流、のそれぞれの波形をまとめて図示している。
重ね電圧の非供給時には、一般的な点火装置と同様の作用となる。すなわち、点火コイル45の一次コイルに、イグナイタ46を介して所定の通電時間の間、一次電流が通電される。この一次電流の遮断に伴って、二次コイルには高い放電電圧が発生し、混合気の絶縁破壊を伴って点火プラグ29の電極間で放電が生じる。そして、電極間に流れる二次電流は、放電開始から時間経過に伴って三角波状に比較的急激に減少していく。
これに対し、重ね電圧の供給時には、一次電流の遮断とほぼ同時に重ね電圧の供給が開始され、かつ所定の期間、一定の重ね電圧が重畳される。これにより、図示するように、放電開始から比較的長い期間、二次電流が高いレベルに維持され、重ね放電として、より長く放電が継続する。
本発明の実施例においては、内燃機関1の負荷および回転速度から定まる運転領域によって、排気還流に対応した形で、重ね電圧を供給するか否かが決定される。図5に模式的に示すように、低中速・中負荷域が重ね電圧の供給を行う重ね放電実行領域となっており、これ以外の高負荷域、低負荷域および高速域は、重ね放電の供給を行わない重ね放電停止領域となっている。上記重ね放電停止領域は、排気還流通路13を介した排気還流(いわゆる外部EGR)を行わない運転領域もしくは排気還流率が低く設定されている運転領域に相当する。これに対し、上記重ね放電実行領域は、相対的に高い排気還流率でもって排気還流が行われる運転領域に相当する。
スロットル弁5を具備した火花点火内燃機関では、燃焼室内に比較的大量の還流排気の導入を行うことで、ポンピングロスの低減などによる燃料消費率の向上が得られるが、その反面、不活性ガスである還流排気により着火性が低下する。しかし、上記のように高排気還流率での排気還流を行う際に重ね電圧の供給による重ね放電を行うことで、良好な着火性が得られる。
ところで、図5に矢印で示すように、運転者のアクセルペダル操作などにより重ね放電実行領域内のA点から重ね放電停止領域内のB点へと機関の負荷が低下すると、目標とする排気還流率が高排気還流率から低排気還流率(あるいは0)へと変化し、かつこれと併せて、重ね放電の実行・停止の切換が行われる。このとき、本発明では、重ね放電の実行・停止の切換に所定の遅れ期間が与えられる。
図6は、機関運転条件が図5のA点からB点へと移行した過渡時における、負荷、排気還流率、および重ね電圧のON・OFF(供給・実行)を対比して示したタイムチャートである。この例では、時間t1において重ね放電実行領域から重ね放電停止領域へと運転条件が変化し、排気還流制御弁14の開度が急激に減少する。つまり、目標とする排気還流率がステップ的に変化する。しかし、実際の排気還流率は、比較的緩慢に変化し、時間t2において、移行後のB点の目標排気還流率に到達する。なお、本発明では、この時間t1からt2までの期間TL、つまり排気還流の状態が領域移行後の運転条件に対応した定常状態に達するまでに要する期間TLを、「排気還流過渡期間」と呼ぶ。
ここで、特に図5に示す態様の過渡変化においては、上記の排気還流過渡期間TLの初期に実際の排気還流率が逆に増加する現象が生じる。つまり、図1に例示したように、排気還流制御弁14よりも下流に排気還流通路13の一部やコレクタ部2a等の比較的大きな容積があり、ここに存在していた排気が排気還流制御弁14の開度減少(あるいは閉弁)後に遅れて燃焼室内に流入する。そして、同時に負荷低下(換言すればスロットル弁5開度の減少)に伴って新気量が減少するので、燃焼室内の排気還流率が一時的に高くなる。従って、仮に領域の移行と同時に時間t1において重ね放電を停止したとすると、過大な排気還流率によって失火に至る懸念がある。
このような失火を回避するために、図6に示す実施例では、上記の排気還流過渡期間TLと実質的に等しい遅れ期間ΔTが重ね電圧のON・OFFの切換に与えられる。つまり、遅れ期間ΔTが経過するまで重ね放電が継続され、遅れ期間ΔTの経過時(実質的に時間t2と等しい時期)に重ね放電が停止される。
また、図7は、遅れ期間ΔTの設定の異なる実施例を示しており、この例では、遅れ期間ΔTが排気還流過渡期間TLよりも多少短く設定される。つまり、排気還流率が移行後の運転条件に対応した定常状態となる時間t2よりも早い時間t3において、重ね放電が終了する。この場合の遅れ期間ΔTは、重ね放電を終了しても失火が生じないレベルまで実際の排気還流率が低下する時期に対応して設定される。
従って、図6の例では、より確実に失火が回避される。また、図7の例では、過渡初期の失火を回避しつつ図6の例に比べて放電エネルギを抑制することができる。
ここで、上記の遅れ期間ΔTの間に加えられる重ね放電の放電エネルギの設定としては、時間t1以前の放電エネルギと同レベルとなるように設定してもよく、あるいは、排気還流率の上昇に伴う失火をより確実に回避するように時間t1以前の放電エネルギよりも高いレベルに設定するようにしてもよい。この放電エネルギの具体的な変更方法については後述する。
次に、図8~図10に基づき、負荷低下に伴って重ね放電停止領域内のC点から重ね放電実行領域内のD点へと移行(図8の矢印参照)したときの作用を説明する。
このような場合、時間t1における運転領域の移行に伴って目標排気還流率が低排気還流率(もしくは0)から高排気還流率へと変化するが、燃焼室内における実際の排気還流率の変化は図9,10に示すように緩慢に生じ、時間t2において目標とする高排気還流率に達する。従って、仮に時間t1において重ね放電を開始すると、不必要に重ね放電を行うこととなり、放電エネルギの無駄が生じる。
そのため、図9の例では、前述した図6の例と同様に、時間t1~t2の排気還流過渡期間TLと実質的に等しい遅れ期間ΔTが重ね電圧のON・OFFの切換に与えられる。つまり、時間t2まで重ね放電を行わず、実際に高排気還流率となる時間t2において重ね放電が開始される。
また、図10の例では、前述した図7の例と同様に、遅れ期間ΔTが排気還流過渡期間TLよりも多少短く設定されており、排気還流率が移行後の運転条件に対応した定常状態となる時間t2よりも早い時間t3において、重ね放電が開始される。
従って、図9の例では、放電エネルギの削減が最大限に図れる。また、図10の例では、放電エネルギを抑制しつつ、排気還流率が移行後の運転条件下での高排気還流率に近付いた段階での失火を確実に回避することができる。
ここで、図10の例において時間t3~t2の間に加えられる重ね放電の放電エネルギの設定としては、時間t2以後の放電エネルギと同レベルとなるように設定してもよく、あるいは、放電エネルギの無駄が生じないように時間t2以後の放電エネルギよりも低いレベルに設定するようにしてもよい。
次に、図11~図13に基づき、負荷上昇に伴って重ね放電停止領域内のB点から重ね放電実行領域内のA点へと移行(図11の矢印参照)したときの作用を説明する。
このような場合、時間t1における運転領域の移行に伴って目標排気還流率が低排気還流率(もしくは0)から高排気還流率へと変化するが、燃焼室内における実際の排気還流率の変化は図12,13に示すように緩慢に生じ、時間t2において目標とする高排気還流率に達する。特に、負荷上昇に伴い新気量が増大するので、燃焼室内の実際の排気還流率は一時的にさらに低下し、その後、徐々に高くなっていく。従って、仮に時間t1において重ね放電を開始すると、不必要に重ね放電を行うこととなり、放電エネルギの無駄が生じる。
そのため、図12の例では、前述した図9の例と同様に、時間t1~t2の排気還流過渡期間TLと実質的に等しい遅れ期間ΔTが重ね電圧のON・OFFの切換に与えられる。つまり、時間t2まで重ね放電を行わず、実際に高排気還流率となる時間t2において重ね放電が開始される。
また、図13の例では、前述した図10の例と同様に、遅れ期間ΔTが排気還流過渡期間TLよりも多少短く設定されており、排気還流率が移行後の運転条件に対応した定常状態となる時間t2よりも早い時間t3において、重ね放電が開始される。
従って、図12の例では、放電エネルギの削減が最大限に図れる。また、図13の例では、放電エネルギを抑制しつつ、排気還流率が移行後の運転条件下での高排気還流率に近付いた段階での失火を確実に回避することができる。
ここで、図13の例において時間t3~t2の間に加えられる重ね放電の放電エネルギの設定としては、前述した図10の場合と同様に、時間t2以後の放電エネルギと同レベルとなるように設定してもよく、あるいは、放電エネルギの無駄が生じないように時間t2以後の放電エネルギよりも低いレベルに設定するようにしてもよい。
次に、図14~図16に基づき、負荷上昇に伴って重ね放電実行領域内のD点から重ね放電停止領域内のC点へと移行(図14の矢印参照)したときの作用を説明する。
このような場合、時間t1における運転領域の移行に伴って目標排気還流率が高排気還流率から低排気還流率(もしくは0)へと変化するが、燃焼室内における実際の排気還流率の変化は図15,16に示すように緩慢に生じ、時間t2において目標とする低排気還流率に達する。なお、負荷上昇に伴い新気が増えるので図6,図7で説明したような一時的な排気還流率の上昇は生じないが、それでも、排気還流率の低下は緩慢である。従って、仮に時間t1において重ね放電を開始すると、やはり失火の懸念がある。
そのため、図15の例では、前述した図6の例と同様に、時間t1~t2の排気還流過渡期間TLと実質的に等しい遅れ期間ΔTが重ね電圧のON・OFFの切換に与えられる。つまり、時間t2まで重ね放電が継続され、実際に低排気還流率となる時間t2において重ね放電が停止される。
また、図16の例では、前述した図7の例と同様に、遅れ期間ΔTが排気還流過渡期間TLよりも多少短く設定されており、排気還流率が移行後の運転条件に対応した定常状態となる時間t2よりも早い時間t3において、重ね放電が停止される。
従って、図15の例では、図6の例と同じくより確実に失火が回避される。また、図16の例では、図7の例と同じく、過渡初期の失火を回避しつつ図15の例に比べて放電エネルギを抑制することができる。
ここで、上記の遅れ期間ΔTの間に加えられる重ね放電の放電エネルギの設定としては、前述したように、時間t1以前の放電エネルギと同レベルとなるように設定してもよく、あるいは、時間t1以前の放電エネルギよりも高いレベルに設定するようにしてもよい。
上述した各実施例での放電エネルギの設定は、図17に示すように、重ね電圧を供給する時間あるいは印加される重ね電圧の電圧値を変更することによって変更することができる。
図17は、図4と同様に、一次電流(一次コイル通電信号)、重ね電圧、二次電圧、二次電流、のそれぞれの波形を対比して示したものであり、左列は、基本的な重ね放電の特性を示している。これに対し、中央列は、重ね電圧の供給時間を長くした例であり、これにより、二次電流がより長い時間、高いレベルで継続する。従って、混合気に投入される放電エネルギが大となる。右列は、基本的な特性に比較して重ね電圧の電圧値を高くした例であり、これにより、二次電流がより高いレベルに得られる。従って、やはり混合気に投入される放電エネルギが大となる。なお、ここでは放電エネルギを増大する例を説明しているが、図10の例などで放電エネルギを低いレベルに変更する場合も同様である。
なお、上記の各実施例における遅れ期間ΔTは、固定的に定めた一定期間(一定時間もしくは一定クランク角など)であってもよく、あるいは、機関運転条件(負荷および回転速度)を考慮して、各運転条件毎に最適に定めた期間であってもよい。
また、排気還流率の高低や排気還流の有無が例えば内燃機関1の温度条件等によって異なる場合には、重ね放電実行領域および重ね放電停止領域は、やはり温度条件等を考慮して、実際の排気還流の設定に対応するように設定される。
さらに、上記実施例では、還流排気導入のために、排気還流通路13を含むいわゆる外部排気還流装置を用いているが、吸気弁24と排気弁26のバルブオーバラップ量制御によるいわゆる内部排気還流制御によって排気還流を行う場合にも、本発明は同様に適用可能である。なお、外部排気還流装置の方が、排気還流制御弁14下流の容積の影響が大であり、例えば失火防止のためにより長い遅れ期間ΔTが必要となる。
This ignition device for an internal combustion engine (1) has an overlap voltage generation circuit (47) which, after the start of discharge by a secondary coil, applies a discharge voltage and an overlap voltage of the same direction between the electrodes of an ignition plug (29) and continues a discharge current, and creates overlap discharge in an overlap discharge region corresponding to a high exhaust gas recirculation rate. When the engine load decreases and moves from the overlap discharge region with high exhaust gas recirculation rate to an overlap discharge stopping region with low exhaust gas recirculation rate, a delay period ΔT is provided for stopping the overlap discharge. After an exhaust recirculation control valve closes, the exhaust gas recirculation rate temporarily increases due to the decrease in fresh air, but misfires can be prevented since the overlap discharge is continued during the delay period ΔT.
点火コイルの一次コイルに一次電流を通電しかつ遮断することで、二次コイルに接続された点火プラグの電極間に放電電圧を発生させる内燃機関の点火制御装置において、
燃焼室における排気還流の状態が移行後の運転条件に対応した定常状態に達するまでに要する排気還流過渡期間の全体を、上記の遅れ期間とした、請求項1に記載の内燃機関の点火制御装置。
燃焼室における排気還流の状態が移行後の運転条件に対応した定常状態に達するまでに要する排気還流過渡期間の途中で、上記の遅れ期間が終了するようにした、請求項1に記載の内燃機関の点火制御装置。
負荷低下に伴って重ね放電実行領域から重ね放電停止領域へと移行するときに、上記遅れ期間の間における重ね放電の放電エネルギを、移行前の重ね放電の放電エネルギと同レベルとする、請求項1~3のいずれかに記載の内燃機関の点火制御装置。
負荷低下に伴って重ね放電実行領域から重ね放電停止領域へと移行するときに、上記遅れ期間の間における重ね放電の放電エネルギを、移行前の重ね放電の放電エネルギよりも高いレベルとする、請求項1~3のいずれかに記載の内燃機関の点火制御装置。
負荷低下に伴って重ね放電停止領域から重ね放電実行領域へと移行するときに、上記排気還流過渡期間の途中で開始される重ね放電の放電エネルギを、移行後の重ね放電の放電エネルギと同レベルとする、請求項3に記載の内燃機関の点火制御装置。
負荷低下に伴って重ね放電停止領域から重ね放電実行領域へと移行するときに、上記排気還流過渡期間の途中で開始される重ね放電の放電エネルギを、移行後の重ね放電の放電エネルギよりも低いレベルとする、請求項3に記載の内燃機関の点火制御装置。
負荷上昇に伴って重ね放電停止領域から重ね放電実行領域へと移行するときに、上記排気還流過渡期間の途中で開始される重ね放電の放電エネルギを、移行後の重ね放電の放電エネルギと同レベルとする、請求項3に記載の内燃機関の点火制御装置。
負荷上昇に伴って重ね放電停止領域から重ね放電実行領域へと移行するときに、上記排気還流過渡期間の途中で開始される重ね放電の放電エネルギを、移行後の重ね放電の放電エネルギよりも低いレベルとする、請求項3に記載の内燃機関の点火制御装置。
負荷上昇に伴って重ね放電実行領域から重ね放電停止領域へと移行するときに、上記遅れ期間の間における重ね放電の放電エネルギを、移行前の重ね放電の放電エネルギと同レベルとする、請求項1~3のいずれかに記載の内燃機関の点火制御装置。
負荷上昇に伴って重ね放電実行領域から重ね放電停止領域へと移行するときに、上記遅れ期間の間における重ね放電の放電エネルギを、移行前の重ね放電の放電エネルギよりも低いレベルとする、請求項1~3のいずれかに記載の内燃機関の点火制御装置。
点火コイルの一次コイルに一次電流を通電しかつ遮断することで、二次コイルに接続された点火プラグの電極間に放電電圧を発生させる内燃機関の点火制御方法において、
上記二次コイルによる放電開始後に上記点火プラグの電極間に上記放電電圧と同方向の重ね電圧を加えて放電電流を継続させる重ね電圧生成回路を有し、
内燃機関の運転条件に対し、排気還流の有無もしくは大小に対応して、上記重ね電圧生成回路による重ね電圧の供給を行う重ね放電実行領域と、重ね電圧の供給を行わない重ね放電停止領域と、が設定されており、
上記の2つの領域の一方から他方へ移行する過渡時に、重ね放電の実行・停止の切換に所定の遅れ期間を与える。
上記二次コイルによる放電開始後に上記点火プラグの電極間に上記放電電圧と同方向の重ね電圧を加えて放電電流を継続させる重ね電圧生成回路を有し、
内燃機関の運転条件に対し、排気還流の有無もしくは大小に対応して、上記重ね電圧生成回路による重ね電圧の供給を行う重ね放電実行領域と、重ね電圧の供給を行わない重ね放電停止領域と、が設定されており、
上記の2つの領域の一方から他方へ移行する過渡時に、重ね放電の実行・停止の切換に所定の遅れ期間を与える、内燃機関の点火制御装置。
内燃機関の運転条件に対し、排気還流の有無もしくは大小に対応して、重ね電圧の供給を行う重ね放電実行領域と重ね電圧の供給を行わない重ね放電停止領域とを設定し、
上記重ね放電実行領域では、上記二次コイルによる放電開始後に上記点火プラグの電極間に上記放電電圧と同方向の重ね電圧を加えて放電電流を継続させる重ね放電を行い、
上記の2つの領域の一方から他方へ移行する過渡時には、重ね放電の停止・実行の切換に所定の遅れ期間を与える、内燃機関の点火制御方法。
















