ELECTRONIC COMPONENT PROCESSING FILM AND ELECTRONIC COMPONENT PROCESSING METHOD

25-02-2021 дата публикации
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WO2021033715A1
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Номер заявки: JP12-03-202073
Дата заявки: 19-08-2020

電子部品加工フィルム及び電子部品加工方法
[1]

 本開示は、電子部品加工フィルム及び電子部品加工方法に関する。

[2]

 半導体チップ、セラミックコンデンサ等の電子部品の製造方法において、延伸性を有するフィルムの上に配置したウエハを所望のサイズに個片化(ダイシング)した後、フィルムを延伸してチップ間の距離を拡げ、チップをピックアップする工程が従来より行われている。

[3]

 近年、電子部品の加工技術の多様化が進み、個片化されたチップの加工を延伸したフィルム上で行う技術が検討されている。このため、チップのピックアップを目的とする場合よりもチップ間の間隔を拡げることができるフィルムの開発が検討されている。例えば、国際公開第2018/216621号には、フィルム上の個片化されたチップの間隔を100μm以下から300μm以上に拡げる工程を備える半導体装置の製造方法、及びこの方法に用いられるフィルムが提案されている。

[4]

 フィルムの延伸性を改善する手法としては、可塑剤を添加することが考えられる。しかしながら、可塑剤として一般的に使用されるフタル酸ビス(2-エチルヘキシル)等のフタル酸エステルは、生体への影響が懸念されている。したがって、フタル酸エステルを添加したフィルムと同等の特性を有し、かつフタル酸エステルを別の可塑剤に置き換えたフィルムの開発が望まれている。

[5]

 上記事情に鑑み、本開示の一態様は、延伸性及び生体親和性に優れる電子部品加工フィルム、並びにこの電子部品加工フィルムを用いた電子部品加工方法を提供することを課題とする。

[6]

 さらに、電子部品装置の高機能化及び高集積化にともなって、チップの小型化が進んでいる。このため、フィルムの延伸倍率が大きくなるにつれてフィルムからのチップの脱落が問題となりつつある。

[7]

 上記事情に鑑み、本開示の一態様は、延伸した際のチップの脱落が抑制される電子部品加工フィルムを提供することを課題とする。本開示の別の一態様は、この電子部品加工フィルムを用いた電子部品加工方法を提供することを課題とする。

[8]

 上記課題を提供するための具体的な手段には、以下の実施態様が含まれる。
<1>粘着層と基材層とを備え、前記粘着層はテレフタル酸エステルを含み、前記基材層は脂肪族ジカルボン酸とグリコールとの反応生成物を含む、電子部品加工フィルム。
<2>粘着層と基材層とを備え、タック力が40gf以上であり、かつSUS粘着力が1.1N/25mm以上である電子部品加工フィルム。
<3>粘着層と基材層とを備え、前記粘着層の厚みが12μm以上である、電子部品加工フィルム。
<4>前記粘着層はアクリル系粘着剤を含む、<1>~<3>のいずれか1項に記載の電子部品加工フィルム。
<5>前記基材層はポリ塩化ビニルを含む、<1>~<4>のいずれか1項に記載の電子部品加工フィルム。
<6>前記基材層は着色剤を含み、前記着色剤の最大粒子径が25μm以下である、<1>~<5>のいずれか1項に記載の電子部品加工フィルム。
<7>引張強さが20MPa以上である、<1>~<6>のいずれか1項に記載の電子部品加工フィルム。
<8>引張伸び率が200%以上である、<1>~<7>のいずれか1項に記載の電子部品加工フィルム。
<9><1>~<8>のいずれか1項に記載の電子部品加工フィルムの上に個片化された電子部品が配置された状態で前記電子部品加工フィルムを延伸する工程を含む、電子部品加工方法。
<10>前記電子部品加工フィルムを延伸する工程の後、前記電子部品加工フィルムの上で電子部品の加工を行う、<9>に記載の電子部品加工方法。

[9]

 本開示の一態様によれば、延伸性及び生体親和性に優れる電子部品加工フィルムが提供される。本開示の一態様によれば、延伸した際のチップの脱落が抑制される電子部品加工フィルムが提供される。本開示の一態様によれば、これらの電子部品加工フィルムを用いた電子部品加工方法が提供される。

[10]

引張試験で使用する試験片の形状を示す図である。

[11]

 以下、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。但し、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
 以下の実施形態において、その構成要素(要素ステップ等も含む)は、特に明示した場合を除き、必須ではない。数値及びその範囲についても同様であり、本発明を制限するものではない。
 本開示において「工程」との語には、他の工程から独立した工程に加え、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の目的が達成されれば、当該工程も含まれる。
 本開示において「~」を用いて示された数値範囲には、「~」の前後に記載される数値がそれぞれ最小値及び最大値として含まれる。
 本開示中に段階的に記載されている数値範囲において、一つの数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本開示中に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
 本開示において各成分は該当する物質を複数種含んでいてもよい。組成物中に各成分に該当する物質が複数種存在する場合、各成分の含有率又は含有量は、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数種の物質の合計の含有率又は含有量を意味する。

[12]

<第1実施形態>
 本開示の第1実施形態は、粘着層と基材層とを備え、前記粘着層はテレフタル酸エステルを含み、前記基材層は脂肪族ジカルボン酸とグリコールとの反応生成物を含む、電子部品加工フィルムである。

[13]

 上記構成の電子部品加工フィルムは、可塑剤としてテレフタル酸エステルを用いるため、生体親和性に優れている。また上記構成の電子部品加工フィルムは、可塑剤としてフタル酸エステルを用いる電子部品加工フィルムと同等の延伸性を有する。

[14]

 さらに、上記構成の電子部品加工フィルムは、粘着層及び基材層のそれぞれに可塑剤としてフタル酸エステル又はテレフタル酸エステルを用いる電子部品加工フィルムに比べて経時粘着力安定性に優れていること、並びに、粘着層及び粘着層のそれぞれに可塑剤として脂肪族ジカルボン酸とグリコールとの反応生成物を用いる電子部品加工フィルムに比べて粘着層と基材層との間の密着性(層間密着性)に優れていることがわかった。

[15]

(粘着層)
 電子部品加工フィルムの粘着層は、テレフタル酸エステルを含むものであれば特に制限されない。
 テレフタル酸エステルの種類は特に制限されない。例えば、テレフタル酸のベンゼン環に2つのエステル基を介してアルキル基(好ましくは炭素数5~10のアルキル基)が結合したもの(フタル酸ジアルキルエステル)が挙げられる。具体的には、テレフタル酸ビス(2-エチルヘキシル)等が挙げられる。粘着層に含まれるテレフタル酸エステルは、1種のみでも2種以上であってもよい。

[16]

 粘着層に含まれるテレフタル酸エステルの含有率は、例えば、粘着層に含まれる粘着剤の固形分100質量部に対して5質量部~35質量部であることが好ましく、10質量部~20質量部であることがより好ましく、15質量部~25質量部であることがさらに好ましい。

[17]

 テレフタル酸エステルの含有率が粘着剤の固形分100質量部に対して5質量部以上(好ましくは15質量部~25質量部)であると、充分な経時粘着力安定性が得られる傾向にある。テレフタル酸エステルの含有率が粘着剤の固形分100質量部に対して35質量部以下であると、電子部品への粘着層の残存(糊残り)が抑制される傾向にある。

[18]

 必要に応じ、粘着層はテレフタル酸エステル以外の可塑剤を含んでもよい。この場合、可塑剤全体に占めるテレフタル酸エステルの割合は50質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがより好ましく、80質量%以上であることがさらに好ましい。
 粘着層が可塑剤としてフタル酸エステルを含む場合、可塑剤全体に占めるフタル酸エステルの割合は20質量%以下であることが好ましく、10質量%以下であることがより好ましく、5質量%以下であることがさらに好ましい。

[19]

 粘着層は、粘着剤を含むことが好ましい。粘着剤の種類は特に制限されず、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ウレタン系粘着剤等の公知の粘着剤から選択できる。中でも特性の安定性の観点からは、アクリル系粘着剤を含むことが好ましい。

[20]

 アクリル系粘着剤としては、一定以上の粘着特性を確保するために、ガラス転移温度が低い(例えば、-20℃以下)のモノマーを共重合成分に含む共重合体(アクリル共重合体)が好ましい。ガラス転移温度が-20℃以下のアクリルモノマーとしては、ブチルアクリレート、エチルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート等が挙げられる。上記ガラス転移温度は、当該モノマーを用いて得られるホモポリマーのガラス転移温度である。

[21]

 粘着層の電子部品への移行を抑制する観点からは、アクリル共重合体の分子量は大きいことが好ましい。例えば、重量平均分子量が100万以上であることが好ましい。アクリル共重合体の分子量の上限は特に制限されないが、粘着性を確保する観点からは重量平均分子量が500万以下であることが好ましい。

[22]

 必要に応じ、粘着層は架橋剤を含んでもよい。架橋剤としては、イソシアネート系架橋剤、メラミン系架橋剤、過酸化物系架橋剤、金属アルコキシド系架橋剤、金属キレート系架橋剤、金属塩系架橋剤、カルボジイミド系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤、アジリジン系架橋剤、アミン系架橋剤等が挙げられる。中でも安定した粘着特性の観点からは、イソシアネート系架橋剤が好ましい。粘着層に含まれる架橋剤は、1種のみでも2種以上であってもよい。

[23]

 粘着層に含まれる架橋剤の含有率は、例えば、粘着層に含まれる粘着剤の固形分100質量部に対して0.5質量部~20質量部であってもよく、1質量部~15質量部であってもよく、2質量部~10質量部であってもよい。

[24]

 必要に応じ、粘着層はタッキファイヤー、界面活性剤、フィラー等を含んでもよい。

[25]

 チップのピックアップを容易にする観点からは、粘着層は、紫外線、放射線等の高エネルギー線、又は熱によって粘着力が低下する性質を有していてもよい。例えば、粘着剤として紫外線、放射線等の高エネルギー線照射、加熱などによって硬化する性質のものを用いることで、粘着層の粘着力を低下させてもよい。

[26]

 粘着層の厚さは、チップに対する充分な粘着力を確保する観点からは1μm以上であることが好ましく、5μm以上であることがより好ましく、10μm以上であることがさらに好ましい。経済性の観点からは、粘着層の厚さは100μm以下であることが好ましく、50μm以下であることがより好ましい。

[27]

 必要に応じ、粘着層の外表面(基材層に対向する側と逆側の面)にはセパレータ等が配置されていてもよい。

[28]

(基材層)
 電子部品加工フィルムの基材層は、脂肪族ジカルボン酸とグリコールとの反応生成物を含むものであれば特に制限されない。グリコールと反応させる脂肪族ジカルボン酸としてはアジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸等が挙げられ、脂肪族ジカルボン酸と反応させるグリコールとしては1,2-プロパンジオール、ブタンジオール等が挙げられる。これらの中でもアジピン酸とグリコールとの反応生成物(アジピン酸系ポリエステル)が好ましい。

[29]

 脂肪族ジカルボン酸とグリコールとの反応生成物の分子量は特に制限されない。例えば、500~3,000の範囲内であってもよい。基材層に含まれる脂肪族ジカルボン酸とグリコールとの反応生成物は、1種のみでも2種以上であってもよい。

[30]

 基材層に含まれる脂肪族ジカルボン酸とグリコールとの反応生成物の含有率は、例えば、基材層の固形分全体の30質量%~60質量%であることが好ましく、35質量%~55質量%であることがより好ましく、40質量%~45質量%であることがさらに好ましい。

[31]

 脂肪族ジカルボン酸とグリコールとの反応生成物の含有率が基材層の固形分全体の30質量%以上であると、充分な延伸性が得られる傾向にある。

[32]

 必要に応じ、基材層は脂肪族ジカルボン酸とグリコールとの反応生成物以外の可塑剤を含んでもよい。この場合、可塑剤全体に占める脂肪族ジカルボン酸とグリコールとの反応生成物の割合は50質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがより好ましく、80質量%以上であることがさらに好ましい。

[33]

 良好な延伸性を得る観点からは、基材層は熱可塑性樹脂を含むことが好ましい。
 熱可塑性樹脂としては、ポリ塩化ビニル、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリイミド、ポリウレタン等が挙げられ、中でも延伸性の観点からは、ポリ塩化ビニルが好ましい。

[34]

 加工の際の視認性向上の観点から、基材層は着色剤を含んでもよい。
 着色剤としては染料、顔料等が挙げられ、耐久性の観点からは顔料が好ましい。
 着色剤の色は黒以外の色であることが好ましく、青色であることがより好ましい。
 着色剤として具体的には、アルカリブルー、ジスアゾエロー、フタロシアニンブルー、紺青、群青、コバルト青等が挙げられる。

[35]

 着色剤が粒子状である場合、その最大粒子径が基材層の延伸時の厚さより小さいことが好ましい。基材層に含まれる着色剤の最大径が基材層の延伸時の厚さより小さいと、基材層を延伸したときの着色剤の基材層からの脱落が抑制され、電子部品加工装置のメンテナンスの点で有利である。具体的には、例えば、着色剤の最大粒子径は25μm以下であることが好ましく、20μm以下であることがより好ましく、10μm以下であることがより好ましい。
 本開示において着色剤の「最大粒子径」は、着色剤の粒子(好ましくは100個以上)の投影像から得られる個々の粒子の最大径(投影像の径が最長となるときの長さ)の最大値とする。

[36]

 基材層に含まれる着色剤の含有率は、例えば、基材層の固形分全体の0.1質量%~2.0質量%であることが好ましく、0.2質量%~1.5質量%であることがより好ましく、0.3質量%~1.0質量%であることがさらに好ましい。

[37]

 基材層の厚さは、充分な強度を確保する観点からは10μm以上であることが好ましく、20μm以上であることがより好ましく、50μm以上であることがさらに好ましい。充分な延伸性を確保する観点からは、基材層の厚さは500μm以下であることが好ましく、200μm以下であることがより好ましく、150μm以下であることがさらに好ましい。

[38]

 必要に応じ、基材層の外表面(粘着層に対向する側と逆側の面)にはマット加工、帯電防止加工等が施されていてもよい。

[39]

 本開示の電子部品加工フィルムは、経時粘着力安定性に優れている。具体的には、電子部品加工フィルムの作製から長期間を経ても電子部品に対する良好な粘着性が維持される。ある実施態様では、電子部品加工フィルムの作製から90日後のSUS粘着力(ステンレス板に対する粘着力)は、1N/25mm以上であってもよく、1.2N/25mm以上であってもよく、1.5N/25mm以上であってもよい。

[40]

 チップのピックアップを容易に行う観点からは、電子部品加工フィルムのSUS粘着力(粘着力を低下させる処理を行う場合は、処理後の粘着力)は3.0N/25mm以下であることが好ましく、2.5N/25mm以下であることがより好ましく、2.0N/25mm以下であることがさらに好ましい。

[41]

 SUS粘着力の測定には、株式会社オリエンテック製「テンシロン引張試験機 RTA-100型」又はこれに類似した試験機であって、摘み具及び90度剥離装置を有するものを使用する。
 SUS板としては、冷間圧延ステンレス鋼 430BAを使用する。試験に先立ち、SUS板の表面張力を一定にするために、加熱処理を実施し、さらに試験板の表面の汚れ除去のため、トルエンによる超音波洗浄を実施する。加熱処理及びトルエン超音波洗浄の条件は、SUS板の状態により適宜変更可能とする。

[42]

 電子部品加工フィルムを幅50mm、長さ100mmの大きさに切断し、セパレータがある場合はこれを剥離して、粘着層をSUS板に貼り付けて試験片を作製する。この試験片を、23℃の環境下、圧力5880N/mのかかったゴムロール間を2m/分の速度で通過させて、粘着層を圧着する。圧着した試験片を30分間放置後、試験片を幅25mm、長さ100mmに切断し、電子部品加工フィルムをSUS板と直角方向(90度剥離)に200mm/分の速度で剥離する。このときの剥離力をSUS粘着力とする。

[43]

 充分な延伸性を得る観点からは、電子部品加工フィルムの引張強さは10MPa以上であることが好ましく、15MPa以上であることがより好ましく、20MPa以上であることがさらに好ましい。
 必要な強度を確保する観点からは、電子部品加工フィルムの引張強さは100MPa以下であることが好ましく、50MPa以下であることがより好ましく、30MPa以下であることがさらに好ましい。

[44]

 充分な延伸性を得る観点からは、電子部品加工フィルムの引張伸び率は100%以上であることが好ましく、150%以上であることがより好ましく、200%以上であることがさらに好ましい。
 必要な強度を確保する観点からは、電子部品加工フィルムの引張伸び率は1000%以下であることが好ましく、700%以下であることがより好ましく、500%以下であることがさらに好ましい。

[45]

 電子部品加工フィルムの引張強度及び引張伸び率を調節する方法としては、基材層の厚みの調節、基材層に含まれる成分(熱可塑性樹脂、可塑剤等)の種類及び量の選択などが挙げられる。

[46]

 電子部品加工フィルムの引張強さ及び引張伸び率の測定には、株式会社オリエンテック製「テンシロン引張試験機 RTA-100型」又はこれに類似した試験機であって、摘み具及び180度剥離装置を有するものを使用する。

[47]

 まず、電子部品加工フィルムを用いて図1に示すような形状の試験片を作製する。この試験片の両端を試験機でつかんで引張試験を実施する。試験は、23±5℃の環境下、引張速度は500mm/分として行う。粘着層上にセパレータがある場合には、これを剥離してから試験を行う。

[48]

 引張強さは、試験前の試験片の平均厚さ(0.100mm)及び幅(10mm)と、サンプルが切断するまでの最大荷重量(N)とから、下式により算出する。
 引張伸び率は、試験前のサンプルの標点間距離A(図1に示す試験片の幅が10mmである部分の長さ:40mm)と、サンプルが切断したときの標点間距離Bとから、下式により算出する。

[49]

[50]

 第1実施形態の電子部品加工フィルムは、第2実施形態又は第3実施形態の電子部品加工フィルムに記載した要件を満たすものであってもよい。

[51]

<第2実施形態>
 本開示の第2実施形態は、粘着層と基材層とを備え、タック力が40gf以上であり、かつSUS粘着力が1.1N/25mm以上である、電子部品加工フィルムである。

[52]

 本発明者らの検討の結果、電子部品加工フィルムを延伸したときのチップの脱落は、電子部品加工フィルムの電子部品に対する粘着力が高いことのみ、又はタック力が高いことのみでは充分に抑制できないことがわかった。そこでさらに検討したところ、電子部品加工フィルムのタック力が40gf以上であり、かつSUS粘着力が1.1N/25mm以上であると、チップの脱落が有効に抑制されることがわかった。

[53]

 本開示において電子部品加工フィルムのタック力は、下記のようにして測定される。
 タック力の測定には、株式会社レスカ製「プローブタック試験機 TAC-II」又はこれに類似した試験機を用いる。

[54]

 電子部品加工フィルムを幅20mm、長さ100mmの大きさに切断し、離型シートがある場合はこれを剥離し、タック試験機の測定部に、粘着層が上になるように設置する。23±5℃、プローブ下降速度120mm/分、荷重10gf、加圧時間10秒、プローブ上昇速度600mm/分の条件で、プローブの下降、加圧及び上昇を実施し、得られた値をタック力とする。

[55]

 チップの脱落を抑制する観点からは、上記タック力は45gf以上であることが好ましく、50gf以上であることがより好ましく、70gf以上であることがさらに好ましい。

[56]

 チップのピックアップを容易に行う観点からは、上記タック力は300gf以下であることが好ましく、250gf以下であることがより好ましく、200gf以下であることがさらに好ましい。

[57]

 電子部品加工フィルムのタック力を調節する方法としては、粘着層の厚みの調節、粘着層に含まれる成分(粘着剤、可塑剤、架橋剤等)の種類及び量の選択などが挙げられる。

[58]

 電子部品に対する充分な粘着性を得る観点からは、電子部品加工フィルムのSUS粘着力(ステンレス板に対する粘着力)は、1.2N/25mm以上であることが好ましく、1.3N/25mm以上であることがより好ましく、1.5N/25mm以上であることがさらに好ましい。

[59]

 チップのピックアップを容易に行う観点からは、上記SUS粘着力(粘着力を低下させる処理を行う場合は、処理後の粘着力)は3.0N/25mm以下であることが好ましく、2.5N/25mm以下であることがより好ましく、2.0N/25mm以下であることがさらに好ましい。

[60]

 電子部品加工フィルムのSUS粘着力を調節する方法としては、粘着層の厚みの調節、粘着層に含まれる成分(粘着剤、可塑剤、架橋剤等)の種類及び量の選択などが挙げられる。

[61]

 SUS粘着力の測定は、第1実施形態の電子部品加工フィルムのSUS粘着力と同様にして測定される。

[62]

 充分な延伸性を得る観点からは、電子部品加工フィルムの引張強さは10MPa以上であることが好ましく、15MPa以上であることがより好ましく、20MPa以上であることがさらに好ましい。
 必要な強度を確保する観点からは、電子部品加工フィルムの引張強さは100MPa以下であることが好ましく、50MPa以下であることがより好ましく、30MPa以下であることがさらに好ましい。

[63]

 充分な延伸性を得る観点からは、電子部品加工フィルムの引張伸び率は100%以上であることが好ましく、150%以上であることがより好ましく、200%以上であることがさらに好ましい。
 必要な強度を確保する観点からは、電子部品加工フィルムの引張伸び率は1000%以下であることが好ましく、700%以下であることがより好ましく、500%以下であることがさらに好ましい。

[64]

 電子部品加工フィルムの引張強度及び引張伸び率を調節する方法としては、基材層の厚みの調節、基材層に含まれる成分(熱可塑性樹脂、可塑剤等)の種類及び量の選択などが挙げられる。

[65]

 電子部品加工フィルムの引張強さ及び引張伸び率の測定は、第1実施形態の電子部品加工フィルムの引張強さ及び引張伸び率と同様にして測定される。

[66]

(粘着層)
 電子部品加工フィルムの粘着層は、粘着剤を含むことが好ましい。粘着剤の種類は特に制限されず、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ウレタン系粘着剤等の公知の粘着剤から選択できる。中でも安定性の観点からは、アクリル系粘着剤を含むことが好ましい。粘着剤は、有機溶剤、水等に溶解又は分散されたものであってもよい。

[67]

 アクリル系粘着剤としては、第1実施形態の電子部品加工フィルムの粘着層に含まれてもよいアクリル粘着剤を用いてもよい。

[68]

 必要に応じ、粘着層は可塑剤を含んでもよい。粘着層が可塑剤を含むことで、電子部品加工フィルムの延伸性が向上する傾向にある。

[69]

 可塑剤の種類は特に制限されない。生体への親和性の観点からは、フタル酸エステル以外の可塑剤を含むことが好ましく、テレフタル酸エステルを含むことがより好ましい。粘着層に含まれる可塑剤は、1種のみでも2種以上であってもよい。

[70]

 テレフタル酸エステルとしては、第1実施形態の電子部品加工フィルムの粘着層に含まれるものと同様のテレフタル酸エステルを用いてもよい。粘着層に含まれるテレフタル酸エステルは、1種のみでも2種以上であってもよい。

[71]

 粘着層が可塑剤としてテレフタル酸エステルを含む場合、可塑剤全体に占めるテレフタル酸エステルの割合は50質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがより好ましく、80質量%以上であることがさらに好ましい。

[72]

 粘着層に含まれる可塑剤の含有率は、例えば、粘着層の固形分全体の5質量%~35質量%であることが好ましく、10質量%~30質量%であることがより好ましく、15質量%~25質量%であることがさらに好ましい。

[73]

 粘着層が可塑剤を含むことで、電子部品加工フィルムの延伸性が向上する傾向にある。一方、可塑剤の含有量が粘着剤の固形分100質量部に対して35質量部以下であると、電子部品への粘着層の残存(糊残り)が抑制される傾向にある。また、粘着層に含まれる粘着剤の割合の低下によるSUS粘着力及びタック力の低下が抑制される傾向にある。

[74]

 必要に応じ、粘着層は架橋剤を含んでもよい。架橋剤としては、第1実施形態の電子部品加工フィルムの粘着層が含んでもよい架橋剤を用いてもよい。安定した粘着特性を得る観点からは、イソシアネート系架橋剤が好ましい。粘着層に含まれる架橋剤は、1種のみでも2種以上であってもよい。

[75]

 粘着層に含まれる架橋剤の含有率は、例えば、粘着層の固形分全体の0.5質量%~20質量%であることが好ましく、1質量%~15質量%であることがより好ましく、2質量%~10質量%であることがさらに好ましい。

[76]

 必要に応じ、粘着層は粘着剤、可塑剤及び架橋剤以外の成分を含んでもよい。例えば、タッキファイヤー、界面活性剤、フィラー等を含んでもよい。

[77]

 チップのピックアップを容易にする観点からは、粘着層は、紫外線、放射線等の高エネルギー線、又は熱によって粘着力が低下する性質を有していてもよい。例えば、粘着剤として紫外線、放射線等の高エネルギー線照射、加熱などによって硬化する性質のものを用いることで、粘着層の粘着力を低下させてもよい。

[78]

 粘着層の厚さは、チップに対する充分な粘着力を確保する観点からは1μm以上であることが好ましく、5μm以上であることがより好ましく、10μm以上であることがさらに好ましい。経済性の観点からは、粘着層の厚さは100μm以下であることが好ましく、50μm以下であることがより好ましい。

[79]

 必要に応じ、粘着層の外表面(基材層に対向する側と逆側の面)にはセパレータ等が配置されていてもよい。

[80]

(基材層)
 電子部品加工フィルムの基材層は、熱可塑性樹脂を含むことが好ましい。
 熱可塑性樹脂としては、ポリ塩化ビニル、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリイミド、ポリウレタン等が挙げられ、中でも延伸性の観点からは、ポリ塩化ビニルが好ましい。

[81]

 必要に応じ、基材層は可塑剤を含んでもよい。基材層が可塑剤を含むことで、電子部品加工フィルムの延伸性が向上する傾向にある。

[82]

 基材層に含まれる可塑剤の含有率は、例えば、基材層の固形分全体の30質量%~60質量%であることが好ましく、35質量%~55質量%であることがより好ましく、40質量%~45質量%であることがさらに好ましい。

[83]

 可塑剤の含有率が基材層の固形分全体の30質量%以上であると、充分な延伸性が得られる傾向にある。可塑剤の含有率が基材層の固形分全体の60質量%以下であると、充分な強度が得られる傾向にある。

[84]

 可塑剤の種類は特に制限されない。生体への親和性の観点からは、フタル酸エステル以外の可塑剤を含むことが好ましく、脂肪族ジカルボン酸とグリコールとの反応生成物を含むことがより好ましい。粘着層に含まれる可塑剤は、1種のみでも2種以上であってもよい。

[85]

 脂肪族ジカルボン酸とグリコールとの反応生成物としては、第1実施形態の電子部品加工フィルムの基材層に含まれるものと同様の脂肪族ジカルボン酸とグリコールとの反応生成物を用いてもよい。

[86]

 基材層が可塑剤として脂肪族ジカルボン酸とグリコールとの反応生成物を含む場合、可塑剤全体に占める脂肪族ジカルボン酸とグリコールとの反応生成物の割合は50質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがより好ましく、80質量%以上であることがさらに好ましい。

[87]

 加工の際の視認性向上の観点から、基材層は着色剤を含んでもよい。着色剤としては、第1実施形態の電子部品加工フィルムの基材層に含まれてもよい着色剤を用いてもよい。

[88]

 基材層に含まれる着色剤の含有率は、例えば、基材層の固形分全体の0.1質量%~2.0質量%であることが好ましく、0.2質量%~1.5質量%であることがより好ましく、0.3質量%~1.0質量%であることがさらに好ましい。

[89]

 基材層の厚さは、充分な強度を確保する観点からは10μm以上であることが好ましく、20μm以上であることがより好ましく、50μm以上であることがさらに好ましい。充分な延伸性を確保する観点からは、基材層の厚さは500μm以下であることが好ましく、200μm以下であることがより好ましく、150μm以下であることがさらに好ましい。

[90]

 必要に応じ、基材層の外表面(粘着層に対向する側と逆側の面)にはマット加工、帯電防止加工等が施されていてもよい。

[91]

 第2実施形態の電子部品加工フィルムは、第1実施形態又は第3実施形態の電子部品加工フィルムに記載した要件を満たすものであってもよい。

[92]

<第3実施形態>
 本開示の第3実施形態は、粘着層と基材層とを備え、前記粘着層の厚みが12μm以上である、電子部品加工フィルムである。

[93]

 上記構成の電子部品加工フィルムは、粘着層の厚みが厚いため、チップの埋め込み性が高い。このため、従来の大きさのチップの他、近年利用が増大している小型チップにおいて粘着層との接地面が狭い場合にもチップの脱落が抑制される。

[94]

 さらに、上記構成の電子部品加工フィルムは、高倍率で延伸した場合にも、チップの大きさに関わらず、チップの脱落が抑制されることが分かった。

[95]

 粘着層の厚みは12μm以上であればよく、15μm以上であっても、20μm以上であってもよい。経済性の観点からは、粘着層の厚さは100μm以下であることが好ましく、50μm以下であることがより好ましい。

[96]

 粘着層の厚み以外の電子部品加工フィルムの詳細及び好ましい態様は、上述した第1実施形態又は第2実施形態における電子部品加工フィルムの詳細及び好ましい態様と同様である。

[97]

 第3実施形態の電子部品加工フィルムは、第1実施形態又は第2実施形態の電子部品加工フィルムに記載した要件を満たすものであってもよい。

[98]

<電子部品加工方法>
 本開示の電子部品加工方法は、上述した電子部品加工フィルムの上に個片化された電子部品が配置された状態で前記電子部品加工フィルムを延伸する工程(延伸工程)を含む。

[99]

 上記方法において、電子部品加工フィルムの上に配置された電子部品は、電子部品加工フィルムの上で個片化されたものであっても、電子部品加工フィルムの上に配置する前に個片化されたものであってもよい。

[100]

 電子部品加工フィルムの上に配置する前に個片化された電子部品の電子部品加工フィルムへの配置は、例えば、別のフィルムの上で電子部品を個片化した後、電子部品加工フィルムの粘着層を電子部品に貼り付けて、電子部品を電子部品加工フィルム上に転写して行うことができる。

[101]

 延伸工程における電子部品加工フィルムの延伸倍率は特に制限されず、延伸後に行う加工の種類等に応じて選択できる。例えば、延伸倍率が1.2以上となるように行ってもよく、1.5以上となるように行ってもよい。

[102]

 上記延伸倍率は、下記式により求められる値である。
 延伸倍率=延伸後の電子部品加工フィルムの最大径/延伸前の電子部品加工フィルムの最大径

[103]

 延伸工程後の電子部品間の距離(距離が一定でない場合は最小距離)は特に制限されず、延伸後に行う加工の種類等に応じて選択できる。例えば、電子部品間の距離が100μm以上となるように行ってもよく、200μm以上となるように行ってもよく、300μm以上となるように行ってもよい。

[104]

 必要に応じ、延伸工程の後、電子部品加工フィルムの上で電子部品の加工(封止処理、熱処理等)を行ってもよい。

[105]

 延伸工程及び必要に応じて行われる電子部品の加工を行ったのち、電子部品加工フィルムから電子部品をピックアップする。ピックアップの方法は特に制限されず、公知の手法で行うことができる。
 ピックアップを行う前に、粘着層の粘着力を低下させるための処理(紫外線照射、熱処理等)を行ってもよい。

[106]

 上記方法で使用される電子部品の種類は特に制限されない。例えば、各種の半導体チップ、セラミックコンデンサ等が挙げられる。

[107]

 以下、上記実施形態を実施例により具体的に説明するが、上記実施形態はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、特に記述が無い限り、薬品は全て試薬を使用した。

[108]

<第1実施形態>
(粘着剤組成物の調製)
 下記表1に示す材料を表1に記載の量(質量部)で混合し、粘着層用組成物を調製した。基材としては、下記表1に示す材料を使用した。表1に示す粘着剤の量は、粘着剤に含まれる固形分の量である。

[109]

 表1に示す材料の詳細は、下記の通りである。
 粘着剤:アクリル系粘着剤(株式会社トウペ、XE-2644、固形分12質量%、ブチルアクリレート80質量~90質量%とアクリロニトリル10質量%~20質量%との共重合体)  
 可塑剤1:テレフタル酸ビス(2-エチルヘキシル)、株式会社ADEKA、D-810、固形分100質量%
 可塑剤2:フタル酸ビス(2-エチルヘキシル)、ゴードー溶剤株式会社、DOP、固形分100質量%
 可塑剤3:アジピン酸系ポリエステル(分子量約2,000)、株式会社ADEKA、P-200、固形分100質量%
 架橋剤:多官能イソシアネート(日本ポリウレタン工業株式会社、コロネートL、固形分75質量%)
 溶剤:メチルエチルケトン

[110]

 基材1…テレフタル酸ビス(2-エチルヘキシル)を基材全体の39質量%、顔料(フタロシアニンブルー、最大粒子径10μm)を基材全体の0.5質量%の量で含むポリ塩化ビニルフィルム(厚さ80μm)
 基材2…フタル酸ビス(2-エチルヘキシル)を基材全体の38質量%、顔料(群青、最大粒子径30μm)を基材全体の0.5質量%の量で含むポリ塩化ビニルフィルム(厚さ80μm)
 基材3…アジピン酸系ポリエステル(分子量約2,000)を基材全体の44質量%、顔料(フタロシアニンブルー、最大粒子径10μm)を基材全体の0.5質量%の量で含むポリ塩化ビニルフィルム(厚さ80μm)

[111]

(電子部品加工フィルムの作製)
 片面が離型処理された厚み38μmのポリエチレンテレフタレートフィルムの離型処理された側の面に、粘着層用組成物を、乾燥後の厚みが表1に示す厚さとなるように塗工し、乾燥して粘着層を形成した。
 次いで、基材の片面に上記ポリエチレンテレフタレートフィルムの粘着層側を室温(25℃)にて貼り合わせ、ゴムロールで加圧して粘着層を基材上に転写し、基材層と粘着層とを備える実施例1-1及び比較例1-1~1-3の電子部品加工フィルムを作製した。

[112]

(延伸性の評価)
 実施例1-1の電子部品加工フィルムに対し、上述した方法で引張強さ及び引張伸び率を測定したところ、引張強さは26.5MPa、引張伸び率は339%であった。比較例1-1について同様の試験を行ったところ、引張強さは27.5MPa、引張伸び率は347%であった。
 以上の結果から、実施例1-1の電子部品加工フィルムは粘着層及び基材層がそれぞれフタル酸エステルを含む比較例1-1の電子部品加工フィルムと同等の延伸性を有していることがわかった。

[113]

(経時粘着力安定性の評価)
 電子部品加工フィルムのSUS粘着力を、上述した方法で測定した。測定は電子部品加工フィルムの作製から2日後と作製から90日後にそれぞれ実施し、変化率を下記式で算出し、下記基準に従って評価した。結果を表1に示す。

[114]

 A:SUS粘着力の変化率が±20%以内である。
 B:SUS粘着力の変化率が±20%を超える。

[115]

(層間密着性の評価)
 電子部品加工フィルムのSUS粘着力を、上述した方法で測定した。測定後のSUS板の表面及び電子部品加工フィルムの状態を目視にて観察し、下記基準に従って評価した。結果を表1に示す。

[116]

 A:粘着層と基材層との間で剥離が発生せず、SUS板に粘着層が移行しない。
 B:粘着層と基材層との間で剥離が発生し、SUS板に粘着層が移行する。

[117]

(顔料吐出の評価)
 電子部品加工フィルムに対し、延伸装置上で最大径が2倍になるように60℃で延伸する工程を1回実施した。その後、基材層からの顔料吐出の有無を確認するために、装置側と接触していた基材層の表面を白布で3回擦り、白布への顔料残りの有無を顕微鏡で確認し、下記基準に従って評価した。結果を表1に示す。

[118]

 A:白布に顔料が付着しない。
 B:白布に顔料が付着する。

[119]

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[120]

 表1に示すように、粘着層の可塑剤としてテレフタル酸エステル、基材層の可塑剤として脂肪族ジカルボン酸とグリコールとの反応生成物をそれぞれ使用した実施例1-1の電子部品加工フィルムは、90日後のSUS粘着力の2日後のSUS粘着力からの変化率が±20%以内であり、良好な経時粘着力安定性を示した。また、基材層に含まれる顔料の最大粒子径が10μmであることで、延伸工程を実施した後の延伸装置側の基材層からの顔料吐出が抑制されていた。

[121]

 粘着層及び基材層の可塑剤としてフタル酸エステルをそれぞれ使用した比較例1-1の電子部品加工フィルムは、90日後のSUS粘着力の2日後のSUS粘着力からの変化率が±20%を超え、経時粘着力安定性が実施例よりも劣っていた。また、基材層に含まれる顔料の最大粒子径が30μmであることで、基材層からの顔料吐出が発生した。
 粘着層及び基材層の可塑剤として脂肪族ジカルボン酸とグリコールとの反応生成物をそれぞれ使用した比較例1-2の電子部品加工フィルムは、90日後のSUS粘着力の2日後のSUS粘着力からの変化率が±20%以内であり良好な経時粘着力安定性を示したが、層間密着性が不充分であった。
 粘着層及び基材層の可塑剤としてテレフタル酸エステルをそれぞれ使用した比較例1-3の電子部品加工フィルムは、90日後のSUS粘着力の2日後のSUS粘着力からの変化率が±20%を超え、経時粘着力安定性が不充分であった。

[122]

<第2実施形態>
(粘着剤組成物の調製)
 下記表2に示す材料を表2に記載の量(質量部)で混合し、粘着層用組成物を調製した。基材としては、下記表2に示す材料を使用した。表2に示す粘着剤の量は、粘着剤に含まれる固形分の量である。

[123]

 表2に示す材料の詳細は、下記の通りである。
 粘着剤1:アクリル系粘着剤(株式会社トウペ、XE-2644、固形分12質量%、ブチルアクリレート80質量~90質量%とアクリロニトリル10質量%~20質量%との共重合体)  
 粘着剤2:アクリル系粘着剤(ナガセケムテックス株式会社、テイサンレジン WS-023DRをトルエン溶解したもの、固形分17質量%、ブチルアクリレート60質量~70質量%とエチルアクリレート10質量%~20質量%とアクリロニトリル10質量%~20質量%との共重合体)
 可塑剤1:テレフタル酸ビス(2-エチルヘキシル)、株式会社ADEKA、D-810、固形分100質量%
 可塑剤2:フタル酸ビス(2-エチルヘキシル)、ゴードー溶剤株式会社、D-810、固形分100質量%
 架橋剤:多官能イソシアネート(日本ポリウレタン工業株式会社、コロネートL、固形分75質量%)
 溶剤:メチルエチルケトン

[124]

 基材1…フタル酸ビス(2-エチルヘキシル)を基材全体の38質量%、顔料(群青、最大粒子径30μm)を基材全体の0.5質量%の量で含むポリ塩化ビニルフィルム(厚さ80μm)
 基材2…アジピン酸系ポリエステルを基材全体の44質量%、顔料(フタロシアニンブルー、最大粒子径10μm)を基材全体の0.5質量%の量で含むポリ塩化ビニルフィルム(厚さ80μm)

[125]

(電子部品加工フィルムの作製)
 片面が離型処理された厚み38μmのポリエチレンテレフタレートフィルムの離型処理された側の面に、粘着層用組成物を、乾燥後の厚みが表2に示す厚さとなるように塗工し、乾燥して粘着層を形成した。
 次いで、基材の片面に上記ポリエチレンテレフタレートフィルムの粘着層側を室温(25℃)にて貼り合わせ、ゴムロールで加圧して粘着層を基材上に転写し、実施例2-1~2-6及び比較例2-1~2-4の電子部品加工フィルムを作製した。

[126]

(延伸性の評価)
 基材2を用いた実施例2-1の電子部品加工フィルムに対し、上述した方法で引張強さ及び引張伸び率を測定したところ、引張強さは26.5MPa、引張伸び率は339%であり、優れた延伸性を有していた。
 基材1を用いた実施例2-6の電子部品加工フィルムに対し、上述した方法で引張強さ及び引張伸び率を測定したところ、引張強さは27.5MPa、引張伸び率は347%であり、優れた延伸性を有していた。

[127]

(SUS粘着力及びタック力の評価)
 電子部品加工フィルムのSUS粘着力及びタック力を、上述した方法で測定した。結果を表2に示す。

[128]

(チップ脱落の評価)
 電子部品加工フィルムの粘着層を、ダイシングフィルム上で個片化されたチップ(寸法1mm×1mm)に貼り付けて、チップをダイシングフィルムから電子部品加工フィルムに転写した。この状態で電子部品フィルムを60℃で延伸させた際のチップの脱落の状況を、下記基準に従い評価した。
 A:チップの脱落がほとんど発生しない。
 B:実用上問題のない程度にチップの脱落が発生する。
 C:実用上問題のある程度にチップの脱落が発生する。

[129]

(顔料吐出の評価)
 電子部品加工フィルムに対し、延伸装置上で最大径が2倍になるように60℃で延伸する工程を1回実施した。その後、基材層からの顔料吐出の有無を確認するために、装置側と接触していた基材層の表面を白布で3回擦り、白布への顔料残りの有無を顕微鏡で確認した。その結果、顔料の最大粒子径が30μmである実施例2-6の電子部品加工フィルムの場合は白布に顔料が付着し、その他の電子部品加工フィルムの場合は白布に顔料が付着しなかった。このことから、基材層に含まれる顔料の最大粒子径を25μm以下にすることで、顔料吐出が有効に抑制されることがわかった。

[130]

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[131]

 表2に示すように、タック力が40gf以上であり、かつSUS粘着力が1.1N/25mm以上である実施例2-1~2-6の電子部品加工フィルムは、タック力が40gf未満であるか、または粘着力が1.1N/25mm未満である比較例2-1~2-4の電子部品加工フィルムに比べて延伸時のチップの脱落が抑制されていた。

[132]

<第3実施形態>
(粘着剤組成物の調製)
 下記表3に示す材料を表3に記載の量(質量部)で混合し、粘着層用組成物を調製した。基材としては、下記表3に示す材料を使用した。表3に示す粘着剤の量は、粘着剤に含まれる固形分の量である。

[133]

 表3に示す材料の詳細は、下記の通りである。
 粘着剤1:アクリル系粘着剤(株式会社トウペ、XE-2644、固形分12質量%、ブチルアクリレート80質量~90質量%とアクリロニトリル10質量%~20質量%との共重合体)  
 粘着剤2:アクリル系粘着剤(ナガセケムテックス株式会社、テイサンレジン WS-023DRをトルエン溶解したもの、固形分17質量%、ブチルアクリレート60質量~70質量%とエチルアクリレート10質量%~20質量%とアクリロニトリル10質量%~20質量%との共重合体)
 可塑剤:テレフタル酸ビス(2-エチルヘキシル)、株式会社ADEKA、D-810、固形分100質量%
 架橋剤:多官能イソシアネート(日本ポリウレタン工業株式会社、コロネートL、固形分75質量%)
 溶剤:メチルエチルケトン

[134]

 基材…アジピン酸系ポリエステル(分子量約2,000)を基材全体の44質量%、顔料(フタロシアニンブルー、最大粒子径10μm)を基材全体の0.5質量%の量で含むポリ塩化ビニルフィルム(厚さ80μm)

[135]

(電子部品加工フィルムの作製)
 片面が離型処理された厚み38μmのポリエチレンテレフタレートフィルムの離型処理された側の面に、粘着層用組成物を、乾燥後の厚みが表3に示す厚さとなるように塗工し、乾燥して粘着層を形成した。
 次いで、基材の片面に上記ポリエチレンテレフタレートフィルムの粘着層側を室温(25℃)にて貼り合わせ、ゴムロールで加圧して粘着層を基材上に転写し、実施例3-1~3-4及び比較例3-1~3-6の電子部品加工フィルムを作製した。

[136]

(延伸性の評価)
 実施例3-2の電子部品加工フィルムに対し、上述した方法で引張強さ及び引張伸び率を測定したところ、引張強さは26.5MPa、引張伸び率は339%であり、優れた延伸性を有していた。

[137]

(SUS粘着力の評価)
 実施例及び比較例の電子部品加工フィルムに対し、上述した方法でSUS粘着力を測定した。結果を表3に示す。

[138]

(チップ脱落の評価)
 作製した電子部品加工フィルムの粘着層を、ダイシングフィルム上で個片化されたチップ(寸法1mm×1mm)に貼り付けて、チップをダイシングフィルムから電子部品加工フィルムに転写した。この状態で電子部品フィルムを60℃で延伸させた際のチップの脱落の状況を、下記基準に従い評価した。
 A:チップの脱落が発生しない。
 B:チップの脱落が発生する。

[139]

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[140]

 表3に示すように、粘着層の厚さが12μm以上である実施例の電子部品加工フィルムでは、チップの脱落が発生しなかった。逆に、粘着層の厚みが12μm未満である比較例電子部品加工フィルムでは、SUS粘着力が高い値を示した場合にもチップの脱落が発生した。

[141]

 日本国特許出願第2019-152301号及び第2019-152302号の開示は、その全体が参照により本明細書に取り込まれる。
 本明細書に記載された全ての文献、特許出願、および技術規格は、個々の文献、特許出願、および技術規格が参照により取り込まれることが具体的かつ個々に記された場合と同程度に、本明細書中に援用されて取り込まれる。



[1]

An electronic component processing film comprising an adhesive layer and a substrate layer, the electronic component processing film satisfying at least one of the following (1), (2), and (3). (1) The adhesive layer includes a terephthalic acid ester, and the substrate layer includes a reaction product of an aliphatic dicarboxylic acid and glycol. (2) The tack force is 40 gf or higher, and the SUS adhesive force s 1.1 N/25 mm or higher. (3) The thickness of the adhesive layer is 12 μm or greater.



 粘着層と基材層とを備え、前記粘着層はテレフタル酸エステルを含み、前記基材層は脂肪族ジカルボン酸とグリコールとの反応生成物を含む、電子部品加工フィルム。

 粘着層と基材層とを備え、タック力が40gf以上であり、かつSUS粘着力が1.1N/25mm以上である電子部品加工フィルム。

 粘着層と基材層とを備え、前記粘着層の厚みが12μm以上である、電子部品加工フィルム。

 前記粘着層はアクリル系粘着剤を含む、請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の電子部品加工フィルム。

 前記基材層はポリ塩化ビニルを含む、請求項1~請求項4のいずれか1項に記載の電子部品加工フィルム。

 前記基材層は着色剤を含み、前記着色剤の最大粒子径が25μm以下である、請求項1~請求項5のいずれか1項に記載の電子部品加工フィルム。

 引張強さが20MPa以上である、請求項1~請求項6のいずれか1項に記載の電子部品加工フィルム。

 引張伸び率が200%以上である、請求項1~請求項7のいずれか1項に記載の電子部品加工フィルム。

 請求項1~請求項8のいずれか1項に記載の電子部品加工フィルムの上に個片化された電子部品が配置された状態で前記電子部品加工フィルムを延伸する工程を含む、電子部品加工方法。

 前記電子部品加工フィルムを延伸する工程の後、前記電子部品加工フィルムの上で電子部品の加工を行う、請求項9に記載の電子部品加工方法。